ぼくを探しにの紹介:2013年/フランス作品。ピアニストのポールはひょんなことからプルースト夫人の催眠療法で亡くした母の思い出を辿ることに、両親を亡くしてから口を閉ざしが彼が喋る日は来るのか。
監督:シルバン・ショメ 俳優:ギョーム・グイ、アンヌ・ル・ニ、ベルナデット・ラフォン、エレーヌ・バンサン、ルイス・レゴほか
映画「ぼくを探しに」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「ぼくを探しに」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
ぼくを探しにの予告編 動画
映画「ぼくを探しに」解説
この解説記事には映画「ぼくを探しに」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
ぼくを探しにのネタバレあらすじ:二人の伯母さんとポールのブルジョアな生活
音楽家の家系に生まれたポールは、有名になれないまま33歳になってしまったピアニスト。今は二人の伯母さんが経営するダンス教室のピアノ伴奏をして過ごしている。両親を亡くしてから彼はだんまり、もっぱら黒板にメモをして最低限の会話をする。誕生日、ある人はピアニスト養成機具を、盲人コエーリョはピアノを弾きながらお菓子を食べる彼のためにお菓子皿を、おばさんたちはピアノの模型と両親の写真をくれた。ポールは写真から母親だけを切り取り大切にしまった。ある日、ピアノを弾いていると最後のお菓子を横取りされてしまう。お菓子のシューケットを買いに出た所で階段を上がってくるコエーリョが手すりを直す時に落としてしまったレコードを届けに、彼の入っていったプルーストの家に入る。そこは勝手に床をはがして部屋の中に庭が作ってある不思議な部屋だった。
ぼくを探しにのネタバレあらすじ:マダム・プルーストの不思議なスープ
不思議な部屋の女主人、マダム・プルーストに秘密を見られてしまったからにはお茶を飲んでいきなさいと、怪しげなスープを飲まされる。気を失ったポールのジャケットから彼の部屋の鍵を拝借したマダム・プルーストはコエーリョと一緒にポールを階段の踊り場に立たたせる。夢うつつのままのポールは不思議な幻覚を見るようになる。マダム・プルーストはポールの鍵で部屋に入ると彼の机に母親の写真がモビールされていること、両親の写真から漏れなく母親だけが切り取られて父親の写真は箱にしまわれてしまっている事を知る。彼女はポールを自分の部屋に呼び、お茶とマドレーヌを振る舞う。ポールは夢の中で赤ん坊の視点に戻り両親の姿を見る。そんな事が繰り返されるうちに彼の二人の伯母は疑念を持ち始める。バカンスでトルヴィルを訪れた時、音楽のコンクールに出るためにピアノの師事を頼む。最近のコンクールは中国人が席巻していると不平を言う伯母たち、しかしピアノの先生は中国人のチェロリスト、ミシェルを養女に迎えていた。ポールに好意を寄せるミシェルだが、だんまりのポールの心の壁はなかなか取り払えない。
ぼくを探しにのネタバレあらすじ:蘇えっていく記憶の辿りつく先にある真実とは
マダム・プルーストの催眠治療によって、母は父に殺されたと思っていた彼は、本当は両親が愛し合っていた事を知り、ばらばらにしていた写真を戻す。一方、コエーリョがポールに話しているつもりで話題に出したマダム・プルーストの名前に、伯母たちは彼女の部屋に難癖をつけに行く。そこで、彼女たちはマダム・プルーストの髪の毛がかつらであることで、察してしまう。ポールがよく訪れるにある木が病気だからと切られようとしていた。立派なその木を切ることに反対したマダム・プルーストは規制線の中で木の前に陣取り講義するが、警察によって強制的に退去させられてしまう。ポールはゴミ箱に残された彼女のウクレレを拾って家に持ち帰る。コンクールも近いある日、コエーリョがマダムから預った催眠療法に使うお茶の粉を持ってやってくる。自分がいなくなってもポールが自分で行えるようにとの配慮だった。過去の記憶を取り戻していったポールは何も知らず、コンクール本戦の招待状をありがとうと言うメッセージと共に彼女の部屋の扉に差し込んだ。そしてコンクール当日、客席に彼女はいなかった。ポールは優勝したことを教えに行くが、あいかわらず彼女は不在のまま。仕方なく家でパーティーが行われる前に彼女のお茶をもう一度飲むことに。すると、そこで両親が死んだ原因は、ピアノが抜けた天上から落ちてきて下敷きになったからだったということを知る。そのピアノは彼がいつも弾いているものだった。催眠から覚めると、パーティーに人が集まっていて、優勝者の彼にソナタを弾くように催促する。鍵盤の上に手を置くと、蓋が閉まり、ポールはピアノを弾く事が出来ない手になってしまう。
ぼくを探しにの結末:そして次の世代へ
マダム・プルーストの部屋を再び訪れる彼だったが、そこはすでに改装が始まっていて、彼女が癌で亡くなったことを知る。ポールはウクレレを直し、彼女のお墓へ供えて帰ろうとすると、振り出した雨にウクレレが音を立てる。ポールはそのウクレレを持ち帰る事にする。その後、伯母たちが経営していたダンス教室は、ポールのウクレレ教室になる。彼はミシェルと結婚し女の子をもうけた。今度はウクレレのコンクールに向けてホノルルへ行くことに。旅の道中、寄り道したグランドキャニオンで、赤ん坊が何か言葉を話そうとする、「パパ」と言おうとする赤ん坊に、ポールは「パパ」と答える。
以上、映画「ぼくを探しに」のあらすじと結末でした。
ぼくを探しにのレビュー・考察:喋らない主人公、無言という言葉。
主人公が喋らない。最初はちょっと真面目で無口なだけかと思ったら、他の登場人物にも揶揄されるように「だんまり」を頑なに続けている。彼の声を聞くのはラストカットのみ。それでもポールの仕草や表情、彼が催眠中に見る夢で彼の心のうちは読むことが出来る。また、彼の記憶を呼び戻すきっかけになるのがマダム・プルーストと言うのも面白い(ちなみにポールの苗字はマルセル)。お茶を飲みマドレーヌをかじる事で過去が蘇えるというのは「失われた時を求めて」へのオマージュである事がよくわかる。探したらもっとあるかもしれない。音楽家家系に生まれ育ち、ピアノを弾くのはほぼ日課と化していて、コンクールまでほとんど音楽に関して受動的だったポールがウクレレという新しい楽器を手にすることは、少し遅いポールにとっての自我の芽生えだったのだと思う。
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