アイヒマンの後継者 ミルグラム博士の恐るべき告発の紹介:2015年アメリカ映画。人間はなぜ権威へ服従するのか…第二次世界大戦中、ナチスドイツで大量虐殺を指揮したアドルフ・アイヒマンの行動を検証すべく、心理学者スタンレー・ミルグラムが生涯に渡って実行し続けた心理実験「アイヒマン実験」に迫る実録伝記ドラマです。
監督:マイケル・アルメレイダ 出演者:ピーター・サースガード(スタンレー・ミルグラム)、ウィノナ・ライダー(アレクサンドラ・”サーシャ”・ミルグラム)、ポール・ホランダー(エドアルド・バレリーニ)、ジム・ガフィガン(ジェームズ・マクドナー)、アンソニー・エドワーズ(ミラー)ほか
映画「アイヒマンの後継者 ミルグラム博士の恐るべき告発」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「アイヒマンの後継者 ミルグラム博士の恐るべき告発」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
アイヒマンの後継者 ミルグラム博士の恐るべき告発の予告編 動画
映画「アイヒマンの後継者 ミルグラム博士の恐るべき告発」解説
この解説記事には映画「アイヒマンの後継者 ミルグラム博士の恐るべき告発」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
アイヒマンの後継者 ミルグラム博士の恐るべき告発のネタバレあらすじ:起
1961年8月、アメリカ・イェール大学。ここでは心理学者スタンレー・ミルグラム博士(ピーター・サースガード)による心理実験が行われていました。二人の被験者は四択クイズの出題者と回答者に振り分けられ、回答者は不正解を出す度に電気ショックが与えられ、しかも不正解の数に応じて電圧も上げられていくというものでした。しかし、実際の被験者は出題者のみであり、回答者は電気ショックを加えられた演技をしているだけの実験協力者なのです。
1933年、ユダヤ系移民の子としてニューヨークで生まれたミルグラム博士は、第二次世界大戦時にナチスドイツがユダヤ人の大量虐殺(ホロコースト)に手を染めたことから、なぜ人は残虐な行為に走るのか、そして人はなぜ権威へ服従するのか疑問を抱きながら成長していきました。
アイヒマンの後継者 ミルグラム博士の恐るべき告発のネタバレあらすじ:承
実験と時を同じくして、エルサレムではホロコーストを主導したとされるナチス戦犯アドルフ・アイヒマンの裁判が進められていました。アイヒマンは一貫して「虐殺は命令に従っただけ」との主張を崩さぬまま処刑されました。世間一般からは人格異常者として見られていたアイヒマンは実際はごく普通の平凡な公務員だったことから、ミルグラム博士は人間は誰しもが“ある一定の条件”に達すると残虐な行為に走るのではと考えていました。実際、出題者に指名された数百人の被験者のほとんどが電気ショックの電圧を最大限にまで上げており、65%の被験者は何ら疑いを抱くこともなく命令に従い続けたことから、実験結果をまとめたミルグラム博士は1963年10月に論文を発表、世間に衝撃をもたらしました。
アイヒマンの後継者 ミルグラム博士の恐るべき告発のネタバレあらすじ:転
ハーバード大学の助教授に就任したミルグラム博士でしたが、論文の反響は予想を大きく超えたものであり、中には「実験は非論理的だ」「詐欺だ」「これは被験者を欺いただけのものだ」といった批判が数多く寄せられました。そんなミルグラム博士を献身的に支えたのは妻のサーシャ(ウィノナ・ライダー)であり、子宝にも恵まれたミルグラム博士はその後もあらゆる実験を繰り広げていきました。テレビ番組の“ドッキリもの”に着想を得た、切手を貼った手紙を宛先分だけ用意して街のあちこちに放置して道行く人に投函させるという「放置手紙実験」、バーバード大学の冊子を被験者の親族や友人らに郵送させ、最終的にはひとつの宛先に届くのかを見る実験などです。
アイヒマンの後継者 ミルグラム博士の恐るべき告発の結末
1974年、ミルグラム博士はニューヨーク市立大学の教授に就任してからも精力的に実験を続けていました。この年、ミルグラム博士はこれまでの実験の成果をまとめた著書『服従の心理』を出版、それは多言語に翻訳されて世界各国で反響を呼びましたが、相変わらず「実験そのものが攻撃的だ」などの批判は鳴りやまず、ミルグラム博士はその都度「悪魔は常に誰の心の中にも存在する」「知性を持つことが自由への第一歩」と反論し続けました。やがてミルグラム博士の著書はテレビドラマ化されることになりましたが、それは脚色を加えられたフィクションものであり、博士の意図するものではありませんでした。その後もミルグラム博士は実験を続け、世間からの批判に毅然と反論し続けましたが、1984年、ミルグラム博士は志半ばで51年の生涯を閉じました。博士の死後も「ミルグラム理論」はあらゆるところで検証され続け、今では心理学の基礎のひとつとして語り継がれているのです。
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