“アイデンティティー”の紹介:2003年アメリカ映画。豪雨の夜に偶然集まった11人の男女が何者かに殺されていく恐怖を描いた話と、多重人格障害を持つ死刑囚の再審理の話が同時に展開されるサスペンス映画。最後の最後で衝撃的な展開が待ち受けるストーリーは多くの映画ファンを驚かせ、今現在でも評価が高い作品である。「バック・トゥ・ザ・フューチャー」などで知られるアラン・シルヴェストリが音楽を手掛けた。
監督:ジェームズ・マンゴールド 出演者:ジョン・キューザック(エド)、レイ・リオッタ(ロード)、アマンダ・ピート(パリス)、ジョン・ホークス(ラリー)、プルイット・テイラー・ヴィンス(マルコム・リバース) ほか
映画「“アイデンティティー”」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「“アイデンティティー”」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「“アイデンティティー”」解説
この解説記事には映画「“アイデンティティー”」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
“アイデンティティー”のネタバレあらすじ:起
1998年5月10日。とあるアパートの住人6人が殺害される事件が発生し、マルコム・リバース(プルイット・テイラー・ヴィンス)が殺人の容疑で逮捕されます。この日は彼の誕生日でした。彼は死刑を宣告されますが、執行前日に再審理が決まります。所変わって、ある雨の日の夜。モーテルに交通事故を起こした加害者のエド(ジョン・キューザック)が、被害者のアリスを運び込んできます。アリスの再婚した夫であるジョージは、前夫から暴力を振るわれていた幼い息子ティモシーを連れています。エドは病院へ電話をかけようとしますが、豪雨の影響で繋がらず、救急車を呼ぶために車を走らせます。その途中、車が動かず立ち往生していた売春婦のパリス(アマンダ・ピート)に助けを求められたエドは、彼女を車に乗せますが、道路が水浸しでどこにも行くことができません。そこへ車に乗ったルーとジニーのカップルがやって来て、4人は仕方なくモーテルに戻ります。その後、連続殺人犯の囚人を移送している警察官ロード(レイ・リオッタ)が一晩泊めてほしいとモーテルの支配人であるラリー(ジョン・ホークス)に頼みこんできました。
“アイデンティティー”のネタバレあらすじ:承
エドはアリスの傷口を縫合し、手当てをします。その時、異様な物音に気付いたエドが洗濯室へ行くと、彼が専属運転手を務めている女優のキャロラインの無残な死体が洗濯機の中で転がっていました。エドは彼女の衣類に、囚人が監禁されているはずの10号室の鍵があることに気付き、ラリーとロードを連れて10号室に行くと、囚人は既に逃げた後で、集まった住人らはパニック状態に陥ります。特にジニーが取り乱してしまい、ルーは必死に慰めようとしますが、上手くいきません。遂に喧嘩になってしまい、ジニーは部屋のトイレにこもりますが、戸を隔てたそこにいるはずのルーが何者かに殺されてしまいます。その後、囚人は結局エドとロードによって捕まり、ラリーが彼の見張りをすることになります。ルーの殺害現場の証拠写真を撮るエドはパリスに、自分は元刑事で、自殺した人を救えなかった過去を打ち明けますが、ルーの手に9号室の鍵があることに気付きます。そしてラリーが目を離した隙に、今度は囚人がラリーのバットで殺されてしまいます。そこには8号室の鍵がありました。
“アイデンティティー”のネタバレあらすじ:転
ラリーは、キャロラインが亡くなった後、彼女の財布を盗んだことを告白し、自分は誰も殺していないと訴えますが信じてもらえません。ラリーはパリスを人質に取り、エドらを脅しますが、その騒動の最中にある凍死体が見つかります。ラリーは車で逃げようとしますが、ティモシーをかばったジョージを轢いてしまいます。別の場所ではマルコムの弁護士や医師、判事が集まっており、マルコムが多重人格の持ち主で、罪の自覚が一切ないことを話していました。そこにマルコムがやって来ます。ラリーはかつて、モーテルの真の支配人が既に亡くなっているのを発見し、死体を腐らせないよう冷凍庫に入れ、勝手にオーナーをしていたことを打ち明けます。エドの介抱もむなしく、アリスが亡くなりますが、そこには6号室の鍵が落ちていました。一行がジョージの遺体を探ると、7号室の鍵が見つかり、一同は困惑します。エドはパリスに、ティモシーとジニーを連れて車でここを出るよう言い渡し、先にティモシーとジニーが車に乗り込みますが、突如車が爆発し、2人は亡くなってしまいます。
“アイデンティティー”の結末
エドらは、爆発した車を消火しますが、ティモシーやジニーの死体がありません。確認のためにそれぞれの殺害現場へと向かいますが、全員の死体が消えていました。エドは、全員の誕生日が同じ5月10日であること、全員の名字がアメリカの州の名前であることに気付きます。その直後、エドは弁護士や医者のいる部屋にいました。エドは医師から、事件のことと、自分が実際には存在せず、マルコムが生み出した複数の人格のうちの一つであることを知らされます。その殺人犯の人格が他の人格を減らしていることを悟ったエドは、マルコムの体を支配している殺人犯の人格を消滅させれば、彼の死刑が中止になると告げられ、意識がモーテルに戻ります。パリスはロードが実は死刑囚だったことを知ってしまい、ロードはラリーを拳銃で撃ち殺し、パリスを追いかけます。エドはロードが殺人犯だと思い込み、激闘の末に彼を殺害しますが、ロードによって深手を負ってしまい、パリスに看取られ、帰らぬ人となります。パリスの人格のみが残ったマルコムは、判事に疾患を認められ、死刑を免れ入院することになります。パリスは売春婦をやめ、故郷フロリダに戻って果樹園を開き、新たな日々を満喫していました。ある日、地面の土を掘った彼女は1号室の鍵を見つけ、目の前にティモシーが現れます。なんと真の殺人犯の人格はティモシーだったのです。彼はパリスを殺し、再びマルコムの体を乗っ取り、現実世界の医師らを手に掛けるのでした。
「“アイデンティティー”」感想・レビュー
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登場人物である11人の男女は最初から役柄が明確に決まっている。「女優・運転手・刑事・囚人・カップル・売春婦・夫婦と児童・モーテルの経営者」など。それぞれのキャラクターの役割がはっきりしている点がこの作品の最大のカギなのである。一人の男が生み出した架空の人物であるから、それぞれのキャラに線引きや区画をする必要がある。そうでなければ多重人格の成立と多重人格の維持が困難になるからだ。解離性同一性障害に罹患している死刑囚のマルコムが生み出す幾多の妄想、或いは悪夢または幻想。夢の中では誰もがヒーローになれるし、オールマイティーに対応できるスーパーマンでもある。この映画の奇想天外で奔放な面白さはマルコムの壮大な妄想(夢物語)に集約することが出来る。登場する11人の男女全てのキャラの過去と履歴がマルコム一人に重なり合っている。これこそが正に多重人格そのものなのである。屈強な中年男性の内面においても幼児や乙女や母親などの要素が含まれているのだ。精神医学や深層心理の研究分野ではこれは珍しいことではない。そしてマルコムは瞬時に人格が入れ替わる重度な精神病患者なのである。【さてこの作品のプロットは】嵐の夜に辺境の地で予期せぬアクシデントに見舞われる男女。期せずしてチープなモーテルに怪しげなカップルや売春婦などが一堂に会する。二転三転する先が読みにくい筋書きと意味深な伏線の数々など。これだけでもう十分であろう。面白い映画の要素がテンコ盛りなのだから。ジョン・キューザックにレイ・リオッタなどの性格俳優を始め、魅力に富んだ女優陣が花を添えている。更に自動車事故で瀕死の重傷を負って横たわるお母さん。薄暗い休憩所で急場の施術を見守るギャラリーたち。売春婦パリスの扇情的な肢体とコスチューム。このように、何とも猟奇的で不健全なエロティシズムがモーテルをすっぽりと覆っている。映画のプロットも雰囲気も状況設定もキャラクターも俳優女優も何もかもが最高だ。他人が紡ぎ出す映画と言う偉大なる妄想(夢)は、それが例え悪夢であっても蜜の味わいがするのである。「アイデンティティー」は高級なワインの様に複雑でゴージャスなテイストが堪らない。「アイデンティティー」は上質なスリラー映画であり秀逸なホラー映画であり最高のサイコサスペンス映画なのである。
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面白かった~
人格同士の殺し合いなので実際に起こった事ではないから子供には無理そうなこともできたのか。
実は刑事じゃないとか支配人じゃないとかが明らかになって誰も信じれないストーリーで引き込まれた
最初は見知らぬ男女11人が事件に巻き込まれたのだと思って映画を見ていました。しかし次第にそれが違うとわかってくるのです。なんとその男女11人は、多重人格障害を持つ死刑囚の男性の中にいる人たちだったのでした。