キクとイサムの紹介:1959年日本映画。会津の山村に祖母と暮らす、アメリカ軍黒人兵士と日本人との間の混血児姉弟の物語。姉弟を演じるのは一般の小学生だった二人。綿密な調査の上で本作を書いた脚本家・水木洋子が今井正監督に推薦した高橋恵美子が圧倒的な存在感を見せる。ばあちゃんを演じるのは当時48歳の北林谷栄。第33回キネマ旬報ベスト・テン第1位。
監督:今井正 出演者:高橋恵美子(キク)、奥の山ジョージ(イサム)、北林谷栄(しげばあちゃん)、滝沢修(カメラの男)、宮口精二(病院院長)ほか
映画「キクとイサム」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「キクとイサム」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「キクとイサム」解説
この解説記事には映画「キクとイサム」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
キクとイサムのネタバレあらすじ:起・混血の兄弟
キクは小学六年生の女子、体は人一倍大きい。体育が得意で男の子もかなわない。弟のイサムは四年生でいたずら好きだ。しげばあちゃんは胸の病で死んだ娘(二人の母親)に代わって孫を育ててきた。農家で養蚕が主たる収入源だ。
ある日、ばあちゃんは野菜籠を背負ったキクを連れて町へ行った。病院に行き、野菜を売った金で腰痛の診察を受けるためだ。だが、街中でも病院の待合室でもキクは人々の好奇の目にさらされる。ばあちゃんはそれを気に病んでキクだけ先に帰す。
ばあちゃんの二人の孫が噂の混血児だと知った院長は、キクかイサムかどちらか一人でもアメリカの家庭へ養子に出す方がいいとばあちゃんに勧める。院長には養子縁組を仲介する組織の心当てがあった。
だが、ばあちゃんはその日かかる薬代の高さを聞いて病院から逃げてしまう。薬の代わりにキクの下駄とイサムの野球帽を買ってばあちゃんは遅く帰る。
キクとイサムのネタバレあらすじ:承・カメラの男
カメラを首に下げた男が村へ現れ、仲間と川で魚を獲っていたイサムに声をかけて写真を撮る。キクの写真も撮ろうとするがキクは逃げてしまい、男はばあちゃんにキクの写真がないか尋ねる。
男は混血児を養子縁組する組織の人だった。70歳近いばあちゃんは、自分が死んだ後の孫の身の上を考えて養子に出すのもいいかと思ったが、キクはいやだった。
キクとイサムのネタバレあらすじ:転・イサムを見送る
教室でふざけて先生に廊下に立たされたイサムは、いっしょに立たされた友達から「黒んぼ」と言われる。喧嘩になり、先生は友達を、注意するために別の部屋に連れていく。
となりの清二郎夫妻に連れられて、キク、イサム、ばあちゃんは町に祭り見物に出かける。高い柱に張ったロープをつかった曲芸に皆夢中になっていたが気がつくとイサムがいない。イサムをさがすキクはまたも人々の好奇の目にさらされる。
イサムはというと、友達にそそのかされて曲芸の柱を登っている。大騒ぎになってしまい、キクたちはやはり好奇の視線にさらされながら帰ることになる。
帰宅すると、ばあちゃん宛てに届いていた手紙を母屋のばあさんが預かっていた。清二郎に手紙を読ませると、それはイサムがアメリカの黒人の農園主の家の養子になることが決まったと言う通知だった。
イサムは大人たちが話すのを聞いて単純にアメリカに行けると喜ぶが、大人たちは喧々諤々。母屋のばあさんはイサムが父親の国に引き取られるのは至極もっともだと言う。清二郎の奥さんはアメリカの金持ちに引き取られれば差別もされなくて幸せになれると考える。だが、清二郎はアメリカの黒人差別を心配する。
イサムの出発の日が来た。プラットフォームまでキク、ばあちゃん、隣の奥さん、先生が見送りに来てくれた。カメラの男に連れられて、学生服のイサムは混血児たちの乗る車両に乗りこむ。
キクは寂しさをこらえて、いつものキクらしく弟に舌を出して見せる。イサムは、行くのはいやだと急に言い出し走り出した汽車を降りようとし、カメラの男がイサムをおさえなければならなかったが、キクは、弟を乗せて駅を遠ざかる汽車を見送ることになる。
キクとイサムの結末:キクの未来
冬、母屋の赤ん坊の子守をしていたキクは小学生たちに「売れ残り」とはやされ、赤ん坊をオート三輪の荷台に乗せて喧嘩を始める。さらに不登校のキクを心配して来た先生と話をしているうちにオート三輪が町へ向けて出発してしまった。
行方不明の赤ん坊に村は大騒ぎになる。キクがオート三輪に赤ん坊を置いたことを思い出して無事赤ん坊は発見されるが、駐在さんはキクが悪意で赤ん坊を放っておいたのではないかと疑い、いざとなれば混血児専門の施設に行かせると言う。
母屋のばあさんはキクを尼寺にやれと言う。ばあちゃんにも叱られたキクは、顔が黒くて太っている自分は確かに嫁にいけないのではと心配する。
夜明け、キクが家にいないので、ばあちゃんが納屋を見に行くと、キクは首つり自殺に失敗したところだった。うずくまるキクの足に血がついている。初潮だった。もう、お前をどこにもやらないとばあちゃんはキクに約束し、一人前の百姓になれと言う。
学校の代わりにキクは、ばあちゃんといっしょに畑へ行く。登校する子供たちがからかっても自分はもう「年頃だから」と言ってキクは彼らをかまわず、ばあちゃんといっしょに歩きすぎていく。
以上、映画「キクとイサム」のあらすじと結末でした。
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