父恋しの紹介:1951年日本映画。終生「お嬢」の愛称で親しまれた美空ひばり出演の映画です。劇中、雄二役の若原雅夫から「お嬢ちゃん」と呼ばれます。その呼ばれ方があたかもひばり本人を呼んでいるようで微笑ましい一場面となっています。東京で働く母早苗を「いつ帰るのか」と、港で待つのが恵美子の日課です。恵美子はある日、桟橋で声を掛けてきた流しの男と仲よしになりました。恵美子の大好きな歌、『私は街の子』にアコーディオンで伴奏を付けてくれたそのひとは、どうやらその曲の作者らしいのですが…。
監督: 瑞穂春海 出演者:若原雅夫(牧田雄二)、三宅邦子(志村早苗)、美空ひばり(恵美子)、北龍二(岱石)、滝謙太郎(三吉)、櫻むつ子(富子)ほか
映画「父恋し」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「父恋し」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「父恋し」解説
この解説記事には映画「父恋し」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
父恋しのネタバレあらすじ:起
小さな港町で恋に落ちた牧田雄二(若原雅夫)と志村早苗(三宅邦子)。早苗の父は日本画家の志村岱石(北龍二)です。雄二は音楽家の道を志していますが、まだ修業の身です。先行きどうなるか分かりません。早苗の父岱石は、「そんな危なっかしい男に大事な娘をやれない」と結婚に猛反対します。雄二は、仕方なく早苗のもとを去ることになりました。
しかし、すでに早苗の身体には、もうひとつの生命が宿っています。驚く岱石。早苗は父親の腕をくぐって雄二を追いかけます。しかし、雄二の乗った船はともづなを解いています。雄二の名を呼ぶ早苗。しかし、雄二の耳に早苗の声は届きません。早苗の身体に起きていることを知らずに、雄二は港を発って行きました。
その日から幾歳月が流れます。旅行かばんを手にした雄二が再び港へ降り立ちます。連絡船の停泊で活気づいた桟橋から人影が消えると、どこからか「お母さん」という声が聞こえてきました。見ると、桟橋に佇んだ少女が、ぽつねんと海を眺めています。少女の寂し気な姿が雄二の目に焼き付きます。
雄二は、その足で早苗が住んでいた家を目指します。いまでは朽ちた家の門構えから、雄二の目にもそこに住む人の暮らしぶりが伝わってきます。すると、桟橋にいた少女が門から出てきました。買物籠を下げたその少女に雄二が訊ねます。「お嬢ちゃんのお母さん、早苗さんっていうんだね?」。少女は「ええ」と頷き、走り去って行きました。
父恋しのネタバレあらすじ:承
「恵美子」と、早苗の父・岱石が寝床を並べて寝る孫の顔を覗きこみます。雄二と早苗の子、恵美子(美空ひばり)はいま、祖父とふたりきりで暮らしています。今夜も寝つけない恵美子は、祖父に母親不在の寂しさを訴えます。「お母さんは、もうすぐ戻って来るよ」と祖父は言いますが、いくら待っても便りがありません。母の面影を追って、恵美子は眠れぬ夜を過ごしています。
子どもを郷に残して東京で暮らす早苗にも、寂しさからか、顔に不幸の影が宿っています。夜の酒場で客の相手をする早苗。酒を飲み、酔って涙を流すことも稀ではありません。店へ来る流しの歌手が歌う『私は街の子』。哀しい調べが、今夜も早苗の心を揺さぶります。誰が作った曲かと訊ねても、流しは作者を知りません。「そう、知らないの」と、早苗は曲の調べに身を委ね、在りし日の雄二に思いを馳せています。
雄二はいま、温泉宿を巡る流しの歌手として生計を立てています。土地から土地を巡って歌い歩くのが流しの仕事。その繰り返しがいまの雄二の毎日です。雄二の耳に、自分が作った曲、『私は街の子』の歌声が流れてきます。どんよりとした陽の射さない湾を背景に、今日も母親の帰りを待つ少女、恵美子の歌う姿がそこにありました。
「お嬢ちゃん、歌、上手だね、その歌、誰に教わったの?」と雄二が恵美子に訊ねます。
「お母さんよ。おじさんもこの歌、知っているの?おじさんは誰に教わったの?」と、恵美子が興味深げに訊ねてきます。
答えに窮した雄二に、恵美子は「この歌、お父さんが作ったのよ」と誇らしげに口にします。雄二は、恵美子の父親が誰であるかを知って愕然とします。
「でも、お父さん、もう死んじゃったかもしれないの」と、恵美子は辛い胸の内を口にします。
「どうして」と、雄二は怪訝な面持ちです。
「生きていれば、きっと有名な音楽家になっているわ」と恵美子は、母から聞かされた父親の偉大さを語ります。雄二は、恵美子にもう一度『私は街の子』を歌ってくれるようリクエストします。
恵美子は雄二の弾くアコーディオンに合わせて哀感豊かな調べを切々と歌いあげます。
父恋しのネタバレあらすじ:転
その日、ふたりは急速に仲を深めました。町へ出て、恵美子をカフェに誘った雄二は、苺のショートケーキを恵美子にご馳走します。おもちゃ屋のウインドウに飾られたフランス人形はさすがに高価で、その日の雄二の懐具合に適わず買物を見送りますが、恵美子は雄二が誰なのかも知らずに親しみを覚えて家路につきました。
雄二は思います。「いまの俺には、あの子の父親だなんて、とても言い出せないけど、せめて人形のひとつでも買って残してあげたいな」と。普段は、生活のために仕方なく歌う流しの仕事にも、その日の雄二は、人が変わったように「恵美子のために」とていねいに、夜の温泉街を巡り歩くのでした。
東京にいる早苗のもとへ、恵美子が病に伏していると電報が入ります。慌てた早苗はすぐに実家へ着きますが、恵美子は学校から元気に帰ってきます。母のいない寂しさに耐えかねた恵美子の電報なので、早苗も岱石も叱ることができません。しかし母親に心配をかけたバツなのか、その夜、恵美子は扁桃腺で熱を出し寝込んでしまいました。
翌日、病が癒えた恵美子の耳に、庭先から『私は街の子』のギターの調べが聞こえてきます。恵美子を誘うそのメロディーに、早苗はギターの音色が誰の弾くものかすぐに察知します。黙って去って行こうとする雄二に早苗は必死に追い着きます。岱石が悔いていること、恵美子が好いていること、自分も留まってほしいと、早苗は強く雄二を引き留めます。
しかし、このザマでは岱石に会えないと、雄二は早苗に背を向けます。恵美子にも、もっと立派な人間になって再会したい、そう告げて、雄二は去って行きました。早苗、岱石、恵美子が改めて雄二の宿を訪ねるとは、そこには再会を約束した手紙とフランス人形が、恵美子のためにと預けられていました。
父恋しの結末
それから1年が経ちました。浮き草稼業の流しの仕事から足を洗った雄二は、東京の町工場で働いています。恵美子との約束を守るため、仕事が終わればすぐに作曲活動に専念しています。しかし、夜を徹して曲を作ることもある生活の無理が祟ってしまい、病に伏すことになってしまいました。
そんな折、作曲コンクールで、とうとう雄二の作った曲が最優秀賞に輝くことになりました。その報せを新聞で知った早苗と恵美子が雄二のアパートを訪ねてきます。雄二が重い病に伏しているのを見た母子は悲しみますが、苦労のあげく雄二の念願はかない、親子3人は再開することができました。
病が癒えずコンクールの授賞式に出席できない雄二に代わって恵美子が舞台に立ちます。恵美子は、フルオーケストラをバックにステージのマイクの前に立ち、父の受賞曲『父に捧ぐる曲』を歌います。ラジオから生中継で流れる恵美子の歌声に、酸素吸入器を口に当てた病床の雄二が命を振り絞って聞き入ります。
雄二の臨終を予感した恵美子がコンクールの舞台からその足で、雄二が入院する病室へ駈け込んできます。早苗が付き添う横で、医師の懸命の手立ても空しいと思われる中、恵美子の声を聞いた雄二が息を吹き返します。その後、親子3人は晴れて岱石のもとへ帰ることになりました。
以上、映画「父恋し」のあらすじと結末でした。
「父恋し」感想・レビュー
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劇中流しが歌う題名は?
まさに起死回生のラストというか、大どんでん返し、
ストーリー的には有り得ないけど、三人で幸せになれたのなら、
それでよし! 笑