風の女王の紹介:1938年日本映画。昭和10年代のオフィス風景と恋愛を描いて、当時としては最先端らしき風俗が背景を彩ります。若い男女につきものの感情の揺れ、そしてサクセスストーリーも。『風の女王』とはどんな意味なのか。主演は三宅邦子、その妹役に高杉早苗、佐野周二が青年重役、いつになく悪役を演じる笠智衆の演技が光ります。
監督:佐々木康 出演者:三宅邦子(松永由紀子)、高杉早苗(妹・布枝)、佐野周二(福井五郎)、笠智衆(三瀬)、森川まさみ(横田多恵子)ほか
映画「風の女王」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「風の女王」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「風の女王」解説
この解説記事には映画「風の女王」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
風の女王のネタバレあらすじ:起
化粧品会社に勤める松永由紀子は、休暇でスキー場へ遊びに来ています。ホテルから眺める雄大な景色に感嘆する由紀子。同僚の横田多恵子は反対に、人間社会で過ごすことの楽しさと恋愛を語ります。ふたりとも、同じ会社の独身男性、三瀬が好みなのだと語ります。
東京に戻った由紀子と多恵子は三瀬を食事に誘います。ところが多恵子はその日、急用ができ、三瀬と由紀子のふたりきりになります。食事の席で三瀬が由紀子にプロポーズします。由紀子は何も答えずに含み笑いしています。由紀子は、両親と妹の四人家族です。経済的な負担をカバーしている彼女は、家族のことが気がかりです。
食事を終えて家へ帰ると、会社の福井専務から由紀子宛に速達が届いています。福井は社長の甥として将来を約束されている青年です。三瀬は、福井には警戒しろと由紀子に釘を刺していました。妻がありながら横田多恵子と関係を持っている。ならばと、由紀子は妹の布枝を護衛役として、福井の指定した店へ向かいます。
福井は「アナタを研修員としてパリへ派遣したい」と熱心に由紀子を誘います。しかし三瀬の忠告を信じる由紀子は「ウラがあるのでは」と疑います。「近々、会社を辞めるつもりでいます」と断る由紀子。福井は「何もそんなに急がなくても」と慌てますが、由紀子は福井を「いやらしい男」としてしか見ていません。
風の女王のネタバレあらすじ:承
妹の布枝は、由紀子の対応が不満です。布枝は、由紀子に三瀬からプロポーズがあったことは知りません。そのため、姉がチャンスを棒に振る意味が分かりません。豪華な暮らしを夢見る布枝にとって、パリは憧れの地です。理由はともあれ、姉に巡ってきたチャンスをみすみす逃す手はないと、布枝は考えます。
三瀬によれば、「福井はいやらしい男」。その男を袖にした由紀子。三瀬との間に親しさが増した由紀子はある夜、三瀬の部屋を訪れます。三瀬は関係を迫りますが、由紀子は拒否します。追いすがる三瀬を振り切った由紀子は、福井ばかりでなく男はみんないやらしい奴ばかりだと決めつけて男性不信に陥ります。
福井をモノにすると意気込む布枝は、福井に電話をかけ、誘い出すことに成功すると、「愛人にしろ」とけしかけます。福井も、おもしろい娘さん、と気軽につき合っていましたが、日増しに布枝の要求が大胆になります。家出をし、高級ホテルの一室へ呼び出し、宿泊費の支払いを命じます。いよいよ布枝の本性が現れてきます。
風の女王のネタバレあらすじ:転
男性不信の由紀子は、布枝について福井が何を言い訳しても「アナタが悪い」の一点張りです。布枝は、といえば、素知らぬ風で口笛を吹いています。福井が「じつはアナタを愛している」と由紀子への思いを口にしますが、布枝に振り回されている福井が由紀子には厭わしく、由紀子はさらに反感を募らせます。
ある夜、布枝を連れ歩く福井を目撃した三瀬が、翌朝早く福井を訪ねてきます。三瀬は、横田多恵子をパリへ派遣しろ、さもないと松永由紀子の妹のことが奥さんに知れるぞ、と重役の福井を脅します。本命の由紀子に逃げられた三瀬は、二番手の多恵子を押し上げて出世をはかろうとの魂胆です。
その夜、三瀬は自室で横田多恵子に酌をさせています。三瀬が盛んに「パリだよ、パリ」と多恵子をけしかけています。そこへ福井が三瀬へ談判に現れます。「あたしはいま立ち寄っただけで・・・」と慌てる多恵子に、福井は「分かっていますよ」と言い残し、翌朝ふたりを呼び出します。社内恋愛は禁じているはずだと、福井はふたりを「解雇」します。
風の女王の結末
福井から多くの恩恵を受けている布枝。由紀子の妹として大切に保護され、物質的にも不自由がありません。しかし布枝は不満です。なぜなら福井にとって布枝は、姉の由紀子をつなぎとめておくための手段でしかないからです。だから福井は代償を求めません。その福井の本心が布枝の心を苛みます。
観光地の旅館へ行方をくらませた布枝は、東京へ電話をかけ福井の迎えを待ちます。男女の関係を望む布枝は押しの一手です。風雨の最中、深夜に駆けつけた福井には、引き返す術がありません。布枝の思いのまま追い詰められた福井は、これだけはと抑えていた男女の一線を越えてしまいます。
自らの意思の弱さと不甲斐なさとに絶望した福井は、翌朝早く海へ身を投げます。それでも姉妹の時間は速やかに経過します。由紀子がパリへ発つ日、船室の入口では由紀子が大勢の人に囲まれています。やがてドラが鳴ると、両親、布枝、会社役員、同僚が由紀子を見送ります。
船が岸を離れたあとも、布枝だけがひとり桟橋へ残って、いつまでも由紀子を見送っています。
以上、映画「風の女王」のあらすじと結末でした。
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