吉祥天女の紹介:2006年日本映画。由以子のクラスの転校生小夜子は天女の羽衣を受け継ぐ旧家の娘。由以子は不思議な魅力を備えた小夜子とすぐ仲良くなる。しかし、彼女の周りには陰謀が渦巻いていた。吉田秋生の原作は『別冊少女コミック』に、1983年3月号から1984年7月号にかけて連載された。及川中監督の、鎌倉を舞台にした『ラヴァーズ・キス』に続く吉田秋生原作の映画化。
監督:及川中 出演者:鈴木杏(叶小夜子)、本仮屋ユイカ(麻井由以子)、勝地涼(遠野涼)、深水元基(遠野暁)、市川実日子(麻井鷹子)、津田寛治(小川雪政)、江波杏子(叶あき)、ほか
映画「吉祥天女」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「吉祥天女」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「吉祥天女」解説
この解説記事には映画「吉祥天女」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
吉祥天女のネタバレあらすじ:起・不思議な転校生
昭和45年春、金沢。高校の由以子のクラスに転校生叶小夜子が入ってくる。5歳まで住んでいたこの町に帰って来たと言う小夜子。彼女は隣の席になった由以子に「よろしくね、アサイさん」と声をかける。なぜ私の名前を知っているの?
放課後、能楽クラブに小夜子を勧誘した由以子と真理は、小夜子が、12年前に親戚に預けられて以来彼女を支えてきた小川雪政の運転する自動車で帰るのを見送る。
小夜子は、この一帯の土地を所有し、地上に降りた天女の末裔であるという伝説のある叶家の跡取り娘だった。病身の祖母・あきは、「叶家の女は幸せになれない」と言い、12年ぶりに祖母や両親のいる家にもどった孫の将来を心配している。
由以子たちと同じ学校の遠野暁の父・遠野一郎は、叶家に嫁いだ妹・浮子を使って、暁を佐夜子の婿にして、名家だが今は借金まみれの叶家の土地を横取りしようと画策していた。
由以子たちのクラスの遠野涼は7年前に両親が交通事故で死んで以来、病弱な妹・水絵と共に、いとこである暁の家に引き取られて暮らしていた。
ある日、由以子、真理、小夜子が、叶家ゆかりの天衣神社に行くと、暁の子分の大沢たち、不良に襲われる。だが、小夜子は一人で不良を一人残らずたたきのめしてしまう。
吉祥天女のネタバレあらすじ:承・天女の衣
由以子の姉・鷹子は京都の大学の美術学科にいるが、卒業論文のテーマを叶家の財宝にする。叶家を訪れた鷹子に雪政が応対する。叶家最高の名品は天女の衣だったが、それは叶家の長男・泰之(浮子の夫)の命を奪った12年前の天衣神社の火事で焼失したと言われていた。
天女の衣に触れた女は幸せになるが、触れた男には祟りがあると言い伝えられた血染めの衣である。叶家にいた天女は村の男たちに凌辱されてから姿を消したという説を雪政が紹介する。
由以子たちの学校の中等部を新設して、校舎を叶家の所有地に遠野建設が建てるという遠野家の野望の片棒をかついでいる小夜子たちの担任の根津は、スキャンダルを恐れて大沢たちの非行を表沙汰にしないように小夜子に頼むが、小夜子は学校で4年前自殺未遂事件を起こした女生徒は根津が暴行したのではという疑惑をちらつかせる。逆上した根津は校内で小夜子を追いかけて他の先生に取り抑えられる。
叶家では12年ぶりに帰ってきた小夜子のお披露目の茶会が開かれる。暁と涼を客とする茶席で小夜子は、暁と結婚する気はないと断言し、かえって暁は小夜子を自分のものにしようという気を起こす。
茶会に続いて能楽堂で能が披露される。演目は能楽クラブの夏の発表会と同じ「羽衣」。由以子と真理は喜ぶが、由以子は能を見ているうちに12年前の恐ろしい記憶が蘇る。
由似子は、女の子を幸せにすると姉から聞いた天女の羽衣を触りたいと願って行った天衣神社の本殿で、女の子が殺されるのを見た。神社は火事になったが女の子の死体は発見されなかった。でも血まみれの女の子を見殺しにして逃げたことが、由似子の心の重荷になっていた。小夜子の目はあの時の女の子の目に似ている。
遠野家を訪れた小夜子はベッドに寝ていた涼の妹・水絵と仲良くなる。そして涼とも親密になっていき、暁の嫉妬をかきたてる。
一方、叶家の蔵を見せてもらった鷹子はネクタイが蓋からはみ出している箱を見出す。その中には根津の死体があった。
吉祥天女のネタバレあらすじ:転・叶家と遠野家の因縁
小夜子の祖母・あきが突然死に、小夜子の母は落胆する。浮子、遠野一郎、彼らと手を組んでいる、小夜子の父の3人により直ちに暁と小夜子の婚約が決まる。暁と小夜子は肉体関係をもち、二人が寝室から出てくるのを見て涼は失望する。
姉の鷹子は夜、天衣神社の本殿に忍び込むが、彼女の背後に小夜子が現れる。鷹子は12年前の火事について小夜子に確認する。宮司である泰之は幼女をさらってはここで欲望を満たしていた。だが小夜子にもいたずらしようとして首を刺されてしまう。返り血を浴びた小夜子を幼い由似子が目撃する。その後、小夜子の祖母が神社に火をつけた。
そこまで話して小夜子は、これは作り話ですと言う。鷹子は彼女が調べた、遠野家は天女を犯したとされる男たちの末裔であるという話をする。
吉祥天女の結末:天女の復讐
叶家では陰謀の成就を小夜子の父と浮子が洋酒を開けて祝う。だが、小夜子の父が突然眠り込んでしまったところに小夜子が現れ、看病を担当していた浮子が薬をすり替えて祖母の死を早めたのではないかと問いただす。浮子は否定するが、雪政が野草から作ったと考えられる毒が効いて苦しみ始め、池に転落して死ぬ。
小夜子は続いて遠野家を訪れる。遠野一郎に「おじさまが狩りをしているのを見たい」とおねだりする。そこへ帰ってきた暁は二人の関係を疑ってナイフで父を刺し殺し、散弾銃をもって逃げる。
暁は涼を使って小夜子を海辺の別荘に呼んだ。暁が由似子を誘拐して人質にしたからだ。小夜子を守るために涼が遠野一郎の銃を構えるのを見た小夜子は、その銃で撃たないでと絶叫する。涼が引き金を引いたときに弾丸は彼の胸で炸裂する。小夜子が一郎を殺すために銃を細工していたのだった。
暁が小夜子を撃ち殺そうとするときに、自分で縛りを解いた由似子が暁にぶつかり、続いて小夜子に覆いかぶさる。その時、別荘を囲んだ警官隊の発砲が始まり、投降しなかった暁は命を落とす。
小夜子は母に見送られて再び叶家を去る。雪政の運転する自動車では小夜子の隣に身寄りをなくした水絵が座っていた。小夜子は由似子が自動車を追いかけるのに気づく。自動車を降りた小夜子は羽衣の切れ端を由似子に渡し、由似子はきっと幸せになれると言って去って行く。
走り去る自動車の中から花びらのような、羽衣の細かな切れ端が空に飛びだし、それは練習中の能楽クラブの女生徒たちや叶家所蔵品の調査を続ける鷹子の元に届いた。
以上、映画「吉祥天女」のあらすじと結末でした。
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