スペルの紹介:2009年アメリカ映画。銀行の融資窓口で働くクリスティンはある日相談に来た老婆を自身の出世のために追い返してしまう。そしてその日の夜クリスティンは帰り際その老婆に襲われある呪いを掛けられてしまった。それは三日三晩苦しめた後に彼女の魂を連れ去ってしまうという呪いだった。その呪いから逃れるため彼女はある霊媒師に相談する。「スパイダーマン」三部作の監督サム・ライミが原点に戻ったホラームービー。
監督:サム・ライミ 出演:クリスティン・ブラウン(アリソン・ローマン)、クレイ・ダルトン(ジャスティン・ロング)、シルヴィア・ガーナッシュ(ローナ・レイヴァー)、ラム・ジャス(ディリープ・ラオ)、ショーン・サン・ディナ(アドリアナ・バラッザ)ほか
映画「スペル」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「スペル」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
スペルの予告編 動画
映画「スペル」解説
この解説記事には映画「スペル」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
スペルのネタバレあらすじ:きっかけ
クリスティンの働く銀行の次長のポストが空いていた。それを彼女が手にするには強い決断が必要になると支店長が言っていた。ある日クリスティンの元に一人の老婆が現れた。その老婆は返済の延長を相談してきた。しかし既に二回延長しているその返済をこれ以上延長出来ないと判断したクリスティンはその老婆に丁寧に断りを入れた。しかし執拗に願いを請う老婆にクリスティンはセキュリティーを呼んでしまう。それが老婆の怒りを買ってしまうことになる。その夜、仕事から帰るため車に乗り込んだクリスティンに昼間の老婆が襲い掛かった。そしてクリスティンの袖のボタンを無理やり外し何やら唱えた。ラミア、その言葉を聞いた所でクリスティンは意識を失ってしまった。
スペルのネタバレあらすじ:呪い
目が覚めると老婆の姿はなかった。後で来た警察に事情を話し恋人のクレイにも迎えにきてもらう。その帰り彼女は不穏な空気を感じた。そしてたまたま見つけた占い師の店に足を踏み入れた。占いをしてくれたのはラムと名乗る男性、彼は彼女の今日の出来事を見抜いた。しかし占いの途中部屋にまで不穏な空気が流れ突如ラムは占いを辞めてしまう。その日の夜家で一人になったクリスティンは謎の襲撃を受ける。すぐに戻ったクレイに説明するも彼はクリスティンの説明を聞かなかった。そして呼ばれた医者にPTSDだと診断される。彼女もそれに納得しその夜二人は同じベッドで就寝した。しかし眠りについたクリスティンに悪夢が襲う。
スペルのネタバレあらすじ:儀式
朝クリスティンはいつも通り銀行に出社。しかし突然大量の鼻血を出しすぐに銀行を後にする。そのままクリスティンが向かったのはあの老婆の家だった。しかし家に着いた時既に老婆は亡くなっていた。クリスティンはもう一度占い師であるラムの元を訪れた。ラムはその強力な呪いを解くためにある人物を紹介するという。そして次の日その人物の元へと向かったクリスティンは想像を絶する体験をする。ショーン・サン・ディナと名乗る女性がクリスティンに掛けられた呪いを解く手助けをしてくれるという。その彼女にもクリスティンの呪いと過去に因縁があるという。しかし儀式は失敗。彼女は亡くなり呪いは解かれなかった。ラムはクリスティンに最後の手段を教える。
スペルのネタバレあらすじ:コイン
最後の手段、それは呪いを掛けられたボタンを他の人物に贈るというものだった。それはクリスティンの救出と贈られた人物の魂が地獄へと送られる事を意味する。しかし贈る相手に悩んだ彼女は死んだ老婆に突きつけることを思いつく。ラムによるとそれも可能だった。そして老婆の墓を掘り起こし彼女の口にボタンの入った封筒を押し込んだ。こうしてクリスティンは晴れて呪いから解放された。次の日、本来ならクリスティンが地獄へと送られる日彼女は恋人クレイと電車で旅に向かうため駅にいた。これまでのことは解決しこれから新しい生活が始まる、そう感じていたクリスティンにクレイはポケットから封筒を取り出す。
スペルの結末:ボタン
彼の手にした封筒には昨夜老婆の口に押し込んだと思っていたボタンが入っていた。そう老婆の口に押し込んだのはクレイの収集していたコインだった。クリスティンの呪いは解かれていなかった。慌てふためくクリスティンはそのまま線路内に落下、そして地面から現れた無数の腕に捕まりクレイの目の前で地中に引きずり込まれ消えてしまった。
「スペル」感想・レビュー
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今日初めてみましたがかなり期待をしてみましたラストも含めてなんだかなーと思っていましたがオーウェンさんの記事を読みまさしくそうなんだとおもいました あの打ちのめされた傑作死霊のはらわたを思い出させたり怖がらせるタイミング等 やはり鬼才なぬですこの味はサムライミ監督しか出せないのです 充実の時間でした
大好きな監督、サム・ライミ。そして、大好きな映画「スペル」。
このサム・ライミ監督の映画「スペル」は、老婆に呪いをかけられた女性が直面する、恐怖の3日間を笑いと恐怖で描いた、ホラー映画の傑作だと思います。
お話自体は、お馴染みの筋書きですが、実は、この作品は”アメリカン・ホラー”の久し振りに見る愉快、痛快な大傑作だと思います。
首が飛んだり、血が噴き出したり、人体に危害が及ぼされるのがホラー映画の特徴ですが、とはいえ、現実の肉体に似れば似るほど悪趣味に堕して、映画的な表現から遠ざかってしまうものです。
実物にそっくりにしないままで、我々観る者を怖がらせるのが、まさにホラー映画の妙味、醍醐味なのだと思います。
昔のホラー映画は、厳しく規制されていたため、実物そっくりに映せないから、逆に映画らしい工夫が数多くあったと思います。
何でもありになってしまうと、喜ぶ人も確かにいるだろうが、それではもう映画ではなくなってしまうと思うのです。
このあたりは、例えてみるとポルノ映画によく似ている気がします。
裸に頼れば頼るほど映画ではなくなるように、残虐シーンに頼れば頼るほど映画としてはダメになると思います。
最近の多くの”アメリカン・ホラー”は、そこを誤解しているような気がします。
実物そっくりを目指したためなのか、コンピューター・グラフィックス(CG)に頼る残酷シーンばかりが増えて、よほど悪趣味の人でなければ、観る気にならないのではないかと思います。
そして、その行き着く果てが、日本製のJホラーのリメイクを作るところまで、落ちぶれてしまったのだと思います。
このようなホラー映画を取り巻く惨状を前に、敢然と立ち上がったのが、我らがサム・ライミ監督なんですね。
このサム・ライミ監督は、当時、「スパイダーマン」シリーズなどの大作路線に走っていたのですが、もともとは”ポップカルチャー”としてのホラー映画を熟知した人。
この「スペル」は、「死霊のはらわた」の初心に戻って撮っているのです。
ホラー映画の技法は、タイミングのずらし方にそのポイントがあります。
怖くなるぞ、怖くなるぞとゆっくり盛り上げ、ふっと軽く安心させて、緊張がゆるんだ瞬間にどっと襲い掛かる———。
この呼吸が絶妙なので、首などが斬り落とされなくても怖くなります。
凡百の出来の悪いホラー映画だと、終わりには恐怖に慣れてしまいますが、この「スペル」は、後になるにつれて、もっと恐ろしくなってきます。
最後まで、安心して怖がられるのです。
そして、何といっても、この映画の素晴らしいところは、全編に渡ってユーモアが満ちあふれているところだ。
恐怖とユーモアは紙一重だとよく言いますが、まさにこの映画は、そのあたりの案配が、実に絶妙なんですね。
また、恐怖のネタもハンカチ、携帯電話、蝿、そして入れ歯と、怖がりながらも、つい笑ってしまうのだ。
とにかく、この映画は徹底して不真面目なんですね。いい加減なんです。
そして、それこそが、”アメリカン・ホラー”の伝統であり、痛快B級ホラー映画の復活たりえているのだと思います。