マルコヴィッチの穴の紹介:1999年アメリカ映画。現実にいる俳優、ジョンマルコヴィッチの頭の中に入ることができる人たちが巻き起こす騒動を描いたファンタジーコメディ映画です。
監督 :スパイク・ジョーンズ 出演:ジョン・キューザック、キャメロン・ディアス、キャサリン・キーナー、オーソン・ビーン、メアリー・ケイ・プレイス ほか
映画「マルコヴィッチの穴」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「マルコヴィッチの穴」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「マルコヴィッチの穴」解説
この解説記事には映画「マルコヴィッチの穴」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
マルコヴィッチの穴のネタバレあらすじ:ある会社
人形師であるクレイグは定職についてほしいと言った妻の言葉を受けてさっそく求人に載っていた会社に赴きます。彼はそこで社長に会い、簡単なテストを受けて社長に気に入られたことで採用が決まります。そんな会社で働き始めたクレイグは好みの女性を見つけてはバーに誘うもまったく相手にされませんでした。妻との倦怠期を迎えていたクレイグは好みの女性の人形を作っては過ごすようになります。
マルコヴィッチの穴のネタバレあらすじ:穴の中
そんなある日、彼はファイル室の壁にある穴を見つけます。そのトンネルを突き進む彼ですが、その穴の行き着く先は俳優、ジョン マルコヴィッチの脳の中でした。脳の中に入ったクレイグは15分後にニュージャージー州についていることを実感します。これを自分の妻に言ったところ、体験するというのでニュージャージー州で待つことにしました。妻も到達したことで妻の興奮はさらなる興奮へと変化し、夫とともに社長室で食事を共にすることになります。
マルコヴィッチの穴のネタバレあらすじ:興奮
そこでは社長とジョンの成長日誌なるものが発見され、クレイグの妻は興奮のあまり性転換を行うことを頭の中で考えました。一方、クレイグと会社の女性は2人で穴の体験を行うための会社を作り、その会社名をJM社と名付けます。1人200ドルという価格で体験できるその企画は大変人気なものとなり、列をなすほどとなりました。クレイグはジョンの頭の中に入り快感を得ている妻のことを悔しがり、彼女を檻の中に閉じ込めてしまいます。
マルコヴィッチの穴のネタバレあらすじ:自分の頭の中
やがてジョンは何者かに頭が操られているのではないかと感じ、親友のチャーリーシーンへ相談します。そこで彼はレスター社の秘密の扉を知り、暴れまわりますが、クレイグが自分の頭の中を体験したらどうですかと言うので体験してみると、そこはジョンしかいない異様な空間だということを知ります。
マルコヴィッチの穴のネタバレあらすじ:マーティン船長
クレイグの妻はと言うと、ジョンへの執着心が増してジョンになりたいと思い、レスター社の社長に直訴します。すると社長は自分がマーティン船長であるという話をします。その話とは90年前に人体とつながる穴を発見し、それを探すことで永遠に生きられるというものでした。レスターの話を気に入った妻は穴に入ります。
マルコヴィッチの穴の結末:クレイグとジョン
8ヶ月後、ジョンは人形の振付師として活躍していました。なぜならクレイグが操っているからです。そしてクレイグのジョンは憧れの女性とも付き合い、自分の赤ちゃんを設けることになります。しかしそこで異変がおき、現実に戻ると以前は無視していた中の女性とクレイグがきちんと愛し合っていました。
7年後、本物のマルコヴィッチはチャーリーシーンに永遠に生きる方法がわかったと言います。
「マルコヴィッチの穴」感想・レビュー
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一見何の変哲もないニューヨークのど真ん中にあるビル。
その7と1/2階で発見された小さな”穴”。
そこは何と俳優ジョン・マルコヴィッチの頭の中に通じていた!!奇想天外なストーリー、独創的なプロットが、私の心を混乱と不条理な感覚に陥らせた、これは稀にみる凄い映画だ。
監督のスパイク・ジョーンズは、CMやミュージックビデオの世界では、既に名だたるユニークな存在。
無限の想像力を感じさせる天才クリエイターの記念すべき映画デビュー作品なのです。まずは、7と1/2階のオフィスが極めて異質な雰囲気を漂わせる。
背をかがめて行き交う人々、会話の成り立たない受付。
都会の喧騒に潜むゆがんだ空間は、悪夢を予感させる。そして、いよいよ、マルコヴィッチの登場。
まるで、悪夢への入り口さながらだ。
最初、のぞきの快感が興味をそそり、私もこんな穴があったら入りたいという好奇心が湧いてくる。しかし、次第に人間の頭をもたげてくるのは、邪悪な知恵なのだ。
他人になってみたいという、人間の潜在的な願望が、”予測不能な悲喜劇”を引き起こしてしまう。クレイグ(ジョン・キューザック)は、マルコヴィッチに入ることでマキシン(キャスリーン・キーナー)への片思いを叶えようとする。
クレイグの妻ロッテ(キャメロン・ディアス)は、マルコヴィッチに入ることで自分の中に眠っていた「男性」を自覚し、マキシンとの恋愛に溺れていく。このマキシンを巡って、マルコヴィッチに入ったクレイグ、マルコヴイッチに入ったロッテと、ただでさえややこしい三角関係が益々ややこしくなっていく。
すっかり器と化してしまったマルコヴイッチが実にかわいそうだ。そして、奇抜なブラック・ユーモアに彩られた人間の姿は、おかしくも哀れでさえある。
この映画の中でも、特に傑作な爆笑場面は、マルコヴィッチ自身がマルコヴィッチに入るくだり。
何が起こるかは観てのお楽しみだ。一つのオチを迎えるこの場面で、観ている我々は正気に返り、一方、映画の中のキャラクターたちは、未だ覚めぬ悪夢の中にいるというわけだ。
人間を客観的に見る目を取り戻した、観ている我々にとって、強烈なインパクトを与えるのが、人間の変身願望の器となったマルコヴィッチが、操られた人形のごとく踊る場面だ。
中を支配するクレイグの特技は人形使い。
そして、この人形使いが転じて人間使いになってしまう着想は、抜群にうまいと思う。
そして、人間に内在する欲望が外へ放出された時の狂気には、笑いを通り越して、恐怖すら感じてしまうのだ。ただ、「どうしてマルコヴィッチでなければいけなかったのか?」というのは、観ている誰しもが感じる疑問だと思う。
そもそも、ジョン・マルコヴィッチとは、メジャーな役者であるにも関わらず、どんな作品に出演しているかが思い出せないといった”不思議なカルト性”を備えた存在。そのように考えた時、他人に侵入されてしまうなんて役は、実はうってつけなのかもしれない。
この作品での、クレイグが入ったマルコヴィッチ、ロッテが入ったマルコヴィッチを演じ分ける怪演も絶妙であったと思う。最終的に、秘密の穴の先には、「人間の存在とは何なのか?」という哲学的なテーマが横たわっているのだと思う。
時間、空間、恋愛、性といった様々な概念を倒錯させる「マルコヴィッチの穴」とは、”現代の人間社会の混迷”を象徴する不可思議なキーワードとして、いつまでも脳裏に深く刻み込まれるのかも知れない。
まずオフィスのある階が、最初のつかみはオッケーでしたよねw
ラストは私的には、怖いなと思いました。