白蛇抄(はくじゃしょう)の紹介:1983年日本映画。情欲に翻弄される女の悲劇を描いた文芸エロス作品。夫を失い自殺しようとしたうたは、寺の住職に助けられそのまま内縁の妻となった。老齢で体の自由が利かない和尚は夜毎うたの体を求める。和尚の息子昌夫も妖艶なうたに惹かれていた。やがてうたと昌夫は愛し合うようになり、破滅の道を進んでいく。原作は水上勉の同名小説。
監督:伊藤俊也 出演者:小柳ルミ子(石立うた)、杉本哲太(加波島昌夫)、仙道敦子(鵜藤まつの)、鈴木光枝(さわ)、宮口精二(慈観)ほか
映画「白蛇抄」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「白蛇抄」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
白蛇抄の予告編 動画
映画「白蛇抄」解説
この解説記事には映画「白蛇抄」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
白蛇抄のネタバレあらすじ:妖艶な女
舞台は日本、福井県の若狭。母親を亡くした15歳の少女鵜藤まつのは、縁故ある石立うたを頼って田舎の山寺にやって来ました。うたはまつのの母と姉妹同然に育てられ、現在は華蔵寺に身を寄せています。まつのを歓迎したうたは、早速寺の住職である加波島懐海に紹介しました。懐海は老齢で体の自由が利かず、ほとんど寝たきりの生活を送っています。うたはその世話を甲斐甲斐しく焼いていました。その時、華蔵寺の裏にある滝で若い女性の遺体が発見されます。そこは心中滝とも言われていました。夜。まつのが住み込みで働いている老女さわと食事をしていると、懐海の息子昌夫が帰って来ます。彼は懐海が愛人に産ませた子どもでした。懐海は愛人を寺に入れず冷遇し、彼女が亡くなってから渋々昌夫を引き取ったそうです。昌夫は既に出家を済ませ、高校を卒業し次第本山に入って本格的な修行に励む予定になっていました。うたは所謂内縁の妻で、さわはうたの存在を快く思っていません。その後就寝したまつのは、懐海に抱かれるうたの嬌声を聞いて目を覚ましました。懐海は不自由な体で執拗にうたを求めます。不思議な色香を纏ううたに心を奪われたのは懐海だけではありません。昌夫も情欲に満ちた目でうたを見ていました。そしてもう1人、警部補の村井も同じです。彼はうたに強引に迫っては拒否され続けていました。そんな村井が滝の心中事件を扱っていると、滝壺から妙な物が発見されます。それは白く長い腹帯で、底に沈んでいる何かに巻き付けられていました。
白蛇抄のネタバレあらすじ:うたの過去
地元の中学校に転入したまつのは、同級生からうたの噂を聞かされます。うたは滝に身投げをして自殺を図ったものの懐海に助けられ、色仕掛けでそのまま寺に住み着いた、という内容でした。噂を信じられないまつのは腹を立てながら寺に帰りますが、懐海に愛撫されるうたを目撃してしまいます。慌てて逃げようとしますが昌夫に捕まり、「見ろ!」と命令された上に唇を奪われました。一方、うたの過去を探る村井は彼女の故郷へ向かい養母を訪ねます。うたの実母は流れ者で、出産後すぐに死亡してしまいました。養母はうたを引き取り、自分の娘と姉妹のように育てたそうです。その後成長したうたは就職のため京都へ行き、故郷に戻ることはありませんでした。情報を得た村井は電話でうたを呼び出し、自宅へ招きます。そしてうたの過去について話し出しました。就職した工場が閉鎖した後ホステスになったこと。バーテンダーと結婚したこと。そして3年前の大みそかに夫を火事で亡くしたこと。辛そうに俯くうたに、村井は寺を出て自分と結婚して欲しいと言い出します。村井はうたが滝から救出された時から、ずっと彼女の肉体に惚れ込んでいたのです。しかしうたは頑なに拒否して寺に帰りました。すると追うように村井が現れ、うたを滝へ連れて行きます。彼は「腹の子はどうした」と言い出しました。夫が亡くなった時うたは妊娠しており、男児を出産したものの未熟児だったため3日後死亡しています。うたは赤ん坊と共に病院から姿を消していました。村井は腹帯に包まれて沈んでいた物体を鞄から取り出します。それは石膏で固められたうたの赤ん坊でした。うたは赤ん坊と自分を腹帯で結び、一緒に滝へ飛び込んだのです。我が子を取り戻そうとしたうたと村井が揉み合いになり、石膏は再び滝壺へ落ちてしまいました。村井はそのままうたを強姦しようとしますが、様子を窺っていた昌夫に殴られ昏倒します。逃げ出したうたと昌夫は山小屋に避難し、その場で肉体関係を持ちました。
白蛇抄のネタバレあらすじ:罪と罰
昌夫は一緒に寺を出ようと言いますが、うたは承諾しません。しかし「死んだ赤ん坊の世話するつもりやったんやろ」と言われ泣き喚きました。昌夫は自分が息子になってやると言い、また体を重ねます。その後うたが寺に戻ると、まつのが泣きながら抱きついてきました。足元には懐海が転がっています。懐海はまつのを襲おうとして抵抗され、ついに自力で動くことも喋ることも出来ない体になっていました。うたは懐海の世話を焼く傍ら、昼夜関係なく昌夫と体を重ねます。ある夜、うたと昌夫の密会現場に動けないはずの懐海が現れました。恨めしそうに見上げる懐海に驚いた昌夫は、咄嗟に蹴り倒してしまいます。懐海は頭部を強打して死亡。うたと昌夫は遺体を布団に戻し、死因を偽装することにしました。しかし激しいショックを受けた2人は関係を断ち切ることを決意します。
白蛇抄のネタバレあらすじ:揺れ動く心
懐海の死から数日後。さわは仕事を辞めて寺を去り、昌夫も高校を中退して本山に入ることにしました。まつのはうたが寺を出た後、生活が落ち着き次第引き取ることになります。うたは京都へ昌夫を送り届けました。互いに二度と会うまいと決意して別れましたが、どうしても忘れられません。昌夫はうたが恋しくてたまらず、執拗に電話をかけてきました。心を鬼にして電話を切り続けるうたでしたが、すすり泣く声を聞くと情欲がこみ上げてきます。しかし昌夫から「助けてくれ、おかあちゃん」と言われた瞬間、うたは愕然としました。そんな中、懐海の死因に疑問を持った村井が電話でうたを呼び出します。彼は懐海の死が殺人だと確信を持っていました。夜、うたは大人しく村井とホテルに入ろうとしますが、直前で逃げ出します。翌早朝、まつのから電話についてしつこく言及されたうたは、彼女が昌夫に惚れているのだと気付きました。たとえ昌夫に会えなくとも京都へ行くつもりだと話すまつのに触発され、急いで本山へ向かったうた。しかし昌夫もうた恋しさに華蔵寺へ戻っており、2人は行き違いになってしまいました。その時うたは突然吐き気に襲われます。そして自分が妊娠していることを理解するのでした。
白蛇抄の結末:業火
夜、滝に佇んでいたうたのもとに村井が現れます。まつのからうたと昌夫の仲を仄めかされた村井は、義理とはいえ息子と関係を持ったのかと問い詰めました。うたは恐ろしい程美しく笑い、自分の子を拾って来てくれと村井を滝に落として殺害。更に寺で再会した昌夫を手酷く拒絶します。うたはわざと昌夫を怒らせ、彼に殺して貰おうと考えていました。狙い通り逆上した昌夫は鎌を振り上げうたを殺害した後、自分も後を追います。折り重なるように死んでいる2人を発見したまつのは、泣きながら寺に火を放ちました。地獄の業火のような炎に包まれる華蔵寺。焼け落ちる寺を背にまつのが泣き崩れ、この映画は終わりを迎えます。
以上、映画「白蛇抄」のあらすじと結末でした。
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