パリ20区、僕たちのクラスの紹介:2008年フランス映画。とある公立学校の9か月の授業風景と、教師と子供たちがそれぞれに抱える苦悩をドキュメンタリータッチで描く。主人公フランソワ役以外は現役中学生等が出演している。
監督:ローラン・カンテ 出演:フランソワ・ベゴドー
映画「パリ20区、僕たちのクラス」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「パリ20区、僕たちのクラス」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
パリ20区、僕たちのクラスの予告編 動画
映画「パリ20区、僕たちのクラス」解説
この解説記事には映画「パリ20区、僕たちのクラス」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
パリ20区、僕たちのクラスのネタバレあらすじ:新しい年度の始まり
パリ20区にあるとある公立の学校で国語を教えているフランソワとその同僚たちは、九月になり新しい教員を迎え自己紹介をし、それぞれに生徒に関する引き継ぎを行い、新しい年度に向けて準備を始めた。
そして新学期、フランソワの担任するクラスは騒がしく、黙るのを待つのにどれだけ時間を無駄にするのか説いた後、生徒たちに自分の名前を書かせようとすると、ある生徒から『先生も自分の名前を書いて』と言われ、黒板に名前を書いた。彼のクラスは人種もバラバラならレベルもバラバラ、授業は時折討論で中断した。
ある日、歴史を担当する教員から国語の教科書は決まったか聞かれ、『歴史でフランス革命とアンシャンレジームをやるからそれに関連した教科書が良い』とリクエストされるが、彼のクラスのレベルのバラつきを考えると、難しい注文だった。
フランソワ本人も、担任する生徒たちに手を焼いていた所、技術を担当する教員が『フランソワの担任する生徒たちを教えるのも顔を見るのも嫌だ』と職員室で愚痴を吐いた。結局フランソワは、アンネフランクの日記を読ませ、生徒たちに自己紹介の作文を書くように課題を出した。
パリ20区、僕たちのクラスのネタバレあらすじ:処罰を与えるべきか
フランソワのクラスに在籍するクンバは、朗読するように言っても、何を指示しても反抗してばかりの女子生徒で、授業後に残るように言い、連絡帳を書き込みながらフランソワは、今まで授業に協力的だったクンバに『どうして急に反抗的になったのか、夏休みのうちに何かあったのか』と心配半分に聞くと、彼女は『自分は大人になったから従いたくない』とだけ言った。
保護者を交えた教員たちの会議で、授業の妨げになる生徒に対して、免許証の減点方式のように罰を点数方式にしてみてはどうかという話が出ると、今度は、何を基準にするのか、勉強ができるかどうかと、授業態度の線引きなどの問題に至り、保護者からは罰を与えるのは中学の悪しき習慣で、叱るのに褒めて伸ばそうとはしないと言われてしまう。その会議の帰り、フランソワのポストには、クンバから敬意に関して書いた作文が入っていた。
課題にしていた自己紹介作文を順に生徒に読ませていると、スレイマンは書くことを拒否し、その代わり自分の肩に彫ってあるタトゥーを見せ、コーランの一説が沈黙を良しとする意味なのだと言った。そんなざわついた教室に、転校生としてカルルがやってくる。フランソワは授業の終わりに彼を残し、『転校の理由は知っているけれど、ここではそれは関係なく一からやり直せばいい』と励ました。
パリ20区、僕たちのクラスのネタバレあらすじ:パリの抱える事情と教育現場
保護者面談の顔ぶれはざまざまで、とある名門の高校に進学させたいと望む親は、息子の進度にも合わせてやってほしいと望み、問題児スレイマンの保護者としてきた母親はフランス語が全く通じず、同行した兄がみな通訳をした。
フランソワが生活態度を改めるよう書いた連絡帳もこれでは読めない。フランソワはスレイマンが自己紹介の作文の代わりに写真を撮ってきたことを知ると、パソコンの授業をかねて、自己紹介文を皆に打たせスレイマンには写真に説明文を添えるように言った。そして、彼の自己紹介は朗読される代わりにコルクボードに貼られた。
そんな折、中国からの移民ウェイの母親が不法滞在で逮捕された。強制送還の可能性が出てくる中、弁護士代をカンパしようという事になった。そして、別の教師は自分の妊娠を祝い、皆でシャンパンを開けながらウェイの母親がフランスに残れることと、ウェイのような賢い子が生まれるようにと願った。
一向にスレイマンの授業態度が治らず、フランソワはとうとう彼を校長室まで連れて行った。そして生徒たちの成績を決める会議で賞を与えるか態度を改めるよう注意するか、そんな話をする教師たちの話を、クラスリーダーのエスメラルダとルイーズはコソコソと話しながらメモを取り聞いていた。その態度はとてもいいと言えるものではなかった。
パリ20区、僕たちのクラスの結末:事件は成績会議から始まった
彼女たちが成績会議で話されていた事をクラスメイトにリークすると、詩の授業の時にある生徒が自分の成績について聞いてくる。クラスリーダーは授業を円滑に進めるためにいるはずなのに、と怒ったフランソワは彼女たちの事をペタスと言ってしまう(petasse:雌犬の意、スラングで娼婦を指す)。
もちろんフランソワは成績会議での彼女たちの態度を指して言ったのだが、スレイマンは女の子を娼婦呼ばわりしたことを下品だと怒り、勝手に教室を出て行こうとした。その時振り回した鞄の金具がクンバの顔に当たり、目の上から血が流れた。クラスメイトに怪我をさせたということで、スレイマンは懲罰会議にかけられることとなった。
フランソワは自分の発言が一つのきっかけであることを知りながら、報告書には書かなかったはずであったのに、女性の教員に呼び止められ女生徒に言ったことを小声で問われ、ルイーズたちが噂を流している事を知った。フランソワは『娼婦とは別の意味で使った』のだと彼女たちに言うも、噂は広まった後だった。
そして、怪我をさせられた側のクンバは、スレイマンは退学になれば父親にマリへ送り返されてしまうだろうという事をフランソワに話した。 フランソワは「べタス」と言った事を報告書に加えておくように言われた。
懲罰会議に掛けられればほぼ退学が決定し、別の学校を探すのが通例だが、スレイマンのマリ送還の可能性を話すと、限界を超えた生徒は会議に掛けるべきで、その結果どうなるかは関係ない、教師は親の側に立つべきではないと言う者や、そもそも無理にやめさせたいわけではなく、スレイマン自身が勉強が嫌いなのでは?と言われてしまった。
懲罰会議に出席した母親はフランス語を解さないまでも、スレイマンはいい子だと擁護した。しかし投票の結果、彼の退学が決定した。
年度末、バカンスを前に生徒たちに今年学んだことを聞き、自己紹介をまとめた冊子を渡して解散したフランソワのもとに、一人の女生徒が『自分は何も学んでない。このまま進学せず就職コースは嫌だ』と言いに来た。フランソワは『まだ一年ある』としか返せなかった。校庭でサッカーをする生徒と先生の声が、誰もいなくなった教室に響いていた。
以上、映画パリ20区、僕たちのクラスのあらすじと結末でした。
パリ20区、僕たちのクラスのレビュー・考察:フランスの教育システムの持つ問題点
とかく良い面ばかりを取り上げられがちな欧州の教育システムだが、日本とはまた別の問題を抱えている。フランスを一例に挙げるなら日本以上に教育格差は激しく、高等教育を受けるか働くかは高校へ上がる段階でほぼ振り分けられる。さらに、飛び級と落第も存在する。 作中でメインとなっているのは、「国語」と訳がついているが、正確にはフランス語の授業で、日本におけるいわゆる「国語」とはまた毛色が違う。移民の多いパリ20区というロケーションにおいては、母語をフランス語としない子供に、フランス語を教えるという色合いが濃く出ているように思う。 また、教師という役職を、子供たちを導く聖職者然として描かずに、感情に揺らぎのある一人の人物として、あくまでも子供たちと同じ教室にいる大人という視点で見ることができる点が、学校を扱った映画としては新しいと思う。
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