ハリーとトントの紹介:1974年アメリカ映画。猫と老人が主役の映画と聞けば心休まる物語を期待するかもしれません。猫のトントと老いたハリー。確かに猫は穏やかな日常を好み、老人も一般的には闘争を好みません。しかしどちらも危機的な状況に陥れば恐怖心を克服しようと牙をむいてきます。とくにハリー、人間は最後までアグレッシブでいなさいと教えてくれます。老け役を演じてハマったアート・カーニー、56歳の当たり役です。
監督:ポール・マザースキー 出演:アート・カーニー(ハリー)、エレン・バースティン(長女シャーリー)、ラリー・ハグマン(次男エディ)、ジェラルディン・フィッツジェラルド(ジェシー)、メラニー・メイロン(ジンジャー)、フィル・ブランズ(長男バート)、ジョシュア・モステル(バートの次男ノーマン)、アーサー・ハニカット(ウェイド・カールソン)ほか
映画「ハリーとトント」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「ハリーとトント」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
ハリーとトントの予告編 動画
映画「ハリーとトント」解説
この解説記事には映画「ハリーとトント」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
ハリーとトントのネタバレあらすじ:起
ニューヨーク市在住で72歳になるハリー(アート・カーニー)は、50年以上にわたってこの地で暮らしてきました。しかし友人がひとり、ふたりと去って逝くなかで、繁栄とは何と些末なものだと感じるようになっています。街には知らない顔ぶれが多くなり、道行く人の風情も変化しています。ハリーは時代の潮の満ち引きを意識せずにはいられません。
かつてはモダンなアパートが軒を連ねたダウンタウン。いまでは老朽化が目立っています。しかしそこはまだ、老いて行き場のない人たちの生活の場になっています。マンハッタンの華やかな大通りにくらべ、裏通りは犯罪の温床です。ハリーは4度強盗に遭っています。にべもないことだと知りながら、人とのつながりは「浅く狭く」をハリーは心掛けます。
しかし72歳のハリーはまだまだ意気軒昂です。教師として、海外の文学に親しんだ経験から、シェークスピアを諳んじ、日々のぼやきを良き時代のヒット曲に乗せてまぜ返す諧謔をもっています。買物は独居老人として過ごすハリーの日課です。中折れ帽に蝶ネクタイ、11年連れ添う猫のトントのリードを引いて、今朝もなじみの店を覗きに向かいます。
ハリーとトントのネタバレあらすじ:承
ハリーの住むアパートが区画整理の対象になって解体寸前です。いよいよ最後の住人として追われる日、長男のバート(フィル・ブランズ)がハリーとトントを迎えに来ます。郊外に家をもつバートは4人家族です。しかしそこは、子どもたちとバート夫婦が暮らすだけの間取りしかない建売です。義父との同居に嫁の態度が険しくなってきます。ハリーは決心します。「長居は無用だ」と。
ハリーは親思いのバートをなだめ、娘のシャーリーが暮らすシカゴへ向かう決心です。しかし搭乗ゲートでトントが同乗を拒否されます。ハリーは、しかたなく陸路でシカゴを目指すことになりました。ところが、用を足しにバスを降りたトントが姿をくらませます。戻ったトントを出迎えるはずのバスはハリーの荷物を置いて走り去ったあとでした。
自由を愛するトントのために、ハリーは旧型のシボレーを購入し、自らの運転でシカゴを目指すことにしました。しかし寄る年波の疲労には勝てず、長い運転時間がさすがに苦になってきます。途中、運よくヒッチハイクをしていた若い男女にめぐり合い、運転を交代します。じつはハリー、運転免許証が18年前に失効になったことを黙っています。
運転を頼んだ青年は「南へ行く」と言い、女の子はコロラドのコミューンへ向かいます。ハリーは女の子とさらに行動を共にすることになりました。トントはおっとり娘ジンジャー(メラニー・メイロン)に懐き、ハリーも16歳の家出娘を相手に血気盛んだった頃の時代を語ります。ジンジャーはハリーの初恋の相手ジェシー(ジェラルディン・フィッツジェラルド)が気になります。「どう?生きているか確かめに行ってみない?」。
ハリーとトントのネタバレあらすじ:転
シカゴへ行く道をインディアナへ迂回したハリーは、初恋の人ジェシーに会いに行きます。思ってもみなかった展開にハリーは胸躍らせますが、施設で時を過ごすジェシーの口からハリーの名前は出てきません。しかしかつてプリマをつとめたジェシーはハリーをダンスに誘います。ハリーは、うっとりとステップを踏むジェシーを愛おしく抱きしめます。
長男バートの差し金か、シカゴでは、首を長くしたバートの次男ノーマン(ジョシュア・モステル)が出迎えます。ハリーと長女シャーリー(エレン・バースティン)はまったく馬が合いません。再会を果たして間もなく口論がはじまります。ノーマンが「叔母さんはばかだ」と一刀両断にします。つまり融通が利かない娘だということです。父娘はけっきょく同居をあきらめ、袂を分かつことになりました。
ハリーは、バートの次男ノーマンともコロラドで別れます。スピリチュアルな世界への興味から、ノーマンはコミューンへの参加を希望します。ジンジャーと行動を共にするノーマンに、ハリーは車のキーを手渡します。ハリーはしかし愉快です。ニューヨークを発った日、この展開はまったく予想すらせず、いまはなぜか生きる意欲まで湧いてきています。
ハリーは、3人の男女と出会います。まずはウェイド・カールトン(アーサー・ハニカット)。同年配と思しき怪しげなセールスマンから、ハリーは若返りの秘薬とミキサーを購入します。すると次のヒッチハイクでは娼婦のステファニーと出会います。試しに・・・、結果は「OK」です。ミキサーをゆずったインディアンのサムには、持病の肩の痛みを呪術で治してもらいました。
ハリーとトントの結末
若返りを成し遂げたハリーは、ラスベガスに住む次男のエディ(ラリー・ハグマン)の家へ向かいます。若い日、自信げに人生を語っていたエディも、いまでは一文無しです。プールを備えたマンションに住み、こざっぱりとした部屋に親を招いたにも関わらず、寄る辺ない心境を吐露します。同居を望むエディにハリーは当座の金を約束します。「甘えてはいかん、自分の力で立ち直れ」。
トントは西海岸で息を引き取ります。11歳のトントにとってアメリカ大陸横断は体力を使いきった旅でした。しかし一方のハリーは若返り、ふたたび教師の仕事をはじめています。週3日勤務のフリースクールの教師なので、時間も心のゆとりもたっぷりと持っています。
ビーチで暮らす猫たちの1匹にハリーはトントを見つけます。幻だと知りながらあとを追いますが、いまハリーは猫に深い興味を示しません。教師になったハリーの目は、むしろ波打ち際に注がれます。女の子が懸命に楼閣を築いています。熱心なハリーの視線にその子は照れますが、不登校のその子と意思の疎通がとりたいハリーは、つかず離れず距離を置いてその子の仕事を見守ります。
以上、映画「ハリーとトント」のあらすじと結末でした。
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