カサノバの紹介:1976年イタリア映画。18世紀のヴェネチアと周辺地域を舞台に、波乱とエクスタシーに満ちた生涯を送った資産家ジャコモ・カサノバの生涯を追う。いかにして彼は多くの女性とロマンスに至ったのか。
監督:フェデリコ・フェリーニ 出演:ドナルド・サザーランド(ジャコモ・カサノバ)、ティナ・オーモン(アンリエット)、マルガレート・クレマンティ(マッダレーナ)、サンドラ・エレーン・アレン(アンジェリーナ)、シシリー・ブラウン(マダム・デルフェ)、カルメン・スカルピッタ(マダム・シャルピヨン)、クララ・アルグランティ(マルコリーナ)、ダニエラ・ガッティ(ジゼルダ)、オリンピア・カルリシ(イザベラ)、シルヴァーナ・フサッキア(イザベラの妹)、クラリッサ・メアリー・ロール(アンナ・マリア)、ダニエル・エミルフォルク(デュ・ボワ)、ほか
映画「カサノバ(1976年)」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「カサノバ(1976年)」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
カサノバの予告編 動画
映画「カサノバ(1976年)」解説
この解説記事には映画「カサノバ(1976年)」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
カサノバのネタバレあらすじ:起
18世紀、ヴェネチア。宴の夜、花火がはじける夜空の下で、滑稽な仮装姿の男の元に手紙が届けられました。手紙には離れ小島へと一人で来るように指示が書かれており、男は満を持してボートを漕ぎ出しました。男の名前はジャコモ・カサノバ(ドナルド・サザーランド)。たぐいまれな知能と性欲、そして体力ですでに多くの女性とベッドを共にしていました。
離れ小島に着くと、石造りの小屋があり、男は恐る恐る中に入ってみました。すると道化のような格好に仮装したうら若き女性が待っていました。小屋には覗き部屋になっており、そこでフランスの高官がカサノバの噂を聞きつけて女性を用意して待っていたのです。カサノバは二人の期待に応え、女性と交わります。
カサノバのネタバレあらすじ:承
彼はその後、黒魔術に手を出したとして教会から捕縛され、投獄されてしまいます。牢屋でも思い出すのは夜を過ごしたあまたの女性の姿ばかり…。異常なプレイを好む夫人、裁縫にいそしむ女子たちの中でひときわか弱い娘、どこからともなく現れ最高の夜を過ごした謎の美女アンリエット(ティナ・オーモン)…。カサノバは特別、アンリエットに思いを寄せていました。
カサノバのネタバレあらすじ:転
男装した姿で出会い、彼女を豪華な貴族の衣装で仕立て上げ、そして一夜を共にしたのです。彼女の素性は一切わかりませんでしたが、ある日、彼女の迎えと思しき人物に連れ去られてしまうのでした。
カサノバは執念の末、牢獄を脱出しました。財産を取り戻し、彼はヴェネチアを去り、あらゆる地方を旅してまわりました。
カサノバの結末
初老にもかかわらず、カサノバとの子供を儲けたいと金品宝石で彼を釣る貴族の婦人、見世物小屋に売られた長身の女性とその従者で短身症の二人の男、ジャコモの噂を聞きつけ、どれほど多く「できる」か若い男と競わせる貴族たち。劇場の女優達と乱れ交わる夜、そして彼の奔放な性格の元になった母親との再会。
晩年のカサノバは見る影もなく、社交界でも嘲笑されるほど没落した姿を周囲に見せていました。そして、彼は夢を見ます。きらびやかに着飾った貴族の女性たちがカサノバを置いて、もてあそぶように走り去るのです。
以上、映画「カサノバ」のあらすじと結末でした。
ドンファンは存在し得ぬ理想の恋人を求めて、次々に女を換え、カサノバは女たちの間をさすらいつつ、常に現在抱いている女を至上の恋人として愛する、と言う。
歌舞伎を思わせる凝りに凝った装飾の内に塗り込められたこの絵巻は、殊更に古めかしい「遍歴の物語」もしくは海の女神につながる巨鯨モーナの「胎内巡り譚」の装いで表現された、陽気な、優雅な、あるいは哀愁漂う、愛の諸相の集大成だ。
そして、この華麗な様式美の世界から、俳優の個性や演技をほとんど不要として、背景に溶け込ませてしまうフェデリコ・フェリーニ監督の映画では意外なほどに、鮮やかに浮かび上がって来るのが、カサノバという一人の男の、限りなく善良無垢な、愛に満ちた魂なのだ。
カサノバは山師であり、気障なお洒落屋であるが、一方、男尊女卑が一般であったこの時代に、ひたすら心を傾けて女を愛し、礼讃する、稀に見る本来の女人崇拝者だ。
しかし、それ故にこそ彼は、女たちのひととき憩う夢であり、永久に通り過ぎられる空白の四つ辻でしかない。
詩人として名を残すことを願いつつ、色事師としてのみ名高くなった彼の、その色事の多くは、女から求められたものであり、たまさか彼が求める女は、いつも傍らをすり抜けていった。
老残の果ての夢に、人形と踊る凄絶な彼の姿に、ある種の感慨を抱き、また加虐者としてのひそかな歓びと、同時にこのいじらしくも純粋な魂に対するたまらない愛しさを感じてしまう。
女を求め続けて、自らの虚無にしか到り得ぬ男は、女の側から常に秘められた願望であり、彼自身の哀しみに関わりなく、ここに一つの永遠の理想的な男性像が完成されているのだ。
フェリーニ監督本人にとってこの作品は、思い入れであるより、余りに手慣れた趣味の遊びであるようだが、イタリア古謡の哀切な節に包まれたカサノバの心にしみる優しさは、フェリーニ監督自身の風貌をも偲ばせて、女心を甘やかな懐かしさへと誘うのだ。