華氏911の紹介:2004年アメリカ映画。カンヌ映画祭にて最高賞パルムドールを受賞したマイケル・ムーア監督の渾身のドキュメンタリー。ブッシュ政権誕生に始まり、9・11同時多発テロ、そして泥沼と化したイラク戦争を退役軍人や我が子を戦争で失った母親らの取材を交えて克明に描きます。
監督:マイケル・ムーア 出演者:ジョージ・W・ブッシュ、ドナルド・ラムズフェルド、コンドリーザ・ライス、ブリトニー・スピアーズ、ジョン・アシュクロフトほか
映画「華氏911」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「華氏911」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「華氏911」解説
この解説記事には映画「華氏911」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
華氏911のネタバレあらすじ:起
2000年のアメリカ合衆国大統領選挙で民主党のゴア候補を退けて当選した共和党のジョージ・W・ブッシュ候補。大統領就任式ではブッシュの当選に抗議する人がブッシュの乗るリムジンを取り囲もうとするなど物々しい雰囲気に。就任後はしばらく穏やかな日々を送っていたブッシュ。そして2001年9月11日、この日ブッシュはとある小学校を訪問し、児童に絵本を読み聞かせていたところ、米国各地で同時多発テロが発生したという知らせが。FBIは事件当初から国際テロ組織アルカイダがテロを起こす危険性を指摘していたのですが、ブッシュ政権の高官たちはこれを否定し続けていた最中での出来事でした。
華氏911のネタバレあらすじ:承
マイケル・ムーアは、独自の調査を進めるうちに、テロの首謀者とされるオサマ・ビン・ラディンの一族とブッシュ一族の接点に気がつきます。そんな時、ブッシュ政権は独立調査委員会によるテロ捜査を途中で打ち切り、イラクに大量破壊兵器があるとして戦争の準備を開始します。ブッシュ政権はさらに、国民のプライバシーを国が監視することができる「米国愛国法」を可決させ、米国民は政権を批判しただけで取り調べを受けるなど次第に自由を奪われていきます。そして2003年3月19日、アメリカ軍はテロとは無関係なイラクに軍事進攻を開始、イラク戦争が開戦したのです。
華氏911のネタバレあらすじ:転
人気歌手のブリトニー・スピアーズはインタビューでブッシュ政権の行動を支持する中、戦争は次第に泥沼と化し、なんの罪もない民間人を中心に多大な犠牲者を出していました。米国兵による捕虜への虐待も横行していました。米国軍も死傷者が増え、軍の病院では手や足を失ったり心を病んだ兵士が担ぎ込まれていました。戦況が悪化の一途を辿るなか、アメリカ本土では軍のスカウトが貧しい若者を軍隊に勧誘していました。若者は愛国心よりも仕事がないのでやむなく軍隊に入る人がほとんどで、一方政治家たちの中で我が子を戦地に行かせた者はほとんどいませんでした。マイケルは我が子を戦場に送り出した愛国心の強い母親に出会います。その母親は息子を誇りに思っていましたが、ある日息子が戦死したという知らせを聞きます。そして息子は生前ブッシュ政権に対して強い怒りを抱いていたことも知り、母親の心にある変化が生まれます。
華氏911の結末
マイケルはイラクから帰還後に退役した元軍人の元を訪れます。元軍人は心に一生消えないであろう深い傷を抱えており、戦争への最悪感を口にします。一方、軍事産業の上層部は、イラク戦争が金になるとばかりに豪勢なパーティーを開いていました。以前マイケルが取材した、我が子を失った母親はマイケルと共にワシントンD.C.のホワイトハウスに向かいます。そこには戦争反対を掲げ座り込む老女の姿が。母親はホワイトハウスを睨みながら、このイラク戦争が正しい戦争だと信じ切っていた自分を責め、泣き崩れます。ブッシュ大統領はテレビ演説で地元テキサスのことわざを引用し「一度だけ私を騙したなら君の恥、二度も私を騙したのなら私の恥」と語ります。マイケルはこう返します。あんたこそ恥を知るべきた、と。
カンヌ映画祭で、最高賞であるパルムドールを受賞したということで、前作に続き、マイケルムーア監督のドキュメンタリー作品を見ました。ブッシュ政権時代にアメリカで起こった9・11同時多発テロや、イラク戦争、退役軍人問題についてなど、戦争による犠牲者が多くいる中で、イラク戦争による行動を正当化したことを痛烈に批判した政治色も強い内容のドキュメンタリー映画でした。