ナイル殺人事件の紹介:2020年アメリカ映画。イギリスの作家アガサ・クリスティが1937年に発表した小説「ナイルに死す」二度目の映画化作品。エジプトのナイル川をめぐる豪華クルーズ船という密室で起こる殺人事件に、世界一の名探偵エルキュール・ポアロが挑む。監督のケネス・ブラナーは製作にも名を連ねており、『オリエント急行殺人事件』に続いてポアロを演じている。今回はポアロの人物背景に迫るストーリーになっており、独身を貫いている秘密や口ひげの由来も明らかになる。
監督:ケネス・ブラナー 原作:アガサ・クリスティ「ナイルに死す」 キャスト:ケネス・ブラナー(エルキュール・ポアロ)、ガル・ガドット(リネット)、アーミー・ハマー(サイモン)、エマ・マッキー(ジャクリーン)、トム・ベイトマン(ブーク)、レティーシャ・ライト(ロザリー)、アネット・ベニング(ブークの母)、ほか
映画「ナイル殺人事件」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「ナイル殺人事件」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
ナイル殺人事件の予告編 動画
映画「ナイル殺人事件」解説
この解説記事には映画「ナイル殺人事件」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
ナイル殺人事件のネタバレあらすじ:起
1914年、第一次世界大戦中のベルギー。とある中隊が、ドイツ軍が占拠しているイーゼル橋の爆破を命ぜられます。絶体絶命のこの状況は、鋭い観察力を持った兵士・ポアロの読みが当たったおかげで打破できました。
しかし残されたトラップが爆発し、ポアロは顔面の右側に深い傷を負ってしまいます。入院中の病院に見舞いに来た婚約者のカトリーヌは、その顔を見て口ひげを生やせばいいと微笑むのでした。
1937年のロンドン。有名な名探偵となっていたポアロはあるナイトクラブを訪れています。やり手の若いマネージャーがついた歌手サロメが歌い始めると、ひときわ目立つ男女が情熱的なダンスを踊り始めました。
そこに現れたのは、多額の遺産を相続し注目を浴びる女性リネット・リッジウェイです。先ほど踊っていたジャクリーンとリネットは友人で、ジャクリーンは婚約者のサイモンをリネットに紹介します。
6週間後、ポアロは休暇でエジプトに来ていました。そこで偶然友人のブークに会い、彼の母ユーフェミアを紹介されたポアロは、彼らが招待されていた友人の結婚パーティに同行することに。結婚するのはなんとあのリネットと、ジャクリーンの婚約者だったサイモン・ドイルです。
アスワンの高級ホテル・オールドカタラクトホテルには、夫妻の他にリネットのいとこで財産管理をしているアンドリュー、リネットの名付け親で財産を放棄し共産主義者となったスカイラー夫人とその専属看護師バワーズ、リネットの元婚約者で医師のウィンドルシャム卿、リネットに雇われた歌手のサロメ・オッタボーンと姪でマネージャーのロザリー、メイドのルイーズ・ブルージェなどが集まっていました。
そこでサイモンは大きなイエローダイヤモンドのネックレスをリネットに贈ります。そんなお祝いムードの中、招かれざる客として現れたジャクリーン。彼女はたびたび夫妻の前に姿を見せるといい、リネットたちはポアロになんとかしてほしいと相談します。ポアロはその依頼を断りますが、ジャクリーンに接触し、サイモンを諦めきれない彼女が22口径の銃を持ち歩いていることを知ると、そのことを夫妻に報告し帰国を促します。
翌日夫妻は、豪華クルーズ船で観光地をめぐるプランに変更したと発表し、招待客たちをカルナック号へと誘います。荷物はメイドのルイーズに運ばせ、ウェルカムドリンクのシャンパンで乾杯するリネットたち。しかしその後リネットはポアロの部屋をたずね、「誰も信じられません。どうか見張っていて」と懇願し、ポアロもそれを承諾するのでした。
ナイル殺人事件のネタバレあらすじ:承
夫妻のところにいとこのアンドリューが、複数の契約書を持ってやってきました。早口で用件を読み上げサインを要求する彼にサイモンも同意しますが、リネットはゆっくり見たいと言いその場でサインはしませんでした。
その夜、サロメの歌に合わせて踊る招待客たち。ポアロはブークに、ロザリーに気があるのだろう?と話しかけます。ブークは仕事がうまくいかず、母の世話になっている以上、母に認められた女性でないと付き合えないと嘆き、経済的に自立したいと思っているようです。
翌朝、船はアブシンベル神殿に到着し、人々は船を下りて観光に向かいます。ブークの母は彼にロザリーのことに気づいているが交際は認めないと発言します。ブークは母から離れ、隠れていたロザリーと抱き合います。ポアロは好意を抱いているサロメと一緒に神殿の中を見学しますが、いつものようにうまく話せません。
リネットとサイモン夫妻は、石像と石像の間で抱き合っています。すると頭上から巨大な石が落下し、すんでのところで逃げて事なきを得ました。一行が沈鬱な表情で船に戻ると、新たな乗客としてまたもジャクリーンが現れます。リネットは半狂乱になり、彼女を下ろしてと叫びますが、正規のチケットを持っているのでそれはできないとサイモンはなだめます。
その夜、食事中のポアロのもとに、夫妻が明日船を下りて帰国することにしたと報告に来ました。得意ではないシャンパンを勧められ、仕方なく乾杯するポアロ。酔いがまわったポアロは外に出て、そこに座っていたジャクリーンにサイモンのことは諦めて人生をやり直すように、と諭します。ポアロはかつて唯一愛した女性を戦争で失い、その後探偵となってひとりで過ごすうちにこういう人間になってしまった、と言って部屋に戻ります。
夜も更け、酔ったジャクリーンにリネットは「あなただけがお金に無関心だった。幸せになってほしい」と言って自室に戻っていきます。残ったサイモンにジャクリーンはこれからも追い続けると告げますが、サイモンは彼女にひどい言葉を投げかけます。居合わせたブークとロザリーが仲裁に入りますが、逆上したジャクリーンは銃を取り出しサイモンを撃ってしまいます。
足を撃たれたサイモンは苦しみ、取り乱したジャクリーンは自殺しようとします。銃を落としてそれを止めたロザリーは彼女を看護師バワーズの部屋へ連れていき、ブークは医師のウィンドルシャム卿を呼びに走ります。
スカイラー夫人の部屋にいたバワーズは、部屋に戻ってジャクリーンにモルヒネを投与します。サイモンも手当を受け、命に別状はありませんでした。そんなこととはつゆ知らず、ポアロは部屋で熟睡していました。
ナイル殺人事件のネタバレあらすじ:転
朝、左のこめかみを撃たれたリネットの死体が発見されました。死後6~8時間、凶器は22口径の銃です。でもジャクリーンはバワーズの部屋でずっと眠っていたのでアリバイがあります。更に、あのネックレスがなくなっていました。ポアロは全員を疑い、ひとりずつ尋問を始めます。
第一発見者のメイド・ルイーズは、かつてリネットに婚約を解消されていました。借金のあった相手に、全額肩代わりするか結婚するかを選ばせルイーズは捨てられたのです。殺意を否定したルイーズは、自分が夜中に外に出ていたら犯人を見たかもしれないのに、と言っていました。
ウィンドルシャム卿に対してポアロは、捨てられた恨みからの犯行では?と問い詰めますが、彼はリネットを愛していたと静かに言いました。
いとこのアンドリューは、リネットが死んでも自分は財産を手に入れることはできない、と動機がないことをアピールしますが、財産の横領を隠匿するのが目的だろうと指摘されてしまいます。すると彼は45口径の銃を取り出し、もし自分が殺すならこの銃を使うと言うのでした。
看護師のバワーズはポアロによって、かつては資産家だったがリネットの父によって没落させられたことを暴かれてしまいます。そこへ彼女の雇い人であるスカイラー夫人が現れ、何様のつもり?とポアロを非難します。すると、共産主義者である夫人が専属の看護師を雇うのはおかしい、とふたりが恋愛関係にあるパートナー同士であることをポアロは
言い当てます。
そんな中、川底の捜索で、弾によって穴のあいたスカイラー夫人のスカーフと血染めのハンカチ、2発発射された22口径の銃が見つかりました。
続いてサロメの事情聴取をするポアロ。好意を持っていても容赦はしません。かつてロザリーが幼い頃、リネットに人種差別を受けたとサロメは告白します。ロザリー本人も現れ、高校生になって寄宿舎でリネットと仲良くなったと説明し、差別した相手だとリネットは気づいていなかったといいます。
ポアロはサロメが帽子の中に22口径の銃を隠し持っていることを見抜きますが、そこにブークの母が乱入してきました。彼女の部屋から、なくなったネックレスが見つかったのだというのです。事件について話しているうちに、実はポアロは休暇ではなく、ブークの母に雇われていたことが明らかになります。ブークの相手としてロザリーがふさわしいかどうか、ポアロは調査をしていたのです。
サロメ、ロザリー、ブーク、そしてその母を前にポアロは、ロザリーは理想的な相手だと報告しました。しかし母はやはり認めず、ブークは母に反発し、ロザリーはポアロを軽蔑してその場から去ろうとします。ポアロはロザリーを追いますが、そこで二人目の被害者が発見されます。
殺されたのはメイドのルイーズで、メスのような刃物の傷があったことから医師のウィンドルシャム卿が疑われます。騒ぎの中、ポアロはなにかに気づき、全員朝まで自室にこもって鍵をかけるよう指示します。そしてサイモン立ち会いのもと、ブークへの尋問を始めるのでした。
ナイル殺人事件の結末
サイモンが撃たれた時、ブークがリネットに知らせなかったことを不審に思ったポアロは、その理由をブークがネックレスを盗んだからだと推理しました。その指摘どおりブークはリネットの部屋に知らせに行き、そこで既に死んでいたリネットを発見しながらも部屋にあったネックレスを盗んで黙っていたのです。
母から自立するための資金が欲しかったブーク。その後、リネットを殺した犯人を目撃したルイーズが誰かを脅している現場を見てしまったブークは、ルイーズが殺されるのを見てしまったのです。ポアロとサイモンに迫られて犯人の名を口にしようとしたその瞬間、何者かに銃で撃たれブークは絶命してしまいます。
ポアロは犯人を追いますが、銃声に驚いた全員が部屋から出てきており、もはや誰が犯人なのかわからなくなってしまいました。そして床にはアンドリューの銃が落ちていました。
アンドリューは部屋に銃を置いていたといい、ポアロはそれを持って歩きながら考えています。そして全員をサロンに集めると、銃を一発空に向かって撃ち、「犯人はここにいる」と叫びます。
まず、ブークはネックレスを盗んだが、リネット殺しは彼ではないとポアロは言います。そして、神殿で石を落としたのはいとこのアンドリューだが、彼もまた犯人ではないと続けます。ブークの母の赤い絵の具がなくなったことがヒントだとポアロ。最初に船に乗ったとき、ホテルにリネットの赤いマニキュアを忘れてきたことでルイーズがサイモンに責められていたのですが、赤い絵の具がその代わりになったのだと説明します。
サイモンが撃たれた時、それは空砲で、ハンカチに赤い絵の具をつけて血のように見せかけたこと。皆がそれぞれ対応のため部屋から出ていった隙に銃を拾い、リネットの部屋で彼女を撃ち、サロンに戻って自分の足を撃って、2発しか撃っていなかったように細工したこと。盗んでおいたスカーフを音消しに使い、銃とハンカチをくるんで一緒に川に投げ捨てたこと。以上のことからリネット殺しの犯人はサイモンであるとポアロは断言します。
そして、ルイーズとブークは共犯者であるジャクリーンによって殺されたのだと。サイモンはメモで凶器の在り処を指示していたのだろうと推理したポアロ。証拠は?と問われ、血染めのハンカチに残った色がピンク色ならそれは絵の具だからそれが証拠だ、と言うポアロ。ようやく犯行を認めたサイモンとジャクリーンは寄り添い、逃げ道を求めてポアロに銃を向けます。
ポアロのほかにサロメも彼らに銃口を向けます。抱き合いながら後退するふたり。「心を強くもって」と言いながらサイモンはジャクリーンに銃を渡し、きつく抱き合ったままジャクリーンはサイモンの背中で引き金を引きます。(愛してる)と言いながら発射された一発の銃弾は、サイモンを貫きジャクリーンにまで達していました。
すべてが終わり、船を下りていく人々にひとりずつ声をかけるポアロ。ロザリーはブークの母を支えながら歩いていきます。最後に下りたサロメは、「あなたの仕事している姿、見たくなかった」と言い残して去っていきました。
半年後。ロンドンのナイトクラブでリハーサル中のサロメを見つめるポアロの姿がありました。その顔にはあのトレードマークのカイゼルひげがありませんでした。
以上、映画「ナイル殺人事件」のあらすじと結末でした。
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