カイロ・タイム~異邦人~の紹介。2009年カナダ,アイルランド映画。トロント映画祭にてBest Canadian Feature Film受賞。エジプトの首都カイロを舞台に、夫と休日を過ごすためにやって来たカナダ人女性とエジプト人男性が、こころ惹かれ合う夢のような時間を描くロマンチックな愛の物語。
監督:ルバ・ナッダ 出演:パトリシア・クラークソン(ジュリエット)、アレクサンダー・シディグ(タレク)、エレナ・アナヤ(キャサリン)、アミナ・アナビ(ヤスミン)、ほか
映画「カイロ・タイム~異邦人~」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「カイロ・タイム~異邦人~」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
カイロ・タイム~異邦人~の予告編 動画
映画「カイロ・タイム~異邦人~」解説
この解説記事には映画「カイロ・タイム~異邦人~」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
【エジプトの首都で不倫!?】
カナダ人のジュリエットは女性誌の編集者。
年齢は恐らく50歳前後。
若くないけれど、美人ですらりとした容姿で少女のような瞳を持っています。
彼女は単身でエジプトの首都、カイロの土地にやってきます。
パレスチナのガザ地区で働く国連職員の夫と合流し、夫婦でヴァカンスを過ごす予定になっていました。(ナイル川クルーズ?)
ところがカイロの空港には夫の姿はありませんでした。
夫の代わりにジュリエットを待っていたのは、国連で夫の警備を担当していたエジプト人のタレクでした。
夫は駐在地のガザでちょっとしたトラブルを抱えてしまい、予定通りにカイロまで飛んでくることができず、代わりに信頼を置いているタレクを迎えによこしたのです。
そしてタレクは「あなたのご主人がやって来るまで、私があなたのガイドを務めましょう」とばかりにカイロの街を案内してまわります。
二人は毎日一緒。
言葉も通じず文化風習も分からないエキゾチックな街カイロで不安な気持ちを抱えるジュリエット。
当然頼る相手はタレクのみ。
ロケーションは雄大なナイル川とピラミッドがそびえたつ異国情緒たっぷりの街。
紳士的で繊細に見えるタレクに恋心を抱くのはさもありなん。
タレクも上司の妻のジュリエットに恋心を寄せます。
知的かつか細い美人女性です。
そもそもエジプト人というのは惚れっぽい人種です。
自分の瞳を見つめて自分の話に熱心に耳を傾け、無邪気に笑い、優美なワンピースの裾をゆらして軽やかに歩く白い肌を持つ女性にドキドキしないわけがありません。
【ヒロインが選ぶのは夫?エジプト人の男性?】
タレクとジュリエットは夢のようなロマンチックな時間を共に過ごしていますが、それも長くは続きません。
遂にジュリエットの夫がカイロの土地にやってくることになったのです。
さて彼女はどうするのか!?
夫を振り払ってタレクの胸に飛び込むのか、
それともタレクと涙の別れをし、苦渋の決断として長年連れ添った大事な夫の元へ戻るのか!?
この部分をじれじれとひっぱり観客をはらはらさせるのかと思いきや、
意外や・・・ジュリエットは「あっさり」夫の元に戻ります。
彼女の苦悩をもっと描くのかと思いきや、すうとすんなりというように夫側へ行きました。
エジプト人のタレクを選んだほうがドラマチックにもなっただろうに、
「なんだ単なるアバンチュールだったのか」
とそれまでのタレクとジュリエットの甘い時間を見せつけられていた観客としては拍子抜けです。
【主役のふたり】
ヒロイン役女優のPatricia Clarksonはこの映画撮影の時、50歳。
凛とした美しさがあり、ターコイズブルーのワンピースもよく似合っていて素敵でした。
(とはいうものの、ワンピース姿でピラミッドに上るシーンはおかしいと思います)
タレク役の俳優のAlexander Siddigはスーダン生まれの英国育ち。エジプト人っぽさはまったくありません。アメリカで生まれ育った日本人(日系人)が何か「におい」が違うのと同じです。
また彼の優しげな顔つきはよかったですが、いまひとつフェロモンが足りません。
もう少しミステリアスでエキゾチックな雰囲気を醸し出していれば・・・
簡単にいえばもっと魅力があれば、ヒロインとの恋愛に観客はもっとドキドキして見入ることができたのではないでしょうか。
【エジプトの雰囲気はいまいち・・・】
撮影はカイロ市内だけではなく、白砂漠、アレキサンドリアでも行っていました。
しかし壮大というスケール感がゼロ。
恐らくいろいろ撮影の規制が煩く、
またなんせエジプトなので思う通りにロケも進まず、
やむを得ずこじんまりした感じの撮影になってしまったのだろう、と思います。
本当はギザのピラミッドの撮影ばかりではなく、
他の観光スポット(ルクソールや紅海など)でもカメラを回したかったのだと思いますが、
撮影許可の問題などで思うとおりにいかなかったのでしょう。
カイロの街中の撮影も規制が多くあったのかもしれません。
しかし「カイロの顔」というスポットで撮影をしていないのはがっかりです。
なぜハンハリーリ市場のメインストリートを二人は歩かないのだ、
なぜ考古学博物館に行かないのだ、
カイロタワー、モカッタムの丘、サッカラには行かないのだ・・・
渋谷が舞台なのにスクランブル交差点が出てこないのと同じです。
この映画を見ていると、カイロには何もなくピラミッドとアホワ(カフェ)しか行く処がないように見えます。
もう少し観光地や賑やかで華やかな街中を映していれば、観光PR映画にもなり、もっと価値のある映画になったのではないでしょうか。
カイロに行ったことがある人は懐かしく思え、まだ行ったことない人は
「こういう街なんだ」とわくわく面白く見ることができたことでしょう。
【ほかにも矛盾がいっぱい!?】
さらに辛口で言わせてもらうならば「繋ぎ」がおかしい。
「あのそばにこれは位置していない」
「あの建物のすぐそばにその景色・・・ありえない」
「あそこからあそこへ移動?え?どうやって?」
などいちいち気になります。
これも東京で例えるなら、今の今まで主役たちが浅草にいたのに、その五分後には府中にいることになっているようなもの。
【恋愛映画としての評価】
風景が期待できないものでも、ストーリーの核がしっかりしていればまだよかったのですが、肝心なヒロインの言動に共感を持てません。
人妻がエキゾチックな土地で(魅力に乏しい容姿とはいえ)外国人の男性に想いを寄せる・・・
安定した結婚生活を送ってきた中年女性に予想もしていなかった恋心が芽生えたわけです。
自分の気持ちや感情にもっと驚いたり喜んだり戸惑ったりしてもよさそうなのですが、
そういった彼女の葛藤や悩みなど一切見えてきません。
どこまでタレクに夢中になったのか、どういう思いで最後は夫の元に戻ったのか、
まったく分かりません。
決して駄作ではないのですが非常に中途半端な手ごたえしか得られない映画でした。
もっとバタくさくドロドロした昼ドラのような作りにするか、
タレクとジュリエットをシーザーとクレオパトラの生まれ変わり、という設定の不思議系の内容にするなどしたほうがよほど面白くなったのでは?
さらりとした綺麗でライトな感じの大人向け恋愛映画を好む人にはよい映画だと思われます。
もし単純にエジプトのツーリズムの風景を期待するのなら
「ナイル殺人事件」や「スフィンクス」の古い映画を見たほうがよほどいいです。
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