霧の旗の紹介:1965年日本映画。殺人罪で投獄された兄の無実を証明するために、東京の有名な弁護士に弁護を頼みに来た桐子でしたが、費用が払えないなら弁護は出来ないとあしらわれます。それでも何度も頼み込む桐子でしたが、弁護士の大塚は愛人と伊豆へ旅行に行ってしまいます。1年後、兄が獄中死したことで、桐子は大塚への復讐を始めました…という内容の松本清張原作、倍賞千恵子主演のサスペンス映画です。
監督:山田洋次 出演者:倍賞千恵子(柳田桐子)、滝沢修(大塚欽三)、露口茂(柳田正夫)、新珠三千代(河野径子)、川津祐介(杉田健一)、近藤洋介(阿部幸一)、内藤武敏(島田検事)ほか
映画「霧の旗」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「霧の旗」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「霧の旗」解説
この解説記事には映画「霧の旗」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
霧の旗のネタバレあらすじ:起
柳田桐子は熊本から列車で東京へ向かいます。大塚弁護士の事務所に着くと大塚弁護士に会います。大塚は事前に桐子が費用を払えない事を知りながら、話を聞きました。
桐子は「殺人罪で逮捕された兄の無実を証明してほしい」と言います。大塚は詳しい事を聞かず「費用が払えないならば弁護は出来ない」と答えます。それでも桐子は「日本でも有数の弁護士の大塚先生に助けてもらいたい」と何度も訴えます。そして相手にしない大塚に「兄が無実のまま死刑にされようとしてる」と言ってあきらめて帰ります。
東京駅で帰りの列車に乗ろうとした桐子は、あきらめきれず再び大塚の事務所に電話をします。しかし大塚は、愛人の径子と伊豆に行っていて不在でした。事務方に、頼み込みますが結局断られました。
この様子をそばで聞いていた雑誌記者の阿部が桐子を呼び止め、喫茶店で話を聞きます。しかし桐子は詳細を述べず喫茶店を出ました。熊本の地方紙を読みあさった阿部は、金貸しの老婆が撲殺され、柳田正夫が犯人として逮捕された事件を見つけます。阿部は編集長に、熊本の事件を調べたいと頼みますが却下されます。
霧の旗のネタバレあらすじ:承
1年後、大塚弁護士に桐子から手紙がきます。兄の正夫が公判中に獄中死した知らせでした。思い出せない大塚が事務方に聞くと、しつこかった桐子の事を思い出し、当時の弁護記録を取り寄せます。
小学校の教師をしていた正夫は、生徒から集めた修学旅行のお金を失くしてしまい、金貸しのキクに8万円借ります。取り立ての厳しいキクの家に正夫が行った時に、キクは頭部に2か所の打撃を受けて血を流して死んでいました。そして正夫の借用書がなくなっていて、正夫が血の付いたズボンを天井裏に隠していたことから、犯人として逮捕されました。いったん自白した正夫でしたが、検事には自白は強要されたもので、自分はやっていないと自白をひるがえしていました。
読み終えた大塚は、径子と食事をします。そして「自分が弁護しても判決は覆らなかっただろう」と言います。その時、近くのテーブルで、外国人の父親が左利きの子供に食事のマナーを教えているのを見て、あの事件の現場状況を思い浮かべます。そして状況証拠から犯人は左利きだとわかります。
阿部は同僚に連れられバーに入ります。ママさんが熊本出身とあって、ホステスも全員熊本出身でした。そこで桐子が働いていました。翌日、店が終わる時間に桐子を待ち伏せして、話を聞きます。阿部はママの弟の健一がバーの信子の彼氏で、径子の店で働いている事、その友人の山上が元プロ野球選手でサウスポーだったことなど、店で聞いたことをぶつけます。しかし何もしゃべらない桐子でした。
霧の旗のネタバレあらすじ:転
阿部は大塚に会います。そこで径子と健一、山上の話をします。山上が熊本出身でサウスポーだという事を知った大塚は、真犯人は山上ではと思い始めます。阿部は大塚が径子の離婚調停の弁護をやって以来、径子の店の顧問弁護士になっていることを不審に思います。桐子も大塚と径子が愛人関係であることを疑っていました。信子は健一に女がいると言い出し、桐子に健一の行動を見張ってくれと頼みます。
径子の店を出た健一は、裏通りを抜けて静かな一軒家に入ります。途中で健一と店によく来ていた山上に声をかけられます。一軒家を覗いていると径子がいました。径子は「私じゃない、すでに死んでいた」と慌てています。部屋では健一が血を流して死んでいました。そして径子は「あなたが証人になって!」と言って桐子の名前を聞き立ち去ります。桐子は落としていった径子の手袋を健一の側に落とし、落ちていたライターを持ち帰ります。
事情聴取で桐子は「径子なんて知らない」と言います。警察は邪魔になった恋人の健一を殺した罪で径子を逮捕し、大塚弁護士との不倫関係も暴露されます。径子は「健一の側に落ちていたライターの持ち主が犯人だと」言いますが、桐子は知らないの一点張りでした。
霧の旗の結末
阿部は桐子に会い「大塚への復讐はもういいだろう」と言います。桐子は「兄さんは死んでもう帰ってこない」と言います。大塚は径子の証言などから、健一を殺したのは山上だとにらみ、山上の落としたライターさえあれば径子が助けられることから、桐子に会いにバーに通い始めます。そして、ライターの事と、現場で見た真実を証言してくれと頼みます。
桐子は大塚をもてあそぶように、あしらいます。そして大塚が「径子の無実が認められれば、お兄さんの無実も証明できる」と言います。桐子は「兄は死んだけど、径子さんは生きている」と言います。それでも、しつこく頼み込む大塚は土下座しました。桐子は「わかった、ライターを渡し、証言もするから明日の夜、部屋に来てください」と言います。約束通り大塚がやって来ます。桐子は大塚に酒を出します。数杯飲ませた後、桐子は大塚に抱き着き「大塚さんの事が好き」と言って関係を持ちました。
島田検事に桐子から手紙が来ます。そこには大塚に偽証証言を強要され体を奪われた事が書かれていました。「デタラメだ」と言う大塚に、島田検事は「桐子の体内からあなたの精液が検出された医師の証明がある」と言います。そして島田検事は「立件しないためには弁護士を辞めることだ」と言い、大塚は納得します。兄の復讐が終わった桐子は、熊本へ帰る船から、海へライターを投げ込むのでした。
以上、映画「霧の旗」のあらすじと結末でした。
「霧の旗」感想・レビュー
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後味悪い!明らかに逆恨み!弁護士より普通は別にいた犯人の方が憎いはず…弁護士の愛人も巻き添えにされて気の毒!弁護士も社会的に抹殺されたも同然!九州に帰った桐子は歪んだ意味で女として強く、したたかな夜の女として生きてくんだろうな〜弁護士と愛人に気の毒さを残した後味悪さでした。
又、偶然に都合の良い条件があり過ぎ! -
松本清張原作の小説を映画化した、山田洋次監督の「霧の旗」は、山田洋次監督の演出の良さと、主演者の倍賞千恵子と滝沢修の力演が相まって、何度繰り返し観ても飽きない作品だ。
倍賞千恵子が、ヒロインの桐子に扮していて、桐子の兄が強盗殺人の犯人とされたが、無実を信じ、熊本から上京し、滝沢修扮する高名な大塚弁護士に、弁護を依頼しようとする。
しかし、大塚弁護士は、これを冷たく拒絶する。
弁護料の支払い能力がないという理由で——-。その後、兄は獄死し、桐子は大塚弁護士への復讐を決意する。
倍賞千恵子は、「男はつらいよ」シリーズでの演技がそうであるように、こういう庶民の娘を演じると、抜群にうまい。
この「霧の旗」では、復讐という意志力を必要とする役柄なのだが、それも、冷たい表情で完璧にこなしている。
桐子はバー「海草」に勤めていて、同僚のホステスから、恋人の杉田の監視を頼まれる。
杉田を尾行した桐子は、本郷のしもたやで、杉田が何者かに殺害された現場に遭遇する。偶然、居合わせた大塚弁護士の愛人・径子に、桐子は冷たい視線を注ぐ。
径子は、殺人犯として逮捕され、大塚弁護士の社会的な地位も危なくなる。径子の無実を証明する唯一の証拠品のライターは、桐子の手の中にある。
そして、桐子は巧みに、大塚弁護士と関係を結び、「暴行罪」として、彼を訴え、失脚させる。この非情とも思える桐子の人間像を、山田洋次監督は、実にうまく彫り上げていると思う。
新珠三千代さん、「私は貝になりたい」にも出演されてましたが、良い女優ですよね