ブランカとギター弾きの紹介:2015年イタリア映画。日本人映画監督の長谷井宏紀が、ヴェネツィア・ビエンナーレとヴェネツィア映画祭の全面出資を得て製作した長編第1回作品です。長谷井は、フィリピン・マニラ市内のスラムを舞台に、盲目の老ギタリストと孤児の少女の出会い、心の軌跡を諧調ゆたかなカラー映像の中でとらえています。盲目のギタリストを演じるのは、役柄そのままの街頭演奏家ピーター・ミラリ。少女ブランカには、演技初挑戦で映画初主演のサイデル・ガブトロ。その他、街頭で出演交渉を受けた少年たちのナイーブな演技が出色の作品です。
監督:長谷井宏紀 出演者:サイデル・ガブテロ(ブランカ)、ピーター・ミラリ(ピーター)、ジョマル・ピスヨ(セバスチャン)、レイモンド・カマチョ(ラウル)ほか
映画「ブランカとギター弾き」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「ブランカとギター弾き」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
ブランカとギター弾きの予告編 動画
映画「ブランカとギター弾き」解説
この解説記事には映画「ブランカとギター弾き」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
ブランカとギター弾きのネタバレあらすじ:起
ブランカ(サイデル・ガブテロ)は、生まれも育ちもフィリピンのルソン島です。小さな頃はお母さんとふたりで暮らしていましたが、ある日、彼女を置いて、お母さんは男と人とどこかへ行ってしまいました。お父さんのゆくえも知らない彼女は、その日から独りで暮らすことになりました。
独りであっちへ行き、こっちを歩いてスラムにたどり着いたブランカは、スリを覚えスリで生活していくことになりました。誰にも小言を言われずに、自分の腕で食べていくことと、少しずつお金が貯まることで、スリは彼女の生活に無くてはならない生活手段になっていきました。
スラムには、貧しい生活を受け入れて生きる人たちがたくさん住んでいます。しかし、子どもたちは一生懸命に遊び、屈託がありません。お腹が空けば家へ帰り、お母さんに甘えて笑い合っています。ブランカは夕暮れ時になると、スラムの子たちの中で、自分ひとり、置いてきぼりなった気がして仕方ありませんでした。
ある昼下がり、思い立ったブランカは、スラムの公園でギターを弾くピーター(ピーター・ミラリ)のところへ向かいます。路上生活者で、物乞いをして暮らすピーターなら、思いを分かち合えるかもしれないと彼女は考えたからでした。
ピーターは盲目のギタリストです。目が見えない人だけに、近づいて来た人の気配や匂いで相手の人柄を嗅ぎ分けます。布施の小銭を缶に投げ入れたあと、からかうようなしぐさをして立ち去らないブランカにうさん臭さを覚えたピーターは、目くじらを立ててブランカを追い払いました。
しかしブランカは、ピーターのところへまた戻ってきます。ピーターは警察官に、公園から出ていくよう迫られています。ブランカは、もっと大きな街、サンフェルナンドへ行こうとピーターを誘います。ピーターも、2、3日ならといいよ、と一緒に出稼ぎに出ることに決めました。
ブランカとギター弾きのネタバレあらすじ:承
ピーターとブランカは、都会へ出た最初、コンビの歌手としてパブへ雇われます。ブランカの歌声は客を引き寄せますが、ブランカをよく思わない先輩のウェイターに嫌われます。ウェイターはさらに、ブランカが店の金を盗んだと店主に嘘の報告をして、ふたりを店から追い出します。
スラム時代に貯めた所持金ごと店主に没収されてしまったブランカは、公園のベンチを居場所と定めたピーターを残して街をさまよいます。一文無しの孤児に戻った彼女はまたスリを企みます。しかし生き馬の目を射抜く都会では、チンピラの子たちにも縄張りがあって結果が伴いません。
一方で、ブランカの容姿に目を止めた娼館の女スカウトが、彼女を売り払おうと狙っています。さらに、孤児院のシスターが、浮浪者のピーターに事情を訊ねています。左側からは悪意、右側からは善意の大人がブランカを挟み撃ちにしてきます。行く手を阻まれたブランカは、街の孤児セバスチャン(ジョマル・ピスヨ)に「仲間に加われ」と誘われます。
ブランカとギター弾きのネタバレあらすじ:転
セバスチャンと兄貴分のラウル(レイモンド・カマチョ)は、翌日からブランカを連れてスリをはじめます。3人共、親に捨てられた子どもたちです。なかでもラウルは傷つきやすく、自分たちの境遇を吐き捨てるように卑下しています。ブランカは乱暴なラウルを敬遠し、子犬のように寄り添ってくる年下のセバスチャンと心を通わせます。
街の孤児たちと生活を共にしても、埋まらない溝を抱えるブランカは、ある日の午後、公園へ戻り、ピーターを探します。その日、公園にピーターの姿はなく、またも現れた娼館のスカウトに、ピーターを探しに行こうと誘われます。ブランカは、娼館の楽屋まで来て、はじめて事の重大さに気づきます。
娼館の入口から、けたたましく逃げ出すブランカを追う女に、ラウルが金を要求し、自分たち孤児の住処へ女を案内します。只事ではない事態を察したセバスチャンは、ただちにピーターのもとへ走ります。あわや娼婦へ逆戻り、というところで、ブランカはピーターとセバスチャンに救われます。
ブランカとギター弾きの結末
そのできごと以来、とうとう孤児院へ入ることを覚悟したブランカは、孤児院の前でピーターに送られます。公園へ戻るピーターに別れを告げたブランカは、再生の道へ進むことになりました。
しかし、気ままな生活に馴染んだブランカにとって、管理される暮らしは苦しみ以外の何物でもありませんでした。女の子の集団の中で底知れない孤独を感じた彼女は、いま自分にとって必要な居場所がはっきりと理解できました。
その夜更け、ブランカは孤児院を脱け出します。だらだら坂を下り、長い道のりを夜通し歩き続けたブランカは、昼前にピーターのいる公園にたどり着きました。ギターの音色が聞こえてきます。そして、ピーターを庇うように手助けしているセバスチャンの姿もそこに見つけることができました。
以上、映画「ブランカとギター弾き」のあらすじと結末でした。
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