少女ヘジャルの紹介:2001年トルコ映画。トルコ人の老人とクルド人少女の心の交流を描くドラマ作品。弾圧によって故郷も家族も失った5歳のクルド人少女ヘジャルは、イスタンブールの親戚へ預けられることになった。しかしヘジャルが到着したその夜、親戚一家は武装警察によって全員射殺されてしまう。たった1人生き残ったヘジャルは、同じアパートに住む孤独なトルコ人男性ルファトに保護された。互いに母語しか話せない2人は衝突を繰り返すが、次第に心を通わせるようになっていく。
監督:ハンダン・イペクチ 出演者:シュクラン・ギュンギョル(ルファト)、ディラン・エルチェティン(ヘジャル)、フュスン・デミレル(サキネ)、ユルドゥス・ケンテル(ミュゼェイェン)、I・ハック・シェン(エブドゥ)ほか
映画「少女ヘジャル」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「少女ヘジャル」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
少女ヘジャルの予告編 動画
映画「少女ヘジャル」解説
この解説記事には映画「少女ヘジャル」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
少女ヘジャルのネタバレあらすじ:クルド人の悲劇
舞台は1998年のトルコ、イスタンブール。クルド人を巡る民族間問題が激化する街に、1人の少女がやって来ました。彼女の名前はヘジャル、5歳。弾圧により故郷も家族も失ったクルド人です。親戚のエブドゥに連れられ、嫌々イスタンブールにやって来た彼女は、裕福ないとこのアパートに預けられることになりました。
エブドゥが帰ってしばらくして、突然武装警察がアパートに乗り込んで来ます。部屋がクルド人分離独立派の拠点になっていたことから、掃討作戦のターゲットになってしまったのです。銃撃戦の末、親戚一家は全員殺害され、ただ1人戸棚に隠れていた小さなヘジャルだけが生き残りました。
ヘジャルはフラフラと部屋を出て廊下に立ちすくみます。そんな彼女を保護したのは、向かいの部屋に住む元判事のトルコ人男性ルファトと、通いの家政婦サキネでした。ルファトはヘジャルを警察に渡そうとしますが、不憫に思い、一晩だけ家に置いてやることにします。
ヘジャルがクルド語で「ママ」と呟くと、サキネが駆け寄り同じくクルド語で喋り始めました。実は彼女もクルド人だったのです。10年もの間その事実を知らされていなかったルファトは驚きますが、クルド語の使用は禁止するとだけ告げました。
少女ヘジャルのネタバレあらすじ:老人と少女
翌日。ルファトは何とかヘジャルの世話をしようと試みますが、互いに母語しか話せないため、満足にコミュニケーションも取れません。ルファトは妻を亡くして以来、孤独な生活を送っていました。それが頑固で意固地な性格に拍車をかけ、ヘジャルにも高圧的になってしまいます。ヘジャルも完全に心を閉ざし、トルコ語を強要するルファトに「クソ食らえだよ!」とクルド語で喚きました。
ヘジャルが眠った後、ルファトは彼女の服から1枚のメモを見つけます。そこにはエブドゥの連絡先が記されていました。早速電話してみますが、応答はありません。翌日、ルファトはヘジャルに新しい服や靴を買ってやりました。ヘジャルは嬉しそうな顔をしますが、まだ懐く様子は見られません。
少女ヘジャルのネタバレあらすじ:縮まらない距離
ある日、アパートの隣人ミュゼェイェンから、ルファト宛に手紙が届きました。孤独な未亡人である彼女はルファトに好意を寄せており、互いの自由を保ちつつ良い関係を築きたいと伝えてきたのです。ルファトは困惑しますが、彼自身確かに孤独を感じていました。
夜、街に出たルファトとヘジャルは食事のため店に入ります。ヘジャルはウェイターからチョコレートを貰いますが、それを知らなかったルファトから盗みを疑われ、叱られてしまいました。誤解はすぐに解け、ルファトは慌てて謝りましたが、ヘジャルは1人走り出してしまいます。しかし行く当ての無い彼女はただ往来に立ちすくむしかありませんでした。
翌朝、部屋を訪れたサキネはまだヘジャルがいることに驚き、そして笑顔になります。ヘジャルはサキネにだけ心を開き、彼女にとても懐きました。そして自分の名前は「ヘジャル」だとこっそり教えます。それを見ていたルファトは、連絡の取れないエブドゥに直接会いに行くことにしました。
少女ヘジャルのネタバレあらすじ:クルド人の現実
電車やバスに揺られながら、ルファトはヘジャルを連れてエブドゥが暮らす村を目指しました。どんどん貧しくなっていく景色に動揺を隠せないルファト。道が悪くゴミも多いため、先に1人でエブドゥを訪ねることにしました。肩を寄せ合って生きるクルド人達は、皆貧しい生活を強いられています。
やっと会えたエブドゥも同郷人の家に居候している状態で、しかも大勢の子どもが窮屈そうに暮らしていました。その困窮ぶりを見たルファトはヘジャルのことを言い出せず、そのまま帰って来てしまいます。
エブドゥが母親のところへ連れて行ってくれると信じているヘジャルは反発し、クルド語でルファトをなじりました。ヘジャルは家族の死を理解出来ていないのです。サキネに通訳して貰い、エブドゥはいなかったと伝えても納得しません。
しかしこの一件を機に、ルファトはヘジャルへの態度を軟化させました。笑顔を見せ、2人で花火を見たり、ケーキを食べたりします。そしてサキネにクルド語を教えてくれるよう頼みました。
少女ヘジャルの結末:ヘジャルが選んだ道
拙いクルド語で必死に話しかけるルファト。ヘジャルもそれに応えるように、少しずつトルコ語を覚えていきます。ルファトはヘジャルを可愛がり、ヘジャルもようやくルファトに懐きました。
ルファトは社会福祉局に問い合わせ、ヘジャルの両親が既に死亡していると知ります。そこで、ヘジャルと養子縁組を結ぶ決意をしました。ルファトはヘジャルと役所に行くため部屋を出ます。すると廊下でエブドゥが座り込んでいました。彼はラジオで掃討作戦があったことを知り、ヘジャルを心配して駆けつけたのです。再会を喜ぶヘジャルとエブドゥの姿を、ルファトは複雑な思いで見つめていました。
部屋に戻ったルファトは、エブドゥにヘジャルを我が子と思って育てると約束します。エブドゥも承諾しますが、ヘジャルは早く母親に会いに行こうと言って急かしました。エブドゥが家族の死を言い聞かせても無駄に終わります。ルファトは行かないでくれとヘジャルに声をかけますが、彼女はエブドゥと一緒に玄関へ向かいました。引き止められないと悟ったルファトは、ヘジャルを手放す決意をします。
彼は、せめてまた会いに来て欲しいと頼みました。ヘジャルとエブドゥが出て行った後、ルファトは窓から2人の背中を見送ります。ヘジャルは振り返って笑いました。それを見たルファトも涙と笑みを浮かべ、この映画は終わりを迎えます。
以上、映画「少女ヘジャル」のあらすじと結末でした。
この映画の感想を投稿する