こおろぎの紹介:2006年日本映画。青山真治監督が手掛けた長編作品。静岡県西伊豆を舞台に、鈴木京香や山崎努らが共演したミステリアスな物語。主人公のかおるは、ある山奥で盲目で口のきけない男と二人で暮らしていた。暮らしていると言うよりは、飼っていると言ったほうがいいような二人の関係で…。
監督:青山真治 出演者:鈴木京香(かおる)、 山崎努(男)、 安藤政信(タイチ)、 伊藤歩(レイコ)、 光石研(不動産屋)、 斎藤陽一郎(植木屋)、 尾野真千子、 小澤征悦、ほか
映画「こおろぎ」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「こおろぎ」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
こおろぎの予告編 動画
映画「こおろぎ」解説
この解説記事には映画「こおろぎ」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
こおろぎのネタバレあらすじ:起
1620年、ポルトガル人宣教師ベネディクト・フェルナンデスは、伊豆に教会を開いた。10年もたたず、幕府はキリスト教徒の弾圧を開始。1633年、フェルナンデスは長崎で殉教した。
静岡県西伊豆の山間に、盲目で口のきけない老人の男(山崎努)と暮らしている中年女性のかおる(鈴木京香)。かおるは一日中男に付き添い、彼の身の回りの世話をしています。
男と食卓を共にするかおるは、男が皿に顔を近づけそのままむさぼり食う様子をうれしそうに眺めます。彼女は男を見つめて、「自分なしではこの男は生きていけないのだ…」と優越感を感じ、まるで男を飼っているような感覚でいるのでした。
夜はいつも男とソファーで寄り添います。その時に、男から体のにおいを嗅がれてくすぐったくなったかおるは、笑って男から逃げようとしました。ふと、かおるが男の顔を見ると、彼は真顔でじっと見つめてきます。しかも彼の目はまるで空洞で、男の目に魅了されるかおるは、自分のことを恐ろしく感じているのでした。
ある日、一人で港へ買い物に出掛けたかおるは、軽快な音楽に導かれるように、ある一軒のバーに足を踏み入れます。そこでジンジャーエールを注文するかおる。かおるが周りを見わらすと、じっとかおるを見つめる男・タイチ(安藤政信)がいました。かおるは気になりながらも、そのまま家へと帰ってきました。
家に入ると男がかおるの帰りを待ちわびていたように、においを嗅ごうとします。そして不機嫌になる男。しばらくすると男が、車の音がするとかおるに無言で伝えます。かおるは「植木屋さんじゃない?」と言いますが、男は気になるようで、そのまま玄関からかおるの靴を片方履いて外へ出て行きます。
そしてポーチの階段に座る男。男はいつも持ち歩いている瓶に入ったヒマワリの種を食べ始めると、近くにタバコの吸い殻とマッチを見つけます。使用済みのマッチの香りを嗅いで、男は嫌な顔をするのでした。
その夜、かおるはベッドで横になりながら、男にバーの話をしました。そして「いるだけで、匂いが染みついてしまうのね…」と、かおるは男にすり寄ります。
こおろぎのネタバレあらすじ:承
翌朝、かおるが目を覚ますと男はいません。男は一人で白杖を使って山道を散歩していました。しかし力尽きた男が橋の真ん中で座り込んでいるところに、かおるがやってきます。しばらく橋の真ん中で二人は座り、その後バーへ行くことにしました。
男はビールを注文し、かおるはジンジャーエールを注文します。するとタイチが近づいてきました。そして無理やりかおるの手を握るタイチ。かおるが嫌がると、タイチはかおるの手を強く握って自分のほうに引き寄せます。すると男はかおるが近くにいないことに不安になり、しゃがみ込んでしまいました。
かおるは男に「私はここにいるわよ。」と声を掛けますが、男はかおるの手のにおいをかいで後ずさりし、そのまま店を一人で出て行ってしまいました。かおるは男を追いかけて、車に乗せて一緒に帰ることにします。
するとタイチが自転車に乗って車の前に立ちはだかり、かおるはまともと運転をすることができません。イライラしてクラクションを鳴らすかおるの肩に、そっと手を乗せる男。しばらくするとタイチは道をあけ、かおるはようやく家へ帰ることができました。
翌日、植木屋が木を切っていると、突然男が倒れてしまいます。医師は食後に薬を飲ませるよう言って帰っていきますが、男の容体はとても悪そうです。夕食も食べず、かおるが無理に口に料理を入れても食べようとしません。
かおるは「私が嫌な女だと思っているんでしょ!」怒りを爆発させると、男はいつものように料理を口に運びはじめました。しかし食べたものをすべて男は嘔吐してしまい、かおるは窓を開けてじっと外を見つめるのでした。
翌日、男は一人海の周りを歩いていました。海に入った男は、座り込みじっと何時間も動きません。夜になってもずっと座っている男は、急に月に向かって両手をあげて、何か会話している様子で笑顔になるのでした。
こおろぎのネタバレあらすじ:転
翌朝、タイチは「いいものを見せてやる!それに男の居場所も知っている。」と言って、いつも一緒にいる女の子・レイコ(伊藤歩)も連れて山奥にある洞窟にかおるを連れて行きます。洞窟の途中まで連れていかれて、もっと暗い奥へ行くよう促されるかおる。かおるが手をのばし進んでいくと、そこにはミイラ化した何かがありました。
びっくりしたかおるが洞窟の奥から出てくると、タイチは猟銃を抱えて獲物を追いかけ、どこかへ行ってしまいます。かおるが混乱していると、レイコがこの地が隠れキリシタンがいた場所だと教えてくれました。
大昔、この地に宣教師だと嘘をつき日本へやって来た商人たちがいました。彼らのことを宣教師だと思い、敬って初めはかくまっていた村人ですが、役人たちが怖くなり最後には村人は宣教師たちを殺害してしまいます。その死体を船に火をつけて沈めたのですが、その年に津波が来て村は全滅。祟りだと噂が広まり、洞窟を作って弔うことにしました。
かおるは続きの話をきこうとしますが、レイコはなぜか走ってどこかへ行ってしまいます。しかたなくかおるが家へ戻ろうとすると、道に迷ってしまい山の中をさまよい歩くこととなります。
そこへ、鳥を仕留めたタイチが現れました。かおるは「全部嘘なんでしょ…」と問い詰めると、「全部嘘だ…」と笑うタイチ。かおるは男の居場所を問います。するとタイチから「あんたの家にいるよ。」と言われ、かおるは急いで家に戻りました。すると、そこにはベッドで横たわる男がいました。
こおろぎの結末
翌日、かおるが目を覚ますと男は息を引き取っていました。動かない男を見て、かおるは男がいなければ自分もいないのだと初めて気がつきます。男のいない家に、ただ一人呆然と立ち尽くすかおる。
夜になり、タイチとレイコがかおるを励ますために友人を集めたパーティーを開いてくれました。タイチは「大丈夫、そのうち男は帰ってくるから。」と言います。それを聞いてかおるは男のベッドへ行き、男の香に包まれることで、ようやく安心して眠りにつけるのでした。
翌日、タイチやレイコと共に海へ行きます。この日、海から本物の宣教師の遺骨が引き上げられました。記念に三人で写真を撮り、レイコから「洞窟にあるのは実は偽物で、こっちが本物。」と教えられます。かおるは訳が分からなくなり、ボーっとしながら歩き始めると、海に白杖が浮かんでいるのが見えました。そしてかおるが振り返ると、レイコがトラックにひかれてしまいます。
ショックでかおるは気を失ってしまい、病院に運ばれました。目覚めたかおるは、看護師に「トラックでひかれた女の子は大丈夫でしたか?」と尋ねます。すると看護士が、「そんな子いませんよ…」と答えました。3人でとった写真には、レイコの姿はなく、かおるとタイチの二人だけが写っているのでした。
一年後、かおるがタクシーからおりると、そこには男がいました。「ごめんなさい…」とつぶやくかおるは、自分にはこの男しかおらず、男がいないと生きていけないのだとようやく気がつくのでした。朝食をナイフとフォークを使って食べる男を見て、かおるは洞窟へと車を走らせます。そして、マッチを使って洞窟の奥を照らすかおるがいました。
一方その頃、かおると男が暮らしていた家を内見する夫婦がいました。夫はうれしそうに不動産屋の男(光石研)と家の中にそそくさと入っていきますが、妻は別荘の二階のポーチに男が座っているのが見えて、奇妙な顔をするのでした。
以上、映画「こおろぎ」のあらすじと結末でした。
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