非現実の王国で ヘンリー・ダーガーの謎の紹介:2004年アメリカ映画。現代ポップアートの世界に一石を投じたヘンリー・ダーガーの作品群。作者の半生追い、リンクする非現実の王国の成り立ちを探る。
監督:ジェシカ・ユー 出演:ヘンリー・ダーガー(写真) 声の出演:ラリー・パイン、ダコタ・ファニング、ほか
映画「非現実の王国で ヘンリーダーガーの謎」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「非現実の王国で ヘンリーダーガーの謎」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
非現実の王国で ヘンリーダーガーの予告編 動画
映画「非現実の王国で ヘンリーダーガーの謎」解説
この解説記事には映画「非現実の王国で ヘンリーダーガーの謎」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
非現実の王国で ヘンリーダーガーの謎のネタバレあらすじ:起・発見された謎の作品
1973年に他界したとある男性のアパートの部屋から、日記と自伝、おそらく世界最長のの小説、数百枚に及ぶ三メートルはある絵などの作品群が見つかった。生前の本人写真はたったの三枚。隣人たちの印象は、陰が薄い、貧しい、引きこもり等まちまち。ヘンリー・ダーガーと呼ぶ人もいればダージャーと呼ぶ人もいた。小柄な彼は手先が器用で、第一次大戦時の長いコートを自分で繕って着ていた。
ダーガーは作品の世界を非現実の王国と名付け、子供奴隷の反乱を描いた。そこに描かれた事柄は、彼の実体験に基づくところが多い。
非現実の王国で ヘンリーダーガーの謎のネタバレあらすじ:承・執筆に至るまで
ダーガーは、1892年にシカゴで生まれ、仕立屋の父親と暮らしていた。クリスマスに絵本をくれる父親に新聞の読み方を教わり、学校へ上がるとすぐに飛び級をした。しかし学校では意見を抑圧された。八歳の時、父親が身体を壊し、救貧院へ入り、そこから学校に通った。彼は勉強熱心だったが周りに馴染めず、異常者として退学されられた。
これらの出来事から、大人に抑圧される子供奴隷の発想が生まれた。
知的障害の検査を受け、遠いイリノイ知的障碍児保護施設に送られ、農場での重労働の間に父親は亡くなった。
もう一度シカゴを見たい一心で、脱走しシカゴへ徒歩で向かった。しかし帰る場所の無い彼は、十七歳で聖ジョセフ病院の清掃人の仕事に就いた。
彼は童話に安らぎを見出し、1909年、自ら物語を書く事に着手した。絵の描き方は誰にも教わらず、切り抜きを組み合わせ、コピーや、トレースを駆使し、本からの引用もし、頭の中のイメージを取り出すためにはなんでもした。
非現実の王国で ヘンリーダーガーの謎のネタバレあらすじ:転・ダーガーの戦争
1917年、ダーガーは一次大戦に徴兵されたが目の悪さを理由に除隊した。
彼の終の棲家となったアパートの大家夫人は彼を、周囲と関係が持てず人と距離を置いていた孤独な人とも、他人は存在しないとも評する。
想像の王国では何事も風変わりで、少女達は万能で、両性具有のように描かれ、裸でも気にしないが、その姿で縛り付けられる様子は、体罰の記憶がそうさせるのか、少女は生贄のようにも見える。そんな彼は毎日欠かさずミサに通っていた。
彼が子供と触れ合う所を見た者はいなかったが、子供に愛情を注ぎ、教会に養子縁組を願い出たが却下された。
切り抜きを集めスケッチをした。40年代には写真の引き伸ばしを覚え、作品に納得がいくようになると、自らキャンバスを作り、自分で技法を考え、膨大な数の絵を描いた。
ダーガーは、子供の頃の記憶が彼を引きこもらせ、世渡りがうまくないだけで、仕事に通い自活していたので、世間でいう狂人ではない。しかし彼の言う事には虚実が入り乱れていた。
暴力の記憶から、子供達の虐殺の場面も描いたが、彼の怒った所を見た物はいなかった。彼は人には当たらず、物に当たっていた。そして、時に神は味方かと疑った。
非現実の王国で ヘンリーダーガーの謎の結末:現実と非現実
ある少女の写真を失くしたヘンリーは嘆願書など手を尽くし、三ヵ月執筆をしないと言う誓いも立てたが、見つからなかった事で、想像の中では自由でも、現実では何一つ願通りにはならないと言う事を認識した。彼は生涯、神と格闘したが、信仰は捨てなかった。ミサに行くことを止めた事もあったが、結局改心した。彼は信仰ゆえに疲れ、神に対して傲慢な人に怒った。
大量の作品群は家族、テレビ、ラジオもなく、睡眠さえ削り作成した。73歳までカトリック系の病院で下働きをしていたが、強制引退させられ、望まずできた時間に蒐集し書き物をした。養子がもらえない代わりに大家の犬だけは名前で呼び可愛がった。
貧困の彼を、家賃の値下げや隣人からの食事が支えたが、彼の視力は限界になっていた。
物語は終わりを迎え、少女達は敵を追い詰め改心させた。しかしまた別の結末を次のページに書き記した。
1972年に救貧院へ入所した途端、彼は衰弱した。部屋を出ることは、世界が消えるのと同義だった。彼の作品群を発見した隣人たちが見舞いで褒めたが、彼は手遅れだと言うだけで、翌年亡くなった。
誰も見出さなかったダーガーは、貧しかったが、精神的に豊かな人生を送った永遠に謎の人物として記憶された。ラーナー夫妻は作品を公開し、触発されたアートも生まれた。そして、2000年に彼の部屋は取り壊された。
以上、映画「非現実の王国で ヘンリー・ダーガーの謎」のあらすじと結末でした。
非現実の王国で ヘンリーダーガーのレビュー・考察:ダーガーだけ王国
ダーガーが、誰かに見せるために作品を作っていたようには思えない。しかし、創作に駆り立てるだけの『何か』が、あったのだと思う。子供時代の記憶に言及されているが、何か机上の少女達に愛情を注ぐように、作品を作り上げていたように思える。彼にとって作品群は自分の精神そのものだろう。部屋から出る事は信心深い彼にとって、精神と肉体の乖離による恐怖と絶望だったのだと思う。
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