故郷の紹介:1972年日本映画。山田洋次監督が手がけた、『男はつらいよ』のキャストによる“民子三部作”の第2作となるヒューマンドラマです。高度経済成長期の瀬戸内海の小島を舞台に、時代の荒波に飲まれる砂利運搬業者とその家族の姿をドキュメンタリータッチで描きます。
監督:山田洋次 出演者:倍賞千恵子(石崎民子)、井川比佐志(石崎精一)、笠智衆(石崎仙造)、前田吟(石崎健次)、阿部百合子(石田和枝)、矢野宣(石田耕司)、田島令子(石崎保子)、伊藤千秋(石崎千秋)、伊藤まゆみ(石崎まゆみ)、渥美清(松下松太郎)ほか
映画「故郷(山田洋次監督)」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「故郷(山田洋次監督)」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
故郷の予告編 動画
映画「故郷(山田洋次監督)」解説
この解説記事には映画「故郷(山田洋次監督)」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
故郷のネタバレあらすじ:起
瀬戸内海に浮かぶ小島、倉橋島に住む石崎精一(井川比佐志)と妻の民子(倍賞千恵子)は古い小型の砂利運搬船「大和丸」で石を運ぶことで生計を立てていました。夫婦は決して裕福ではないものの、二人の娘・千秋(伊藤千秋)とまゆみ(伊藤まゆみ)、精一の父・仙造(笠智衆)とささやかな生活を送っていました。
仙造は移動車で鮮魚を売る精一の友人・松下松太郎(渥美清)や精一の姉・和枝(阿部百合子)と語り合い、精一の商売道具である大和丸は老朽化で近頃エンジンの調子が悪いことを嘆いていました。知り合いの同業者が立派な新造船に買い替えたとなれば余計自分たちの惨めさが身に沁みました。
精一の弟・健次(前田吟)もかつては兄と共に大和丸に乗っていましたが、今では船を降りて広島の工場で働いていました。ある日、健次は仕事中に怪我を負い、民子は見舞いのため広島に向かいました。健次はかつて好景気だった頃を懐かしみ、大和丸の老朽化や高騰する維持費を嘆き、大和丸の10倍は積載能力のある新造船を導入した同業者を羨ましがりました。「わしらみたいな工場務めが楽なちゅうわけじゃないけど、なんちゅうか時代の流れじゃけのう。大資本には勝てんのじゃ」
民子は和枝の夫・耕治(矢野宣)の知り合いで尾道・向島の造船所に転職した人がいると語り、精一にも造船所への転職を勧めたところ大喧嘩となったことを打ち明けました。
故郷のネタバレあらすじ:承
大雨の日、精一と民子はいつものように大和丸で仕事に向かいました。仙造はいつものように魚を届けに来た松下と語り合い、ますます悪化する天候にあの二人は大丈夫なのかと心配しました。松下は戦前は朝鮮に住んでおり、終戦後の引き上げ時に両親や妻を亡くしていました。その後、各地を転々として松下にとって倉橋島は非常に居心地のよい場所であり、松下はより良い稼ぎのために島を離れていく者が絶えないことに寂しさを感じていました。
やがて仕事を終えた精一と民子が帰ってきましたが、大和丸はまたしてもエンジントラブルを起こしていました。精一は船大工の棟梁に大和丸の修理を依頼しました。大和丸は既に耐用年数の10年を遥かに超えた19年目に突入しており、新造船に買い替えようにも金もないことから精一は騙しだまし大和丸を使い続けるしかありませんでしたが、棟梁はいくら修理しても1年も経たないうちにすぐ故障してしまうことから修理に難色を示しました。棟梁は自分の代で船大工の稼業を畳むことを決意しており、今後どうするかは民子とじっくり相談するよう勧めました。
和枝と耕治は精一に何度も転職を勧めますが、老いた父の面倒も見なければならないと責任感を感じる精一は断固として拒みました。精一は自分はこの船の船長だと言い張って聞く耳を持たず、機関長は民子だと主張する松下の声にも耳を傾けず、広島に移った健次を臆病者だと罵りました。
故郷のネタバレあらすじ:転
遂に資金繰りに行き詰った精一は結局尾道の造船所へ見学に行き、船を捨てて造船所で働く決意を固めました。精一は風邪を引いて寝込んでしまった松下を見舞いに行き、自分はこれから船長じゃなくて労働者になるのだと語りました。精一は船長として朝から晩まで働くよりも労働者としての方が稼ぎが良いと語り、松下は改めて島の抱える現実に心を痛めました。
大和丸の最後の航海の日。精一と民子はまゆみを連れていつものように仕事に出かけました。この日は幸いにも大和丸のエンジンの調子が良く、精一は民子にこの船は今日が最後だということを知っているのではないかと語りました。いつものように石材所で石を黙々と大和丸に積み込んだ精一と民子は、船を操舵しながらこれまでのことを思い出していました。民子が苦労して機関士の免許を取った日のこと、新婚当時の健次夫妻と共に船で宮島の管弦祭まで行った時のことなど…。
民子は仙造から自分のことは心配しなくていいと言われていました。仙造はまだまだ身体は動くし、近くに和枝夫妻もいるので大丈夫だと民子に伝えると、まだ幼い千秋を連れて島の山の頂上に登り、この島はこれまで先祖代々から住んできた島であることを伝えました。仙造は千秋に尾道へ行ったら度々は帰れなくなるから今のうちにこの光景を見ておくよう諭しました。
故郷の結末
仕事を終えて島へ戻る精一と民子は、途中の鹿島灘で廃船が燃やされているのを見、この大和丸もやがてあの廃船と同じ運命を辿るのだろうと思うと感慨深くなりました。二人はやはりこの仕事を続けたかったけれども時代の大きな流れには逆らえないのかと思うと涙が込み上げてきました。
そして翌日、精一と民子一家が尾道へ旅立つ時がやってきました。松下をはじめ島の人々が大勢精一一家を見送りに訪れ、松下は別れの紙テープを島民たちに渡すと精一に餞別を渡しました。精一は島民たちにこれまでの恩は決して忘れないと挨拶、島に残る仙造のことをよろしく頼むと告げて連絡船に乗り込みました。
誰もが涙をこらえるなか、島に残りたいと涙する千秋も民子に連れられて船に乗り、精一と民子は見送りの人たちが見えなくなるまで手を振り続けました。
以上、映画「故郷」のあらすじと結末でした。
「故郷(山田洋次監督)」感想・レビュー
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また、倍賞千恵子の船から岩を下す作業手つきの自然さが凄い、相当訓練したんでしょうね。
ラストで千秋がおじいちゃんと離れたくない描写が、辛いですよね。
私も昔のことを思い出し、改めておじいちゃんと限られた時間を過ごそうと思いました。