カプリコン・1の紹介:1977年アメリカ,イギリス映画。「宇宙からの中継がもし嘘だったら?」。陰謀論で取り上げられる題材をそのまま映画にしたポリティカル・サスペンス。エリオット・グールド、ハル・ホルブルックなど、癖のある性格俳優がキャスティングされた佳作。
監督:ピーター・ハイアムズ 出演:エリオット・グールド(コールフィールド)、ジェームズ・ブローリン(ブルーベーカー)、カレン・ブラック(ジュディ)、テリー・サヴァラス(農薬散布会社の社長)、ほか
映画「カプリコン・1」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「カプリコン・1」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
カプリコン・1の予告編 動画
映画「カプリコン・1」解説
この解説記事には映画「カプリコン・1」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
カプリコン・1のネタバレあらすじ:起
火星への初めての有人宇宙船カプリコン1号が離陸しようとしています。カウントダウンが始まりましたが、急に乗組員たちは外へ出されます。3人はそのまま砂漠にある格納庫に移動。カプリコン1号は彼らなしで離陸してしまいました。戸惑う彼らの前に、NASAの上級職員ケラウェイ博士が姿を見せます。彼によれば、カプリコン1号には生命維持装置に問題があって有人での打ち上げは不可能。しかし、また計画をやり直すと巨額な費用がかかります。そのため、この格納庫に用意された火星表面を模したセットで、あたかも着陸が成功したかのような芝居を打って欲しい、と乗組員たちに頼みます。
カプリコン・1のネタバレあらすじ:承
国家的な詐欺になるわけで、もちろん3人は拒否しますが、家族への脅迫も匂わされて、渋々引き受けます。計画はうまくゆき、乗組員と家族の会話がテレビで中継されますが、NASAの技術者がその詳細に疑問を覚えます。そしてそれを友だちである新聞記者のロバートに告げるのですが、その技術者はそのまま行方不明に。ロバートも自分の車のブレーキに細工され、危うく命を落としかける羽目に。
カプリコン・1のネタバレあらすじ:転
何かあると思った彼は調査を開始。乗組員の家族に会うと、妻の一人が夫の言う事に違和感を覚えていたことを知ります。一方、宇宙船は大気圏突入時に事故で消滅したとNASAが発表。それを知った乗組員たちは自分たちも殺されると考え、格納庫から何とか脱出。途中まで飛行機を使いますが、燃料切れのため、砂漠をバラバラに歩き始めます。しかし2人は殺され、1人だけが残りました。そしてロバートの方は調査の結果、ようやく格納庫までたどり着きますが、人がいそうには見えません。諦めかけた時、宇宙飛行士が持っていたはずのネックレスを発見。間違いなくここが陰謀の現場だということを知ります。
カプリコン・1の結末
ロバートは近所の農業の経営者に飛行機に乗せてもらい、空から砂漠を捜索。生き残った宇宙飛行士を見つけ出します。何日か経ち、墓地で宇宙飛行士たちの葬儀が行われています。そこへやってきたのが生き残りの乗組員。NASAの陰謀は潰えたのでした。
「カプリコン・1」感想・レビュー
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二人の宇宙飛行士とNASAのお友達は、本当に殺されてしまったのか?
そうは思わずに、ハッピーエンドにしておきませんか?
カプリコン2はなぜ無いのか?国家の陰謀で、制作スタッフは消されてしまったとか?(冗談)
サバラスの登場を見逃してしまったかと思いきや、何とラスト寸前! -
の映画「カプリコン・1」は、SF政治スリラーの傑作だと思います。
1978年のお正月映画として「オルカ」と二本立て公開され、当時、興行の本命が「007私を愛したスパイ」、対抗馬が「カプリコン・1」と言われていたそうです。USAのヒューストンにあるNASAは世紀の宇宙ショーにわきかえっていました。人類初の有人火星宇宙船の打ち上げが今まさに行なわれようとしていました。
発射5分前、カプリコン1号から三人の宇宙飛行士(ジェームズ・ブローリン、サム・ウォーターストン、O・J・シンプソン)がいずこともなく連れ出され、一方、ヒューストンでは無人のカプリコン1号が火星を目指して打ち上げられました。三人の宇宙飛行士達は閉鎖された空軍基地へ連れて行かれ、格納庫に作られた宇宙船と火星のセットから全世界に向けて偽のTV放送をさせられる事になります。
かつてアポロ11号がTVの画面に月面の映像を送って来た時にあれは実はスタジオでの創作画面なんだというジョークが日本でも生まれたそうですが、アメリカでも同じ事を考えた人がいて、これがこの映画が製作される際のアイディアになったものと思われます。
しかし、それはまだ話の発端であり映画の本筋は別のところにあります。
この偽のTV放送を成功させた後、今回のカプリコン1号には何か裏がありそうだと新聞記者の一人が気付きます。
この疑惑を探り始めると途端に何者かによる妨害がありNASAのコンピューター担当の人間が突然消えてしまったり、新聞記者の車に何か細工をされて車が暴走させられたりします。この新聞記者に扮するエリオット・グールドが敏腕そうに見えないところが実に面白く、丈夫なだけが取り柄という感じなので凄まじい車の暴走シーンの果てに川に突っ込んで助かってもご都合主義という気がしないのもエリオット・グールドの個性をうまく活かしたピーター・ハイアムズ監督の職人技の演出が光ります。
その後、実際は無人のカプリコン1号が帰還中に爆発してしまいます。
命の危険を感じた三人の宇宙飛行士は、まやかしの火星からジェット機を奪って脱走しますが燃料不足で砂漠に不時着し、別々に徒歩で逃げる事になります。サム・ウォーターストン扮する宇宙飛行士がヘリコプターの追っ手に捕まるシーンは悲しくておかしくもあり、実に味わい深いシーンです。
エリオット・グールドの方は編集長に反対されながらも、ようやく秘密を探り出します。
編集長とのやりとりもウイットに富んでいますが、ある人物の協力で新聞記者が宇宙飛行士を助けるクライマックスのシーンは本当にクライマックスらしい爽快さを感じさせてくれ、大いにカタルシスを味わう事が出来ました。曲者俳優のテリー・サヴァラスが新聞記者に協力する”もうけ役”で出演しているところも思わずニヤリとさせられました。
三人の宇宙飛行士の中で最後まで残るのはジェームズ・ブローリン扮する一人だけですが、後の二人の宇宙飛行士やコンピューター担当の人間がどうなったのか、最後まで説明していないところも何か不気味で薄気味悪さが残ります。
つまりこの映画は、国家的陰謀に巻き込まれた三人の宇宙飛行士の失踪の謎、事件の真相を追求する敏腕新聞記者の活躍を軸に、国家の威信の為には犠牲をも止むなしとする非情で冷酷な権力機構の恐怖を大胆な着想で描いていますが、頭脳明晰な科学者達の秘密工作を、もさっとした冴えない新聞記者が切り崩していくという皮肉さが、この映画を一級の娯楽映画に仕立てているのだと思います。
人類による初の火星有人探査が、国家の陰謀により、アメリカの砂漠の中に作られた偽りのセット内で行われるという設定は面白いです。周到な政府は宇宙飛行士たちが、口を割らないように帰還中に事故死したことにするのですが、そもそも飛行士たちはそうなると予測すべきだと思えます。
なんとか脱走した宇宙飛行士たちがひとりずつ捕まって殺害されて行き、最後のひとりが助けられますが、ここで登場するのがテリー・サバラス。「刑事コジャック」を見ていた世代には嬉しい顔です。最後に残った宇宙飛行士が自分の葬式に駆けつけるシーンは痛快です。