英雄の証明の紹介:2021年イラン, フランス映画。第74回カンヌ国際映画祭でグランプリを獲得した、ソーシャルメディアの光と闇を題材にしたイラン発のサスペンス作品です。借金の罪で服役していた主人公の男は善行により世間からの注目を集めたのですが、SNSに投稿された噂をきっかけに彼の人生の歯車は大きく狂っていくことになります。
監督:アスガル・ファルハーディー 出演:アミール・ジャディディ(ラヒム)、サハル・ゴルデュースト(ファルコンデ)、モーセン・タナバンデ(バーラム)、フェレシュテー・サドル・オーファン(ラドメール夫人)、サリナ・ファルハーディー(ナザニン)ほか
映画「英雄の証明」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「英雄の証明」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「英雄の証明」解説
この解説記事には映画「英雄の証明」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
英雄の証明のネタバレあらすじ:起
イランの古都シラーズ。元看板職人のラヒムは3年前、別れた元妻の兄バーラムから1億5千万トマンもの借金をしていましたが、返済できすに告発され、借金の罪で刑務所に服役していました。
そんなある時、ラヒムは2日間だけ仮釈放を許されました。借金さえ返済すれば刑は帳消しになるため、ラヒムは何とかこの機会に金を集めてバーラムに返済しようと考えました。というのも、元妻との離婚後に交際を始めた婚約者のファルコンデが数日前に金貨17枚の入ったバッグを拾っていたのです。ラヒムはその金貨を換金して借金返済にあてようと考えたのです。
仮釈放されたラヒムはその足で、息子シアヴァシュの面倒を見てくれている姉マリレとその夫ホセインのもとを訪れました。それからラヒムはファルコンデを伴って貴金属店に向かい、金貨を査定してもらいましたが、その査定額はラヒムの借金の半分程度の金額しか出ませんでした。
ラヒムはバーラムに泣きつき、残りの借金は出所してから働いて返すので告発を取り下げてほしいと頼みましたが、バーラムは全額返済でないと許さないと一蹴しました。
英雄の証明のネタバレあらすじ:承
翌日、ラヒムは勝手に他人の金貨をくすねたことへの罪悪感を抱えていました。ラヒムは悩んだ末に金貨を元の持ち主に返すことにし、街に貼り紙を貼って呼びかけたところ、持ち主を名乗るひとりの女性から連絡がありました。
女性は金貨を預かっているマリレのもとを訪れ、ギャンブルに依存している夫に内緒で必死に貯めた金だと語ると感謝を述べて去っていきました。
ラヒムは連絡先の電話番号を刑務所のものにしており、この件はささやかな善行として刑務所内にも広まりました。刑務所は正直者の囚人という美談としてラヒムにマスコミの取材を受けさせ、たちまちラヒムは正直に金を返した英雄として世間から称賛されました。
ラヒムは仮釈放の期間を延長してもらい、シアヴァシュとともにチャリティー協会のイベントに招待されました。吃音症を患うシアヴァシュのスピーチは人々の共感を誘い、ラヒムのもとには3400万トマンの寄付金が寄せられました。
人々はバーラムにラヒムを許してあげてほしいと訴えました。最初のうちは金額が足りないと難色を示していたバーラムも世間の声に押され、甥であるシアヴァシュのためだと考えて残りの金は出所してから働いて返せと同意しました。
英雄の証明のネタバレあらすじ:転
ラヒムは新たな就職先を紹介され、今後の人生は順風満帆かと思われましたが、職場の担当者から言われた一言がラヒムの人生を大きく狂わせることとなりました。担当者はSNSに今回の件は詐欺ではないかという噂が広まっており、ラヒムは本当に女性に金を返したのか証明するよう言い出してきました。
ラヒムは金貨を受け取りに来た女性を探すことになりましたが、彼女は名前や住所を一言も教えていませんでした。そこでラヒムは女性が乗っていたタクシーの運転手を探し出し、協力を頼みました。かつて前科者だった経験を持つ運転手はラヒムに同情して協力することにし、この女性はマリレの家を出た後に貴金属店で降りたと証言しました。
ラヒムはこの貴金属店に行き、女性のことを尋ねると、この女性は金貨の査定こそ頼んだものの換金することなくそのまま帰ったと店側は証言しました。ラヒムは店側に頼んで防犯カメラの映像を見せてもらいましたが、女性が確かに映っている以外は何の手がかりも得られませんでした。
SNSで広まった噂のせいで予定されていたテレビ取材が中止になり、刑務所の上層部はラヒムに疑いを抱き始めました。ラヒムは悩んだ末にファルコンデを金貨を取りに来た女性に仕立て、担当者に再び掛け合いましたが、担当者は今度は彼女の話の裏付けを取ると言い出し、更にはラヒムが金貨を拾った日付よりも以前に刑務所からバーラムに金を返すとのメールを送っていたことを指摘しました。
困り果てたラヒムは、金貨を見つけたのは自分の婚約者であり、そのことは刑務所側には伝えていたけれども、彼女が婚約者だということまでは周囲に隠しており、刑務所側もそこまでは詮索する必要もないだろうと判断したことからうやむやになっていたのです。
ラヒムは刑務所側に掛け合ってそのことを担当者に証明してほしいと頼みましたが相手にされず、ついカッとなって暴言を吐いてしまいました。
英雄の証明の結末
ラヒムはバーラムが担当者にメールの内容を暴露したのだと思い込み、バーラムの職場に乗り込みました。たまたま居合わせたラヒムの元妻はラヒムがバーラムに食ってかかる様を目撃し、近くの市場の商店主たちに助けを求めました。その様子をバーラムの娘ナザニンが撮影しており、その動画はチャリティー協会にも送信されました。
警察に連行されたラヒムはファルコンデに引き取られ、協会からの呼び出しを受けてファルコンデと共に向かいました。ナザニンは明日までに借金全額を返済しなければこの動画を公表すると脅しており、協会側はトラブルと信用低下を恐れてこれまでラヒムのために集められた寄付金を渡すわけにはいかない、寄付金は別の人に回すと言い出しました。
押し問答の末、ラヒムは金などいらないと吐き捨てて一旦は帰ろうとしましたが、どうしてもラヒムの名誉を守りたい一心のファルコンデはラヒムを連れて協会に引き返し、もし寄付金が他人に流れたことが知られればラヒムは恥をかいてしまうので寄付金を譲ったことにしてほしいと頼みました。
協会は要求を受け入れ、SNSで拡散すると約束し、動画も揉み消すことを約束しましたが、時既に遅く動画は既に拡散されていました。
実はラヒムの新たな職場の担当者にメールを送ったのはバーラムではなく、刑務所で携帯を使わせてくれた囚人がラヒムに嫉妬してしでかしたことでした。寄付金を困っている別の人に譲ったことがSNSで拡散され、刑務所の担当者が今回の件を動画で撮らせてほしいとラヒムに依頼しにやってきました。ラヒムは断りましたが、刑務所側は担当者にビデオカメラを持たせて送り込んできました。
刑務所側はシアヴァシュに貴金属店の防犯カメラに映った金貨の持ち主の女性の写真を持たせ、ラヒムのことを話させようとしましたが、吃音症のシアヴァシュは緊張のあまり上手く喋ることができませんでした。
息子が晒し者になってしまうと危惧したラヒムは刑務所側に撮影を止めるよう訴えましたが聞き入れられませんでした。それでもラヒムは動画を消してくれと担当者に詰め寄り、遂に手をあげてしまいました。
そしてラヒムは残りの刑期を全うするため、ファルコンデとシアヴァシュに見送られて再び刑務所へと戻っていきました。
以上、映画「英雄の証明」のあらすじと結末でした。
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