デス&コンパスの紹介:1996年メキシコ,アメリカ,日本映画。ホルヘ・ルイス・ボルヘスの短編小説『死とコンパス』を映画化。奇妙な連続殺人事件の謎に挑むサスペンス作品。近未来のメガロポリスは犯罪が頻発し、堕落した魔都と化していた。ある日、ホテルでユダヤ人学者の刺殺体が発見される。警部のランロットは、現場に残された謎の文章に目を止めた。単純な事件ではないと考えた彼は新聞記者ズンズと共にカバラの解読に取り掛かる。ランロットが睨んだ通り、謎の文章が添えられた第2、第3の事件が起こった。果たして犯人の正体とは、そしてその狙いとは。
監督:アレックス・コックス 出演者:ピーター・ボイル(エリック・ランロット)、ミゲル・サンドヴァル(トレヴィラヌス)、クリストファー・エクルストン(アロンソ・ズンズ)、ペドロ・アルメンダリス・Jr(ブロット)、アレックス・コックス(ボルヘス警視長)ほか
映画「デス&コンパス」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「デス&コンパス」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
デス&コンパスの予告編 動画
映画「デス&コンパス」解説
この解説記事には映画「デス&コンパス」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
デス&コンパスのネタバレあらすじ:第1の事件
舞台は犯罪が蔓延る近未来のメガロポリス。12月3日、北ホテルの一室でユダヤ人学者マルセル・ヤルモリンスキー博士の遺体が発見されました。どうやら何者かによって刺殺されたようです。現場に到着した警察署長のトレヴィラヌスは、犯人は隣室に宿泊していたガリラヤの太守を襲うつもりで部屋を間違えたのだろうと結論付けました。
しかし遅れてやって来た警部のエリック・ランロットは、ただの宝石強盗では面白くないと言います。彼は非常に優秀な刑事で、市民から厚い信頼を寄せられていました。ただ1つ、あまりに個人的行動に走り過ぎるという弱点があります。
部屋を見回したランロットは部下のブロットとノヴァリスに指示し、博士の本を署に運ばせました。そしてタイプライターに「御名の第1の文字は語られた」と残されているのを見つけます。これを見たランロットは、この事件は宝石強盗のような単純な事件ではないと直感しました。
ランロットは遺体の第一発見者である新聞記者アロンソ・ズンズを署に連行させます。カバラ(ユダヤ教の伝統に基づいた創造論、終末論、メシア論を伴う神秘主義思想)について学ぶランロットは、「テトラグラマトンとは?」とズンズに尋ねました。ズンズはヘブライ語で神名のことだと答えます。その後もランロットは事件というよりはカバラについて調べを進めていきました。
デス&コンパスのネタバレあらすじ:第2、第3の事件
ヤルモリンスキー博士の事件からちょうど1ヶ月後の1月3日、再び殺人事件が起こります。西の郊外で、ダニエル・サイモン・アゼベードという男が何者かに殺害されました。彼は政治家志望の小悪党で、自分の宣伝ポスターを貼っている時に襲われたようです。壁には彼の血液を使い、「第2の文字は語れられた」と記されていました。
トレヴィラヌスは、南部を根城にしている犯罪者レッド・スカーラックが加担しているのではないかと考えます。レッドは凶悪犯で、残虐な犯罪を平然と行う一方、悪魔的な魅力のある男でした。ランロットはかつてレッドに友人ボルヘス警視長を殺害されています。そしてアゼベードはレッドの手下でもありました。
アゼベードの事件から1ヶ月後。ランロットはトレヴィラヌスに、ふたつの事件には不可思議な一致が見られると話しました。周期的に行われる儀式かも知れないと考えたランロットは、今夜第3の事件が起きるだろうと言い出します。
呆れるトレヴィラヌスのもとに、グライフィアス=ギンズバーグと名乗る男から電話がかかってきました。彼は「例の2つの犠牲の真相を知りたいかね?」と囁きます。トレヴィラヌスはすぐに発信元を調べさせ、東部のトルヴィット街にある酒場リヴァプール・バーを突き止めました。
警察が急行し、店主のフィネガンにギンズバーグのことを問い詰めます。ギンズバーグは8日間上階の部屋に宿泊していましたが、トレヴィラヌスへの電話を切った後現れた2人組の女に車で拉致されたそうです。彼が宿泊していた部屋には、「御名の最後の文字は語られた」と記されていました。
デス&コンパスのネタバレあらすじ:3つの事件が示すもの
更に1ヶ月後。トレヴィラヌスは神秘に詳しい女スピノザを呼び、一連の事件について意見を聞きました。スピノザは、3つの事件を地図上で結ぶと正三角形が出来ると指摘。正三角形は完全、完了の象徴であることから、もう事件は起こらないだろうと断言します。ランロットはスピノザの話を聞きながら、地図をじっと見つめていました。
そこへズンズから電話がかかってきます。彼は以前ランロットから聞かれた、神の名にはいくつの文字があるのかという質問に対する答えを述べました。テトラグラマトン、つまり神の名は「JHVH」の4つの文字で出来ていると話すズンズ。するとランロットは、事件がコンパスの4つの方位と結びつくことに気付きます。
翌日、ランロットは地図を持ってトレヴィラヌスに自分の考えを伝えました。3つの事件は正三角形の頂点で起こったもので、その点が導く事件の結末は南部にあると推理したのです。ランロットは菱形にした時の頂点で新たな殺人が起こると考えていました。
ブロット達の手が空いていないため、ランロットは1人で南部へ向かうことにします。署を出ると、ズンズがインタビューさせてくれと追い縋って来ました。彼の同行を許したランロットは、南部の工場地帯を目指します。
デス&コンパスのネタバレあらすじ:犯人の正体
コンパスで方位を確認しながら、ランロットは菱形の頂点となる場所トリスト・ル・ロイに到着しました。犯人についてはまだ分かっていません。ランロットとズンズは蜘蛛の巣だらけの屋敷に入り、犯人を探しました。
夜になり、ランロットが舞台のような場所に上がると、突然背後から銃撃されます。撃ったのはズンズでした。倒れたランロットを見下ろしながら、ズンズが変装を解いていきます。
その正体は、レッドでした。ランロットが驚く中、レッドは上機嫌に笑い出します。レッドはかつて罪も無い自分の弟の命を奪ったランロットを強く憎んでいました。そしてずっと復讐を計画していたのです。
デス&コンパスの結末:事件の真相
レッドは笑いながら一連の事件の真相を明かしました。ヤルモリンスキー博士の殺害は、太守を狙ったアゼベードが泥酔して部屋を間違え、隣室にいた博士を口封じに殺したというだけの犯罪でした。トレヴィラヌスの考えは正しかったのです。
ランロットが注目した「御名の第1の文字は語られた」という文章は、ヤルモリンスキー博士自身がタイプしたものであり、それ以外の意味はありませんでした。ズンズに変装し様子を窺っていたレッドは、ランロットがその文章に注目したことを利用しようと考えます。
ドジを踏んだアゼベードを殺害したレッドは、宗教的儀式を演出するため壁に文章を残しました。ギンズバーグはレッド自身であり、フィネガンやスピノザもレッドの手の者です。全てはランロットの勝手な想像がきっかけでした。彼は不要な深読みをした結果、レッドに復讐のチャンスを与え、自身の破滅を招いてしまったのです。
レッドが銃口をランロットに向けました。周囲に銃声が鳴り響き、この映画は終わりを迎えます。
以上、映画「デス&コンパス」のあらすじと結末でした。
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