アルベール・カミュの紹介:2010年フランス映画。妻に別れを切り出せないまま、数年ぶりに新作を完成させたアルベール・カミュが、亡くなるまでの数日、故郷のアルジェリアと母、パリでの作家生活と愛人たちを振り返る。
監督:ローラン・ジャウイ 出演者:ステファン・フライス、アヌーク・グリンベルク、ガエル・ボナ、ギョーム・ド・トンケデック、フロリー・オークレルク、ほか
映画「アルベール・カミュ」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「アルベール・カミュ」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「アルベール・カミュ」解説
この解説記事には映画「アルベール・カミュ」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
アルベール・カミュのネタバレあらすじ:起・六年ぶりの新作
パリを離れ執筆をつづけるアルベールは、6年ぶりに新作を書き上げた。そんな彼の胸に去来するのは、幼少期に母と祖母と過ごしたアルジェリアでの日々。貧しい家庭に育った彼は、ジャルマン先生にその賢さを見出され、学校へ行くことを勧められ、作家として才能を開花させた。
新作の完成と年越しの祝いにガリマール夫妻を迎え、家族ぐるみで祝いの席を持ったが、新作のテーマを愛だと言うと、妻のフランシーヌは笑った。アルベールはそんな妻と離れるつもりでいたが、話を切り出せずにいた。
10年前、パリで舞台演出をしていた頃、アルベールは主演女優と深い仲になり、それをフランシーヌに隠すことはなかった。ただ自分だけが作家や演出家として外へ出るのに、音楽家のフランシーヌが家でピアノを弾くだけなのが忍びなかった。
彼女は彼の不貞を知りながらも、サルトルからの酷評を嫉妬だと言って、貧しい生まれにコンプレックスのあるアルベールを慰めた。
アルベール・カミュのネタバレあらすじ:承・フランシーヌと愛人たち
当時フランスの植民地からの独立を求めて、アルジェリアの治安が悪化、アルベールはアルジェに残る母を心配していた。
同じ頃、フランシーヌも主治医から重度の神経衰弱だと診断され、治療を勧められた。彼女の家族はアルベールの不貞を責め、彼は愛人の女優に、舞台の主演をジャニーヌと言う彼女と似た女優に替え、新しくまた関係を持った。
入院治療でフランシーヌは快方に向かったが、ある日、窓から飛び降り骨折。彼女のために、アルベールは新しい家に移った。
アルベール・カミュのネタバレあらすじ:転・故郷としてのアルジェリア
1956年、アルジェリアに帰る度に母に状況が落ち着くまでフランスで過ごすように頼んだが、母はパリに来る事を拒み続けた。さらに、集会で内戦反対の演説をするも、批判されてしまった。
ガリマール夫妻との新年のお祝いを終えても、アルベールは別れを切り出せないでいた。彼にとってフランシーヌは命の恩人で、彼女が居なければ「最初の人間」は完成していなかった。それでも彼の心は他の女性の所にあり、電話をかけ、手紙を書いた。
相手は、二年前にアルジェリアの内戦について仲間と話していたカフェで出会ったデンマーク人の若い女性だった。44歳になりノーベル文学賞に決まり、記者に追われる時も彼女と連れ立った。
ストックホルムでの授賞式では、アルジェリアの事について問われ、あくまで共存を望んでいる事を主張したが、批判にさらされ、同行していたフランシーヌはそんな彼を支え切れない事が情けないと沈んだ。
アルベール・カミュの結末:早すぎる最期
受賞後も舞台演出など活動していたが、喀血(かっけつ)から結核と診断され、医師に静養するように言い渡され、アルベールは一時自宅に引きこもり、デンマークの女性とも会うのを辞めた。
しかし、ガリマールに連れ出され、ル・モンドに書かれた自分の記事に怒り、会わないと決めた彼女の元を訪ねて関係を持った。
フランシーヌに切り出せぬまま、同じ列車でパリへ向かおうとすると、フランシーヌの方から、自分と別れてガリマール夫妻とパリに行くように告げられ、発車間際の列車から降りた。そして、車でパリに向かう途中の事故で彼は亡くなった。
以上、映画「アルベール・カミュ」のあらすじと結末でした。
アルベール・カミュのレビュー・考察:走馬灯のよう
現在、ノーベル賞受賞前後、幼少期、主に三つの時間が作品の中にパズルのように組み合わされている。カミュのアイデンティティともいえるアルジェリア育ちという点は、他者には指摘されたくないコンプレックスでもあり、彼を執筆活動や演出家としての活動に駆り立てる原動力になっているように思う。アルジェリアの回想には幼少期にも独立戦争時にも常に母親とのシーンがあり、パリで執筆しながらも常に想っていたことがうかがえる。六年ぶりの新作が遺作になってしまうまでの数日に彼がその生涯の断片をたどって行く様はまるで走馬灯のようだった。
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