トルナトーレ 我が映画人生の紹介:2010年イタリア映画。イタリア映画の巨匠トルナトーレの作品の礎は何か、シチリアから始まるその足跡を辿り、それぞれの作品の魅力を探る。
監督:ルチアーノ・バルカローリ、ジェラルド・パニチ 出演者:ジュゼッペ・トルナトーレ、ベン・ギャザラ、ティム・ロス、エンニオ・モリコーネ、モニカ・ベルッチ、ジェフリー・ラッシュ、セルジオ・カステリット、ヴィットリオ・チェッキ・ゴーリ、マッシモ・デ・リタ
映画「トルナトーレ 我が映画人生」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「トルナトーレ 我が映画人生」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
トルナトーレ 我が映画人生の予告編 動画
映画「トルナトーレ 我が映画人生」解説
この解説記事には映画「トルナトーレ 我が映画人生」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
トルナトーレ 我が映画人生のネタバレあらすじ:シチリア人気質
映画を作るという仕事には学ぶことに終わりがない。常に意識しているのは、謙虚でありつつも強い意思が必要だという事。常に自分を取り囲むどんなものでも表現することができる映画の可能性に魅力を感じてきた。映画は記憶たどり、あることを想いだすという経験とまったく同じプロセスに基づいている。
トルナトーレは、自分の中に古き良きイタリア映画の要素をすべて持ち合わせている。映像を信じて自らの故郷シチリアを背負っている点が興味深い。人々の感情を知り尽くしている彼の語る物語は全て、彼自身や我々の人生の一部。彼以上にその土地や人間を愛しうまく語れる者はいない。
トルナトーレ 我が映画人生のネタバレあらすじ:「ニュー・シネマ・パラダイス」
トルナトーレの父親は10歳の彼がねだるカメラを、子供には不要だとは言わず一緒に買いに行った。それが後に映画まで可能性を広げるきっかけだった。
1980年頃、ローマにやって来たトルナトーレはフリーのプロデューサーを訪ね、二人のプロデューサーと出会い、製作した二つの作品で学び、独自の哲学を開花させた。
シチリアで映写技師をし、独学で映画を学んだ彼はその時の記憶を「ニュー・シネマ・パラダイス」で再現している。脚本の段階から感情にあふれていた。感動が滲み出ていたがイタリアの喜劇映画らしい笑いもあった。しかし「ニュー・シネマ・パラダイス」はイタリア公開時にヒットはせず、カンヌ映画祭の特別賞、アカデミー賞を受賞すると、国際的な反響を得ると「実は名作なのでは」と声が上がり、やっと成功を納めた。
トルナトーレ 我が映画人生のネタバレあらすじ:作品に込められた感情
トルナトーレは「ニュー・シネマ・パラダイス」は別として、ノスタルジックな作品は撮っていない。通常のテーマは「記憶」、彼がやっている事は観客の過去や感情と繋がる。かつての偉大な映画と同じ性質を持っていて、過去の映画との橋渡しをする彼の映画は懐古趣味ではなく、独自の芸術の形をしている。
アカデミー賞をきっかけに、多くの可能性を手にしたトルナトーレは、チェッキ・ゴーリと三作撮る契約をしたが、いくら脚本を書いても却下され、決められた予算で映画を撮るから内容を明かさず撮らせてくれと交換条件をし、三年の模索を経て「記憶の扉」を作った。すべての原則から解き放たれたこの作品は感情表現を最小限で行う。脚本んを読んだのは主演のドパルデューとポランスキーだけだった。
トルナトーレ 我が映画人生のネタバレあらすじ:映画の育て方
「明日を夢見て」の撮影場所探しで偶然辿りついたチヴィタ・ディ・バーニョレージョに魅了されたトルナトーレはここで脚本を書いた。映画は実現しなかった「軽率な旅人(仮)」、「レニングラード(仮)」を含め、「マレーナ」、「海の上のピアニスト」「レニングラード(仮)」「題名のない子守唄」「シチリア!シチリア!」を書いた。一時的な情熱を嫌悪し、時間をかけて物語温め、自分の一部になるまで修整し、そして映画を撮った。
彼は構成ではなく映像から入り、それを育てていく。彼自身が映画のようで、物語を伝えたいという衝動から、次々と映像を思いつく。アドリブや直感も大切にするが、80~90%は脚本を書いた段階で決まっている。そして彼は常に自分にとって100%の状態の映画を届けようとする。そんな彼は映画製作で大切な事は、いいストーリーに尽きると言う。
出演者たちは、演じる人物像を話し合い、コンテのような脚本に身を任せる。だからこそ台詞の少ない仕草だけの演技にも集中できた。
トルナトーレ 我が映画人生の結末:「シチリア!シチリア!」
イタリアは今も孤立している。目の前の現実に向き合おうとせず、歴史的な問題であるシチリアの発展の遅れは、国家では解決できない。トルナトーレの両親は貧しい地区に住んでいた。彼らはただ息子に何ができるか見ていた。信頼という投資をし、すべては自分次第だと少年時代の彼に思わせた。
「シチリア!シチリア!」で彼は頭の中をカメラに写そうと試みた。脚本で大変な撮影になることは分かっていた。チュニジアにセットとして一つの町を移設し、自身の断片のある土地を築いた。たくさんの協力者のおかげで完成したのは、シチリアの映画ではなく個人的な映画だった。
諦めたり屈したりすることはない、トルナトーレだからこそ完成させられた映画だった。
以上、映画「トルナトーレ 我が映画人生」のあらすじと結末でした。
トルナトーレ 我が映画人生のレビュー・考察:常に新しい挑戦を
若くして認められた後も、コツコツと撮り続けているトルナトーレの作品には、常に真新しさがそこにある。シチリア的・イタリア的作品を除けば、言われるまでトルナトーレの作品だとは思っていなかったものもある。しかし一つ一つの完成度の高さ、場面の美しさ、時に生々しいと感じるくらいの感情表現は共通項と言えなくもない。しかしそれよりも物語の面白さが先に立つ。ストーリーテラーとしても素晴らしい監督だと思う。
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