クリムゾン・タイドの紹介:1995年アメリカ映画。ロシアでクーデターが発生、それに伴いアメリカへの核攻撃が現実味を帯びる。その危機に対応する為潜水艦アラバマが出航するが、核ミサイルによる先制攻撃、即ち核戦争の引き金となりうる判断を巡り艦長と副長が対立、艦内が揺れていた。密閉された艦内で世界を揺るがす決断を巡り、対立する二人の軍人を描いたミリタリー・スリラー映画。
監督:トニー・スコット 出演者:ロン・ハンター少佐(デンゼル・ワシントン)、フランク・ラムジー大佐(ジーン・ハックマン)、ピーター・“ウェップス”・インス大尉(ヴィゴ・モーテンセン)、ウォルターズ先任伍長(ジョージ・ズンザ)、ボビー・ドガーティ大尉(ジェームズ・ギャンドルフィーニ)ほか
映画「クリムゾン・タイド」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「クリムゾン・タイド」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「クリムゾン・タイド」解説
この解説記事には映画「クリムゾン・タイド」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
クリムゾンタイドのネタバレあらすじ:起
ロシアでクーデターが発生、核ミサイル基地が制圧され、西側諸国は戦闘体制に入りました。海軍士官のハンターは息子の誕生日会を楽しんでいましたが、出席していた親友のウェップスと共に軍からの緊急招集に応じます。ハンターはラムジーが艦長を務める潜水艦アラバマの副長に任命されます。ラムジーは輝かしい経歴を持つ優秀な艦長で、部下達からも尊敬を集めていました。彼は士官達に状況を説明し、乗組員を集め、自分達こそが母国を守る最後の防衛線となる演説を打ち乗り込ませ、アラバマを出航させました。士官達は食事中、クーデター軍の事を話し合います。ラムジーは、国を守る為に先制の核攻撃は躊躇しないと語ります。ハンターはそれに同意しながらも、核攻撃自体は慎重に行うべきだと述べます。彼にとって敵とは、戦争自身でした。作戦行動開始から三日目、ハンターが体力トレーニングを行っているとキッチンで火災が発生します。重傷者を一人出しながらも鎮火しましたが、ラムジーは抜き打ちのミサイル発射訓練を実施します。訓練は終わり、ハンターは非常時に訓練を重ねる事に対して不満を持ちます。しかしラムジーは、非常時こそ本当の訓練になると取り合いませんでした。ラムジーはハンターに、批判は構わないが指揮系統に疑問が生じると部下の前ではするなと厳命しました。ハンターは兵器システム士官として乗り込んでいるウェップスにラムジーの方針に関して意見を求めました。ウェップスは、ハンターとラムジーと水と油だと言い、少し引いて理解して貰えとアドバイスしました。行動開始六日目、アラバマは本国から緊急制御動作メッセージ、EAMを受信します。ロシアのクーデター軍にミサイル発射コードが漏洩し、アラバマもミサイル攻撃が現実味を帯びてきました。作戦行動が11日過ぎると水兵の間にストレスが溜まり始め、漫画を元に取っ組み合い喧嘩をする等トラブルが起き始めます。ハンターはそのことをラムジーに報告しますが、ラムジーは艦内放送で士気を保てないものは艦を降りろと叱責します。ハンターの不満は募って行きます。
クリムゾンタイドのネタバレあらすじ:承
12日目、ロシアの潜水艦を感知し、艦長は魚雷戦に備え戦闘配置指示します。ラムジーがロシア艦の追尾を命じた時EAMを受信、ミサイル発射命令が届きました。ラムジーは魚雷戦を中止し、ミサイル発射体制に切り替えます。ウェップスが、発射体制まであと14分だと報告し、攻撃目標の座標を入力します。その段になり、更にEAMが受信されますが電波状況が悪く受信仕切れません。その時、ソナー手が艦影を見失ってしまいました。EAMは受信されますが、内容は一部で全文の受信の為にハンターは浮上を進言します。ラムジーはハンターに、ミサイル発射後の退避を指示します。ハンターは新たに来た本部の命令確認に拘り、無線ブイの浮上を進言し許可されます。ミサイル発射まで9分を切ります。無線ブイは浮上を続けていましたが、ウインチが故障し大きな音を立ててしまいました。ウインチが慌てて止められ、艦内はロシア艦に発見されたかどうか、緊張に包まれます。そこにソナーが2発の魚雷が発射された事を感知します。EAMが受信される中、アラバマは回避行動へ移り、近距離での爆発を受けますが見事に2発とも回避に成功します。艦内ダメージがラムジーに報告される中、受信内容も報告されましたが、肝心な部分が受信されていませんでした。しかも通信機は攻撃で故障してしまいました。ハンターはラムジーにその事を報告しますが、ラムジーはEAMを無視しミサイル発射に拘り命令遂行に徹しろと叱責します。ハンターは命令の確認を進言し、当艦が発射できなくても他の艦が発射すると説得を試みますがラムジーは頑なにミサイル発射を至上命令とします。ハンターはラムジーの命令を承服できない抗命します。激怒したラムジーは副長補佐のウォルターズにハンターの解任、逮捕を命じます。ハンターは艦長に副長の解任権限がないと抗弁します。ウォルターズはハンターの言葉を支持しますが、ラムジーは前回受信した命令で十分であり、本国攻撃の機会を与えてならないと耳を貸しません。ハンターは苦渋の選択でラムジーを艦長から解任、ウォルターズにラムジーを艦長室に監禁するよう命じます。緊急時に艦長が発令所から連れ出されるというその光景に緊張が走りました。
クリムゾンタイドのネタバレあらすじ:転
ラムジーがミサイル発射キーをハンターに投げ付けて去った事も知らず、ウェップスは指令が途切れている事に苛立っていました。発令所のハンターは、自分の処断に不服を感じるものは任を離れる事を許可しますが、誰も離れませんでした。ハンターは艦内にラムジー解任を告げ、EAM受信を優先すると命令します。突然の解任劇に艦内が動揺します。
ハンターはウォルターズに、自分の命令に服してくれた事を感謝します。しかしウォルターズは忌々しそうに自分は軍規に従っただけだと答え、ハンターの味方ではないと言い切ります。ハンターはそれでも感謝を口にしました。ハンターは通信士官のジマーに通信機の故障を急がせます。ジマーは艦長の解任を不満に感じ、部下に当り散らします。敵艦がアラバマを再捕捉、またも魚雷2発放ちます。ハンターはそれを無事回避、反撃し、見事敵艦を撃沈しました。戦果に艦内が沸きますが、敵艦は撃沈間際に魚雷を1発発射していました。アラバマはそれを回避しようとしますが至近弾を受け浸水が発生、動力が止まり、艦が沈下を始めました。復旧が図られますが浸水と沈下は止まらず、ハンターは作業を中止し浸水区画の密閉を指示します。作業者は残っていましたが事故で重傷を負い、それを見捨てハッチは閉じられました。艦は圧壊深度ギリギリで動力が復帰、難を逃れました。喜ぶクルーにハンターは受信深度までの浮上を命じます。ラムジーを慕うジマー等士官達が艦長室に駆け込みます。彼等はハンターの指揮に不満を感じ、ラムジーに指示を仰ぎに来ました。ラムジーは、武器庫の鍵を持ちミサイル発射に必要なウェップスを取り込み、反乱を唆します。士官達は早速ウェップスに話し掛け、ハンターを裏切りラムジーに従えと説得します。ウェップスは渋々武器庫のキーを渡し、士官達は一部の兵を取り込み、武装をします。ハンターは無線機の修理状況を確認しますが、ジマーの姿が見えない事に不安を感じ、ウォルターズに兵の武装を命じます。その頃士官達は艦長を部屋から連れ出し、発令所へ向かい始めました。ハンターは、漫画の事で喧嘩したリヴェッチに艦のマスターキーを託し、通信機修理をしているヴォスラーに修理の重要性を説き復旧を急がせます。発令所に戻ったハンターですが、ラムジー率いる士官達が乗り込んできて制圧、ハンターと彼に組する者達を食堂に監禁します。ハンターは現状を報告、ミサイルキーをラムジーに手渡します。発令所を掌握したラムジーは、EAMを無視してミサイル発射の続行を命じました。監禁されたハンターは状況を憂います。ウォルターズは艦長が正しいかもしれないという本音を言って喜びますが、ハンターは命令は不完全で、自分達は不要な核戦争の瀬戸際に居ると語ります。そこに、リヴェッチが見張りを殴り倒し、同調する仲間と共に現れハンター達を救出、彼等は武装し発令所へ向かいました。
クリムゾンタイドの結末
艦はミサイル発射深度まで浮上します。ハンターはウェップスに艦内電話でミサイルを発射するなと説得します。更にヴォスラーに修理状況を確認しますが、焦るヴォスラーは答えられず電話を切ります。ラムジーはウェップスにミサイルトリガーを出せと命じますが、彼は沈黙を貫きます。ラムジーはミサイルキーを差込発射可能状態にしながら直接ミサイル制御室に向かい、彼の部下に銃を向けウェップスを脅します。ウェッブスはそれに屈しトリガーを渡しました。ラムジーはトリガーを引きます。しかし、ハンターが発令所を占拠、キーを引き抜き発射は阻止されました。ハンターの仕業だと察したラムジーは急ぎ発令所に戻り彼等は銃口を向け合います。ラムジーはハンターを殴り、キーを寄越せと命じますが彼は抵抗します。そこに無線の復旧しそうだという報告が入ります。ロシアでのミサイル発射予想時刻まで9分を切った状況で、ラムジーは3分の猶予を与えます。その間二人は向かい合い、共通の趣味である乗馬の話をします。話題に出た馬について、ハンターはラムジーが馬の産地を間違っていると指摘し、そして馬は白馬だが生まれる時は黒だと言います。無線の調整を急ぐヴォスラーですが、遂にその苦労が実を結びます。ラムジーは覚悟しろと言い、ハンターは自分が間違っていたら戦争だ、覚悟して下さいと返します。EAMが遂に受信され、その内容が艦長に届けられます。艦長はその内容を読み、艦内に命令を発します。その命令は、ミサイル発射中止でした。戦争の回避に艦内が沸き、ラムジーに従った士官達は肩を落とします。ラムジーはハンターに艦を託し、自ら艦長室に戻って行きます。命令書にはロシアでのクーデターは失敗したと書いてありました。海軍本部でアラバマの一件について査問会が開かれていました。委員長は、両者共にその正当性を認めはしましたが、クーデター紛いの両者の行動を叱責します。処分はありませんでしたがラムジーは退役し、その後任にハンターが推薦されていて彼はそれを受け入れました。ラムジーとハンターは本部を出ます。ハンターは推薦に礼を言おうとしましたが、ラムジーがそれを止めました。彼は自分が間違っていたといい、馬の産地はハンターが正しいと認めました。去って行くラムジーにハンターは敬礼して見送りました。
「クリムゾン・タイド」感想・レビュー
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世界が崩壊する日。それが齟齬から起きる可能性を強く強調している作品です。現在でもアメリカにおける人種対立が重大な問題であることも示唆しているのです。例え一隻だけでも世界崩壊の口火(これは弾道ミサイル(SLBM)搭載原潜保有国全てに共通している宿命)となるだけに極めて深刻な問題ですね。実際は核戦力の三本柱(有人爆撃機・大陸間弾道弾(ICBM)・SLBM搭載原潜)はそれぞれに長所と短所を抱えているため、ロシアのICBM基地を直接攻撃するのに適しているのはミサイル原潜ではなくて、近海に潜んでいる攻撃型原潜からの巡航ミサイルもしくはステルス機能の有人爆撃機(どちらも必ずしも核弾頭を必要としない)による先制攻撃が選択されるはずなので、この映画のようなシナリオ通りには進まないということも認識しておかなければならないでしょう。SLBM原潜は移動する核基地ですが、正確に相手を攻撃するピンポイント性においてはまだまだ不向きで、少々の攻撃では十分に耐えられるだけ設備を施されているICBMのサイロを発射前のミサイルごと確実に破壊するという芸当には信頼性に欠けるということなのです。そのことを認識してフィクション性を理解しながら現実との差異を考えて楽しむのも本作の魅力だとも言えるのですが…。魚雷攻撃を直撃ではないにせよ受けるダメージももっと深刻なはずで、作戦遂行云々よりもまずは緊急浮上が先決だと私は思いますが、それでは映画にならないので、この辺りの描写はまあ仕方ないですかね。そういう細かい点は抜きにしても、発射命令の確認ということは重大な問題です。軍隊には「命令は正式に取り消されない限り絶対遂行」という鉄の掟があり、その確認手続きの認識によりこの艦長と副長の対立が起こったのでした。どちらも手続き的には正しい。中途で途切れた命令文の解釈が「発射中止」かはたまた「目標の変更等」なのか。前述した通り、移動する核基地でもあるSLBM原潜は自分の位置を確実に認識していなければ正確に目標を攻撃できない(データ入力等の必要性)点と、敵の探知能力が発展した今日においてさえも高い秘匿性ゆえの「最後の切り札」として、都市及び工業地帯の殲滅作戦に変更という点も考えられるのですから。まあ、一隻だけに先制攻撃を命じることも無さそうですから、「自分は2番目以降」という選択(誰しもが世界を滅ぼすマネはしたくはないでしょうから)にもつながらりかねないでしょうが。最悪の場合は味方の手で葬られるということも覚悟しなければならない、ということを映画のどこかで触れてもらいたかったですよ。その選択肢をも含めての大統領の発射権限及び決断なのですからね。アカデミー賞男優二人による夢の共演も素晴らしかっただけに惜しいことです。これからは蛇足ですが、現時点でそのボタンの鍵を握っている人物地を考えると…。発射命令が出されたのなら、私が副長でも躊躇わずに核弾頭を外したミサイルをワシントンD.C.のホワイトハウスのオーバルルームへ打ち込むことで回答とするでしょうね。実に危うい構造であることは多くの人が認めてくれるでしょう。
艦長、副艦長を中心に、潜水艦という密室で繰り広げられる乗組員たちの葛藤がとにかく面白い。けっして勧善懲悪ではなく、それぞれのキャラクターの良し悪しがきっちり描けているのも魅力の一つです。「もし自分がこの中にいたら」という想像をしながら見ると面白さが何倍にも膨らみます。