ブルーノート・レコード ジャズを超えての紹介:2018年スイス,アメリカ,イギリス映画。第二次世界大戦の前夜、ナチス統治下のドイツから米国ニューヨークへ渡った2人のユダヤ人、アルフレッド・ライオとフランシス・ウルフ。ブルーノート・レコードは猛烈にジャズ愛を抱いていた彼らが1939年に開いた小さなレコード会社だ。レコーディングではアーティストに自由を渡しつつ、かつ新曲を書くように励ます。売上を考えず理想を追求するライオンとウルフの信念はジャズのみならず、アートやヒップ・ホップなどの音楽にも足跡を残してきた。約80年に渡り世界中の音楽ファンを魅了し続けるジャズ・レーベルの真実に迫るドキュメンタリー。スペシャル・セッションの映像やレアなアーカイブ映像、そして歴代のブルーノート・レコードのアーティストたちの演奏などと共に歴史が紐解かれる。
監督:ソフィー・フーバー 出演:ハービー・ハンコック、ウェイン・ショーター、ロバート・グラスパー、アンブローズ・アキンムシーレ、マーカス・ストリックランド、リオーネル・ルエケ、デリック・ホッジ、ケンドリック・スコット、ルー・ドナルドソン、オラ・ジョーンズ、テラス・マーティン、アリ・シャヒード・ムハマド、ケンドリック・ラマー(声の出演)、ルディ・ヴァン・ゲルダー、マイケル・カスクーナ、ドン・ウォズほか
映画「ブルーノート・レコード ジャズを超えて」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「ブルーノート・レコード ジャズを超えて」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
ブルーノートレコード ジャズを超えての予告編 動画
映画「ブルーノート・レコード ジャズを超えて」解説
この解説記事には映画「ブルーノート・レコード ジャズを超えて」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
ブルーノートレコードのネタバレあらすじ:起
80年にわたりおよそ1000枚の作品を生み出してきたブルーノート・レコード。数々のアーティストや関係者らによって語られる物語はスタジオの風景から始まります。
ロバート・グラスバーを中心として若手アーティスト達で結成されたスーパーグループ、ブルーノート・オールスターズ。現在のブルーノートを代表する彼らのスタジオ収録に、ジャズ界のレジェンド、ハービー・ハンコックとウェイン・ショーターがあらわれます。現在のブルーノート・レコード社長ドン・ウォズも彼らのサウンドには当時のブルーノートのように独自の音があると興奮気味に話します。
アンブローズ・アキンムシーレは「ブルーノートは革新のレーベルだ」と語り、テラス・マーティンは「ブルーノ―トは多くのアーティスト達が生きるための拠り所にしていた」と語ります。そんなかけがえのないレーベルを立ち上げたのはアルフレッド・ライオンと、フランシス・ウルフという2人の青年でした。ユダヤ人だった彼らは1930年代にナチス・ドイツの迫害から避難するためにニューヨークへやってきました。ジャズが大好きだった2人は趣味の延長として1939年にブルーノート・レコードを設立。音楽好きで熱烈なジャズのファンでもあった彼らは聴きたい音楽だけを録音し、純粋で潔白な気持ちでミュージシャンを信頼していたと、ドン・ウォズは伝えます。
ブルーノートレコードのネタバレあらすじ:承
設立以来、ライオンとウルフは誰にも何を作れと言わず、心の真実のまま舞台を準備するやり方で多くのアーティストから信頼されていきました。ジャズは、当時音楽自体が特別な意味のあったアフリカ系アメリカ人たちによって、まるで足枷を外したかのように時代に姿を現してきたのでした。
以降、セロニアス・モンク、パド・パウエウ、ジョン・コルトレーンやマイルス・デイヴィスなどのミュージシャンと契約を果たし、彼らはたちまち人気をものにしていきました。大編成の音楽の話も増え、ニュージャージ州大きなスタジオも建てそこで400枚ものアルバムを録音しました。
そして1966年。ブルーノートは2作の特大ヒットと巡り合います。リー・モーガンの〈ザ・サイドワインダー〉、そして1年後のホレス・シルヴァー〈ソング・フォー・マイ・ファーザー〉です。レコードは発売から48時間で売れ切れ、誰もが予測しない事態となりました。
ブルーノートレコードのネタバレあらすじ:転
しかしそれは同時に販売会社からの次回ヒット作を求めるプレッシャーを伴いました。ブルーノートは莫大な金額の資金繰りにより経済難に陥っていきます。それでも創設者ライオンとウルフの望みは、ヒットを気にすることなく好きな音楽レコードを制作することのみ。ついに経営ができなくなり2人はブルーノートを大レーベルリバティ・レコードへ売却。アイオンとウルフは2年契約で部門長として業務を続けます。
「買った連中はセールスしか頭にない。アートなんてどうでもよかった」そう語るのはルー・ドナルドソン。特にずっと自分の好きな音楽のためだけに働いてきたライオンにとって、セールス計画や予算作り、慣れない会議など堪えることができませんでした。彼は1969年に去り、ウルフが後を継ぐものの1971年に亡くなりました。マイケル・カスクーナは「こうしてストレートなジャズ録音はほぼなくなった」と語ります。
しかし違う形でジャズは再び姿を現すこととなります。スラムの物語を語っていた50年~60年代のジャズに代わって、80年代に突如ヒップ・ホップが現れスラムを語り出したのです。それもジャズレコードの音源を使って。特にルー・ドナルドソンの〈ビリー・ジョーの唄〉はもっとも多くサンプリングされ、これまでにカニエ・ウェスト、サイプレス・ヒル、デ・ラ・ソウル、エミネム、ア・トライブ・コールド・クエストなどによって使用されてきました。テラス・マーティンはヒップ・ホップを経てジャズにはまったと言い、まさにジャズはヒップ・ホップの始祖となりました。
ブルーノートレコードの結末
そしてブルーノートは79年~84年までの休眠期間を経て、1985年にEMI/キャピトルグループの手によって再興。ライオンとウルフが設立した当時の品質と標準を守ることを決意したうえでのリスタートとなったのです。
そして2003年。ブルーノートにシャイで控え目な女性がやってきました。大学でピアノと歌を専攻したとう彼女の名前はノラ・ジョーンズ。その歌声を聴いた時の衝撃を鮮明に語るのは当時のブルーノート新社長ブルース・ランドヴァル。ノラ・ジョーンズは主要全部門でのグラミー賞、レコード・オブ・ジ・イヤーを手にしました。
ジャズは確実に若い世代へと届き始めています。
ロバート・グラスバーは「これを見た学生が刺激され自分の音楽をものにしていく。大きなノイズを発する背景にはジャズがあり、ジャズメンはすごくクールだ」と意気揚々に語ります。アンブローズ・アキンムシーレは「人々が明確にメッセージを持っていた時代に戻っていると思う」と言い、テラス・マーティンは「時代をやわらげるために音楽が必要」と話します。
そしてロバート・グラスバーは語るのです。「今の世代に音楽を理解してほしい。とりわけジャズをね」と。
以上、映画「ブルーノート・レコード ジャズを超えて」のあらすじと結末でした。
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