ひかりごけの紹介:1992年日本映画。戦時中に起きた食人事件を題材にした武田泰淳の短編小説を映画化した作品。真冬の極限状態の中、洞窟に取り残された船員達に起こった悲劇がスリリングに描かれていく人間ドラマです。
監督:熊井啓 出演者:三國連太郎(船長・校長先生)、奥田瑛二(西川)、田中邦衛(八蔵)、杉本哲太(五助)、内藤武敏(作家)
映画「ひかりごけ」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「ひかりごけ」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「ひかりごけ」解説
この解説記事には映画「ひかりごけ」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
ひかりごけのネタバレあらすじ:起
1991年の秋。ある作家が取材のため知床半島を訪れます。地元の中学校校長に案内されてやってきたのは、天然記念物であるひかりごけが群生している洞窟でした。苔が美しく光る光景に感動した作家に、校長は戦時中に起きたある出来事を語り出します。戦時中の昭和18年の知床半島。小樽に向かうある部隊の船が悪天候により座礁します。船には7人の船員が乗っていましたが、生き残ったのは船長ただ一人でした。洞窟の中で三ヶ月間生き延びたという船長でしたが、真冬の洞窟周辺には食料などありません。やがて海岸で木箱に詰められた船員の人骨が発見されたことから、船長は船員を殺して人肉を食料としていたのではないかという疑惑を持たれはじめます。船長の気持ちが分かると語る校長とともに、作家もこの事件の謎に強く引き寄せられていくのでした。
ひかりごけのネタバレあらすじ:承
実際にはこの時洞窟にたどり着いた船員は四人、寒さと空腹に耐える過酷な日々を過ごしていました。番屋と呼ばれる海沿いの小屋から見つかったマッチと僅かな食料だけが頼りです。考えることといえば食べ物のことばかり、そんな中若い船員の五助が徐々に衰弱していきます。やがて五助が息を引き取ると、洞窟の外は一面流氷に覆われてしまいます。空腹に耐えかねた三人は、生き延びるために五助の遺体を食べるべきか葛藤しはじめます。やがて屍肉を食べてでも生きて帰ることが使命だと考える船長によって、遺体が解体されていきます。船長に続いて船員の西川も屍肉を食べはじめますが、気の優しい八蔵だけはどうしても口にすることができないのでした。やがて八蔵の身体が弱りはじめると、西川は屍肉を食べたことを深く後悔します。八蔵には西川の背後に緑色の光の輪が見えると言います。八蔵は屍肉を食べた者には首の後ろにひかりごけと呼ばれる光の輪が出るという古い言い伝えを信じているのでした。西川は次第に罪の意識に苛まれていきますが、船長は八蔵が死ねば屍肉を食べることになるだろうと、淡々と彼に告げるのでした。大晦日の夜、八蔵は残してきた家族のことを思いながら静かに息を引き取ります。
ひかりごけのネタバレあらすじ:転
それから一ヶ月後、寒さはますます厳しさを増し、唯一の食料であった八蔵の屍肉も尽きます。船長は五助や八蔵の骨を丁寧に洗い、木箱に詰めて墓を建ててやります。しかし食料が尽きた今、次に食べられるのは自分ではないかと西川は恐怖に駆られているのでした。殺されることを危惧した西川は、外に這い出そうとして船長に止められます。そして船長を殺そうとおぼつかない足で槍を振り回しはじめます。命の危険を感じた船長は、咄嗟に鋭く尖った氷柱を手に握って身構えます。しかし次の瞬間衰弱により立っていられなくなった西川が、ふらふらと船長の胸に倒れ込みます。その時運悪く氷柱の先端が腹に突き刺さり、 西川は死亡してしまうのでした。こうして一人となった船長でしたが、やがて彼にも洞窟一面に輝くひかりごけがみえるようになるのでした。
ひかりごけの結末
人肉を食べた容疑及び西川を殺害した容疑で、船長は裁判にかけられます。しかし船長には人肉を食べたことへの反省が見られません。さらに検事に対してこの一年何の肉を食べきたのかと質問し法廷を混乱させます。そして人肉を食べたことのない検事に裁かれたところで、本当に裁かれた気持ちにはなれないと淡々と語り出します。不可解な言動を繰り返す船長に対して傍聴している遺族からは怒号が飛び交いますが、やがて空襲警報が鳴り出し裁判は休廷となります。気が付けば一人洞窟の中に佇んでいる船長の胸に、三人の船員と過ごした日々がよみがえってきます。船長は洞窟へ入ってきた裁判官や弁護士、大勢の傍聴人に対して、自分の首の後ろにある光の輪をよく見てくれと懇願します。その様子を西川や五助、八蔵も見守っています。やがて船長はひかりごけが輝く洞窟の奥深くへと吸い込まれるように消えていくのでした。
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