新しき土の紹介:1937年日本映画。第二次世界大戦以前に日本をドイツ人に紹介する目的でつくられた日独合作映画です。製作意図には日独防共協定締結前夜という政治目的も含まれています。日本側スタッフは、脚本に伊丹万作。音楽に山田耕筰。円谷英二が特撮を担当します。出演陣に原節子、早川雪州の名もあり、いまでは豪華なラインナップとなっています。
監督:伊丹万作、アーノルト・ファンク 出演者:原節子(大和光子)、小杉勇(大和輝雄)、早川雪洲(大和巌 )、英百合子(おいく:光子の乳母)、ムルート・エヴェラー(ゲルダ・シュトルム)、ほか
映画「新しき土」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「新しき土」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
新しき土の予告編 動画
映画「新しき土」解説
この解説記事には映画「新しき土」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
新しき土のネタバレあらすじ:起
中国東北部を満州国と呼んで領土にしていた昭和の一時期。ドイツ留学を終えた大和輝雄が8年ぶりに日本へ帰ってきます。帰国の途上、輝雄は、船中でゲルダ・シュトルムというドイツ人女性と知り合います。帰国後もゲルダと行動を共にする輝雄に、許嫁(いいなずけ)の光子は混乱します。
ゲルダの国ドイツでは、いま日本との友好関係を模索しています。しかしゲルダを含めドイツ人の多くが日本や日本人のことをよく知りません。ジャーナリストのゲルダは、日本に興味を持ちます。航海中に知り合った日本人青年 輝雄は、日本人の考え方や風習、結婚観といった予備知識を授けてくれます。そればかりでなく、ゲルダを友人としてもてなします。
8年間の留学から帰った輝雄は、日本の社会制度に批判的です。個人の自由や独立よりも、社会全体の調和を優先する考え方が、輝雄には相容れないものになっています。とくに養子縁組という制度に嫌悪感を示し、自由恋愛を許さない許嫁という風習に歯向かっています。
新しき土のネタバレあらすじ:承
大和輝雄は、少年の頃に資産家の大和巌の婿養子になりました。巌のひとり娘の光子との結婚にも同意している輝雄は、すでに大和家の跡取りを約束された青年です。その彼が、帰国後に光子を拒んでいます。父である巌の心中も、光子同様、混乱の渦中に立たされています。
ゲルダは、輝雄が掲げる個人主義の考え方を否定しません。しかし、それはわたしたちの国のものであり、あなたの国のものではないと輝雄を諭します。許嫁のいる日本に帰ってきたのだから日本のやり方に従うべきだとゲルダは主張します。
輝雄はまた、満州国への憧れと満州国が持つ国家高揚の意義をゲルダに語ります。しかしそれこそが矛盾だとゲルダは指摘します。満州開拓は国を挙げた全体主義の事業であり、個人主義を顕揚する人間が口にすべき場所ではないとゼルダは言います。
さらにゲルダは、あなたの血に流れているのは全体主義思想なのだから個人主義思想を云々すべきではないと、きっぱりと言い切ります。ゼルダの意見は、輝雄のアイデンティティを問いながら、じつは日本という国の国家のあり方へと踏みこんでいます。
新しき土のネタバレあらすじ:転
ゼルダと意見を闘わせて自家撞着に陥った輝雄は、郷里へ戻ります。輝雄の実家は、関東近郊の米作農家です。実家の父親は農閑期に合わせて湿田に鍬を入れています。懐かしい父親のそのそばへ寄ると、土の匂いがします。久しく嗅いでいなかった郷里の匂い。輝雄の笑顔が弾けます。輝雄にとって土は原点です。
父親が代々の百姓の土地について語ります。それは何代もの祖先に受け継がれ、いまのかたちを維持している、が、しかし日本の国土は狭い、土も古い、若い者は満州へ行って新しい土を耕すことだと。父親の語りに輝雄の瞳が同意します。輝雄の身体に気力が漲ります。
やがて、輝雄のもとに養父から親族会議を開く報せが届きます。その道中、輝雄の車と1台の電車がすれ違います。輝雄は気づきませんが、乗客のひとりに光子がいます。光子は風呂敷包みひとつ抱えて噴火著しい浅間山へ向かっています。
新しき土の結末
親族会議の席上で、輝雄は自らの至らなさを詫び、さらに養子縁組の解消を承諾します。そのうえで、あらためて光子を嫁にもらいたいと言い出します。しかし、光子が見当たりません。光子は辞世の句を残しています。そこには噴火する浅間山を暗示する内容が認められています。輝雄は車を走らせ浅間山火口を目指します。
噴煙の立ちこめる浅間山の火口では、悲嘆にくれた光子が佇んでいます。肩に花嫁衣裳を羽織る光子のもとに歩み寄り、輝雄は抱き止めます。うれし涙にくれる光子を輝雄が何度も何度も優しく抱き留めます。
婚約の整った輝雄と光子のもとにゲルダから手紙が届きます。「お幸せに」。結婚後、輝雄と光子は満州の地で子を授かります。輝雄は開拓民としての人生を出発させています。
以上、映画「新しき土」のあらすじと結末でした。
原節子さんが美しいですが、「外国から見た日本」感がすごい戦前のプロパガンダ映画でした。
ツッコミどころ満載ですが一番気になったのは、火山が噴火したとき火口にいた2人が無傷だったこと。ラストの唐突の満州にもびっくりでした。