イップ・マン 完結(原題:葉問4)の紹介:2019年中国,香港映画。中国拳法「詠春拳」の達人であり、ブルース・リーの師匠としても知られる伝説の武術家イップ・マンの生涯を監督:ウィルソン・イップ、主演:ドニー・イェンのコンビで描いた第4作にして最終章です。晩年を迎え、人生最後の大勝負に臨むイップ・マンの姿を、ブルース・リーとの師弟の絆、思春期を迎えた我が子との関係、今なお尾を引く人種差別問題などを絡めて描きます。中国市場では同時期に公開された『スター・ウォーズ/エピソード9 スカイウォーカーの夜明け』との首位争いを制するなど興行面でも批評面でも高い評価を受け、シリーズ最大のヒット作となりました。
監督:ウィルソン・イップ 出演者:ドニー・イェン(イップ・マン)、ウー・ユエ(ワン・ゾンホア)、ヴァネス・ウー(ハートマン・ウー)、チャン・クォックワン(ブルース・リー)、スコット・アドキンス(バートン・ゲッデズ)、クリス・コリンズ(コリン・フレイター)、ケント・チェン(ファット・ポー刑事)、ヴァンダ・マーグラフ(ルオナン)、ヘイ・イェ(イップ・チン)、サイモン・シヤンバ(ビリー)、ヌゴ・カーニン(リャン・ゲン)、ロー・マング(ロー・チュンティン)、グレース・エングレルト(ベッキー・ウォルターズ)、アンドリュー・レーン(アンドリュー・ウォルターズ)、ほか
映画「イップ・マン 完結」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「イップ・マン 完結」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
イップ・マン 完結の予告編 動画
映画「イップ・マン 完結」解説
この解説記事には映画「イップ・マン 完結」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
イップマン完結のネタバレあらすじ:起
1964年。アメリカ・サンフランシスコでは国際空手道大会が開かれていました。中国武術「詠春拳(えいしゅんけん)」の師範であるイップ・マン(ドニー・イェン)はかつての弟子であり、シアトルで「截拳道(ジークンドー)」を創始したブルース・リー(チャン・クォックワン)の試合を観戦していました。
この1ヶ月前、香港。イップ・マンは医師から初期の喉頭癌を患っているとの診断を受けました。喉頭がんは進行が早く、イップ・マンは禁煙と癌の進行を遅らせる化学療法を勧められました。イップ・マンの脳裏には、数年前に亡くした妻ウィンシン(リン・ホン)の姿が浮かんでいました。
ある日、イップ・マンが営む道場にひとりの黒人男性がやってきました。男は「やり方が違うぞ」とイップ・マンの弟子たちにいちゃもんをつけましたが、現れたイップ・マンに一蹴されました。男はブルース・リーのアメリカでの弟子ビリー(サイモン・シヤンバ)であり、ブルース・リーが出場するサンフランシスコの空手大会の招待状と航空券を渡してきました。しかし、弟子たちに自らの病を隠しているイップ・マンは「私は行けない」と断りました。
その頃、イップ・マンの次男チン(ヘイ・イェ)は素行不良を理由に退学を通告され、学校に呼び出されたイップ・マンは担任からチンの海外留学を勧められました。喧嘩沙汰で怪我をしたチンの手当てをした医師はイップ・マンの知人の息子ミン(ジム・リュー)であり、ミンもまた海外留学から帰ってきたことを知ったイップ・マンは意を決してチンをサンフランシスコに留学させることを決意しました。ブルース・リーの応援も兼ねてチンの留学先を探すことにしたイップ・マンは、チンを友人のファット・ポー刑事(ケント・チェン)に預けてアメリカへと飛びました。
サンフランシスコに降り立ったイップ・マンは7年前からこの街に勤務している知人の新聞記者リャン・ゲン(ヌゴ・カーニン)の出迎えを受けました。チンがサンフランシスコの学校に留学するためにはチャイナタウンにある中華総会からの推薦状が必要であり、イップ・マンはリャンの車で中華総会へと向かいました。
イップ・マンはここで旧友のロー・チュンティン師匠(ロー・マング)と再会を果たし、ロー師匠とリャンから中華総会のメンバーである様々な中国武術の師範たちを紹介されました。中華総会の会長で「太極拳」の師範であるワン・ゾンホア(ウー・ユエ)は、ブルース・リーが中国人以外にカンフーを教えることを禁じているチャイナタウンの掟を破っており、英語の武術指南書まで出していることを指摘してこの問題を解決したら紹介状を出してやってもいいと告げてきました。
ロー師匠以外の他の師範たちもブルース・リーを問題視しており、イップ・マンはブルース・リーを「彼はただ武術を広めたいだけだ。私は賛成する」と庇ってワン会長の要求を突っぱねました。
イップマン完結のネタバレあらすじ:承
当時のサンフランシスコは中国からの移民に対する偏見があり、留学するためにはどうしても中華総会からの推薦状が必要でした。リャンはアメリカ人の知人を頼ることにし、ホテルに着いたイップ・マンは国際電話でポー刑事に電話をかけましたが、反抗期真っ只中のチンは父からの電話に出ることはありませんでした。
翌日。ワンは娘ルオナン(ヴァンダ・マーグラフ)に太極拳を指導していました。現地の学校に通うルオナンは現地の名門私立学校・サリバン高校のチアリーディング部に所属しており、ワンはルオナンを中秋節の祭の舞台に出場させようと考えていました。
その頃、リャンはイップ・マンを伴って知人に掛け合ってみましたが、知人はチャイナタウンは不法入国者ばかりだとの偏見を持っており、交渉は決裂してしまいました。(場面は冒頭の空手大会に戻り)イップ・マンは大会で見事な演武を魅せたブルース・リーとレストランで落ち合いました。
イップ・マンから相談を受けたブルース・リーは弟子に弁護士がいることを明かして協力を約束、イップ・マンに弟子たちを紹介しました。弟子の中にはアメリカ海兵隊に属する中国系移民のハートマン・ウー二等軍曹(ヴァネス・ウー)がおり、ハートアンは海兵隊にも中国拳法を導入したいと考えていました。
その時、レストランに空手大会に出場した白人の選手たちが殴り込んできました。白人たちはブルース・リーやハートマンに「中国拳法など茶番だ」と因縁をつけ、ブルース・リーはイップ・マンに「師匠、よくあることです」と告げると瞬く間に白人選手たちを圧倒、白人たちの師匠である空手有段者のコリン・フレイター(クリス・コリンズ)の挑戦にも巧みなヌンチャク捌きを魅せつけるなどして退けました。
イップ・マンはブルース・リーの弟子の弁護士から推薦状を書いてもらい、サリバン高校を訪れました。しかし、校長(リンダ・ジーン・バリー)はあくまでも中華総会の推薦状でなければ留学は受け入れられないと首を縦に振らず、留学を許可する条件として1万ドルを払って賛助会の役員になることを提案してきました。
イップ・マンが校長と掛け合っているちょうどその頃、ルオナンはチアリーディングの才能を買われて新しいリーダーに任命されていました。しかし、チア部のメンバーである白人至上主義者のベッキー・ウォルターズ(グレース・エングレルト)は決してルオナンを認めず、取り巻きを引き連れてルオナンに執拗ないじめを加えていました。ルオナンはベッキーにハサミで髪の毛を切られ、咄嗟にベッキーを蹴りつけて怪我を負わせました。
偶然にもその場に居合わせたイップ・マンはベッキーと取り巻きたちを撃退、ルオナンの危機を救いました。ルオナンはイップ・マンに髪の毛を整えてもらい、怪我を負ったイップ・マンの手当てのために彼を自宅へ案内しました。その際、イップ・マンはワンもまた中国人を不平等に扱う白人社会を嫌っていること、同胞を守るために中華総会を結成したことを知りました。その頃、ベッキーは母・ガブリエル(ニコラ・スチュアート・ヒル)に「あの中国人(ルオナン)に襲われた」と告げ口していました。
ルオナンは助けてもらったお礼に、ワンにチンのための推薦状を書いてほしいと頼みました。しかし、ルオナンが白人たちと喧嘩をしたことを見抜いたワンは白人への憤りを露わにし、白人たちとの対話こそが重要だとするイップ・マンの意見を一蹴すると「推薦状のために娘を利用するな。君の力量を見せてもらおう」と勝負を申し入れてきました。イップ・マンの詠春拳とワンの太極拳は真っ向からぶつかり合い、イップ・マンは腕の怪我というハンデこそあれど両者は互角の戦いを繰り広げました。
その時、サンフランシスコを大きな地震が襲い、両者は勝負を中断せざるを得ませんでした。イップ・マンは部屋に「萬姓同來共一宗(姓は異なっても、全ての人類は兄弟である)」 と書かれた掛け軸を目にしました。ワンは「勝負は中秋節の祭の日までお預けだ」と持ちかけ、イップ・マンは「勝ち負けはそんなに大事なのか? 中国武術を使って偏見と闘うべきではないのか。推薦状は不要だ」と返してその場を後にしました。ホテルに戻ったイップ・マンは再び香港のポー刑事に電話をかけましたが、チンは相変わらず父と向き合おうとはしませんでした。
イップマン完結のネタバレあらすじ:転
サンフランシスコのアメリカ海兵隊基地では、白人至上主義者である教官のバートン・ゲッデズ一等軍曹(スコット・アドキンス)と部外教官のコリンが厳しい指導を化していました。この日も黒人兵士を激しく罵倒していたバートンは訓練に中国武術を取り入れようとしているハートマンを決して認めず、コリンとの勝負に勝ったら認めてやると持ちかけました。
ハートマンはコリンとの勝負に敗れてしまい、バートンは罰として中国系海兵隊員に対してより一層厳しいいじめまがいの訓練を課しました。ハートマンが基地に持ち込んだ木人樁(練習台)はバートンによって燃やされてしまいました。
その頃、イップ・マンは喉の不調に苛まれていました。イップ・マンの滞在するホテルを訪れたルオナンは精巧に作った偽者の推薦状を持ってきましたが、イップ・マンは「最近の子たちは事の重大さが分かっていない」と偽推薦状を破り捨てました。イップ・マンはワンが自分を認めてくれないと愚痴をこぼすルオナンの姿に自分自身とチンの関係を重ね合わせ、ルオナンに中秋節の祭でチアリーディングを披露してはどうかと提案しました。ルオナンは大変喜び、イップ・マンにもぜひ来てほしいと頼みました。
その頃、ワシントンからベッキーの父・アンドリュー(アンドリュー・レーン)が帰宅してきました。移民局の職員であるアンドリューはガブリエルから「中国人を追い出して」とせがまれ、チャイナタウンと中華総会を潰すことを約束しました。
一方、ハートマンは軍の上官に師匠ブルース・リーの演武のフィルムを見せるなどしてアピールを続けており、上官から好感触を得ていました。上官はハートマンにチャイナタウンの調査を命じましたが、これを快く思わないバートンはコリンに「空手こそが最強の格闘技だということを思い知らせてやれ」と告げました。
中秋節の祭の夜。チャイナタウンは大賑わいを見せ、イップ・マンもルオナンとの約束通りに姿を現しました。ハートマンは祭の様子をカメラに収め、ルオナンもチアガールの衣装に身を包んで待機していました。その頃、ワンは未だに祭会場に姿を見せず、執務室で仕事に追われていました。ワンはイップ・マン宛てに手紙をしたためていましたが、そこにアンドリューが移民局の役人たちを引き連れて現れ、不法入国者の件と称してワンの身柄を拘束してしまいました。移民局で働くビリーは驚きを隠せませんでした。
その頃、祭会場では中華総会の師範たちの教え子たちによる演武が披露されていました。そこにコリンが手下たちを引き連れて乱入、中国人たちを腰抜けと罵ると、ブーイングにも全く動じずに3枚重ねのコンクリート板を軽々と叩き割って挑発してきました。コリンの無礼な態度に怒った師範たちは次々とコリンに勝負を挑みましたが、全く歯が立たずに叩きのめされていきました。
イップ・マンは黙って見過ごすわけにはいかず、戦いに乱入するとコリンを完膚なきまでに叩きのめしました。ハートマンはその様子をフィルムに収めていきました。イップ・マンはルオナンやチャイナタウンの人々から喝采を受け、敗れたコリンは手下たちに担がれて退散していきました。その直後、ルオナンはワンが拘束されたことを知り、イップ・マンやリャンと共に移民局へ向かいました。
その頃、アンドリューの取り調べを受けていたワンは「これは罠だ!」と訴えましたが、アンドリューは不敵な笑みを浮かべながら「これから今夜中に中華総会の全員を逮捕する。君も総会も終わりだ」と勝ち誇りました。指示を受けたビリーは「バカげてる」と反対しましたが上司に一蹴されました。
イップマン完結の結末
コリンの敗北を知ったバートンは「カンフー野郎に復讐してやる」と単身で行動を開始しました。一方、移民局に到着したイップ・マンやルオナンたちはビリーから中華総会が襲撃されるとの情報を聞きました。
その頃、中華総会の本部に戻ってきた師範たちでしたが、未だにイップ・マンを認めようとはしませんでした。ルオナンの知人はこっそりとロー師匠に電話をかけ、逃げるよう促しましたが、空手の有段者であるバートンは単身で中華総会に殴り込むと次々と師範たちを叩きのめし、師範の一人からワンの居場所を聞き出しました。
中華総会に駆けつけたイップ・マンは、ロー師匠からバートンが自分に復讐したがっていることを知らされました。移民局の役人たちが中華総会に突入した時には既にもぬけの殻であり、ビリーは師範たちが逃げ延びたことに安堵しました。イップ・マンは師範たちをブルース・リーの道場に匿ったのです。
移民局に乗り込んだバートンは軍の特権を振りかざして職員を脅し、ワンに「奴ら(中華総会の師範たち)は全員ぶちのめした。次はお前の番だ。俺と戦え」と申し入れてきました。その話を聞いていたルオナンはワンの元に駆け込み、アンドリューにワンを解放してくれるよう跪いて懇願しましたが、ワンは「奴らに跪くな。お前が正しかった。我慢する必要などない」とルオナンに告げると、毅然とした態度でバートンの勝負を受けて立ちました。
海兵隊基地に戻ったバートンはハートマンを含む隊員全員を招集、目の前でワンとの勝負に臨むことにしました。ハートマンはワンに戦う必要はないと制止しますが、ワンは「ここで退いたら中国人ではない」と告げて戦いに臨みました。最初のうちはワンが押していましたが、次第にバートンのパワーに押されていき、足の骨をへし折られてしまいました。「止めて下さい」と懇願するハートマンの声にワンはなおも誇り高く立ち上がろうとしましたが、遂にはとどめの一撃を受けて倒れ込んでしまいました。
その頃、ブルース・リーの道場では、師範たちは自分たちを迫害するアメリカに対して憤りを露わにしていました。師範たちはブルース・リーに和解を申し入れ、ブルース・リーは「過去は水に流そう」と受け入れました。イップ・マンは同胞同士が助け合うことの重要さを説いているところに道場にハートマンから電話がかかってきました。
重傷を負ったワンは病院に搬送され、見舞いに訪れたイップ・マンはある決意を固めました。イップ・マンは香港に電話をかけ、ポー刑事からチンが稽古に励んでいることを聞くと、自らの身が癌に侵されていることを打ち明けました。ポー刑事から促されたチンはようやく受話器を手に取り、思わず涙ぐみました。イップ・マンは用事が終わったら帰国すると伝えました。
イップ・マンは「私は武闘家だ。不正義と戦う義務がある。君のチアリーディングと同じで止めることはできない」とルオナンに伝え、ハートマンに案内されて海兵隊基地に乗り込みました。その頃、バートンは隊員たちを前に「アメリカは選ばれしものの国だ。劣等民族には勝ち目がないことを証明してやったのだ」と演説ぶっていました。そこにハートマンがイップ・マンを連れて現れ、イップ・マンはバートンとの1対1の勝負に臨みました。
イップ・マンはバートンのパワーを受け流し、怪我を負いながらも毅然とした態度を貫き通して戦い続けましたが、バートンの一撃の前にダウンしてしまいました。バートンはイップ・マンを侮辱しながら勝ち誇りましたが、倒れてもなお立ち上がるイップ・マンの不屈の姿勢は徐々に隊員や上官たちの心を揺さぶっていきました。激しい死闘の末、イップ・マンの一撃がバートンに炸裂、イップ・マンは戦いに勝利しました。隊員たちはハートマンに促されてイップ・マンを称え、そこにはもはや人種の壁などありませんでした。
イップ・マンは退院したワンから推薦状を受け取りました。しかし、イップ・マンは「隣の芝はやはり青くはなかった」とチンの留学を取りやめる意思を伝え、二人は談笑しながら茶を酌み交わしました。ルオナンから土産物をもらったイップ・マンは香港に帰国、チンは父に「やっぱり留学には行きたくない。カンフーがしたい」と意思を伝えました。イップ・マンは「大切なのは己に自信を持つことだ」と伝えてチンに稽古をつけ、自ら手本として木人樁に打ち込む姿をチンに撮影させました。それはイップ・マンが歩んできた道のりを次世代に残すということでもありました。
1972年12月2日、イップ・マンは79年の生涯に幕を下ろしました。葬儀の場には、香港に凱旋して世界的なスターとなったブルース・リーの姿がありました。アメリカ海兵隊が中国武術を正式な必須課程としたのは、イップ・マンの死後から数十年が経った2001年のことでした。
以上、映画「イップ・マン 完結」のあらすじと結末でした。
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