狂った果実の紹介:1956年日本映画。石原慎太郎が原作の同名小説を自らの脚本と弟・石原裕次郎の主演で映画化した作品です。夏の逗子海岸を舞台に、対照的な人生を歩む兄弟が魅惑的な美女との出会いを機に人生を狂わせていく姿が描かれています。
監督:中平康 出演者:石原裕次郎(滝島夏久)、津川雅彦(滝島春次)、北原三枝(天草恵梨)、岡田眞澄(平沢フランク)、ハロルド・コンウェイ(恵梨の夫)ほか
映画「狂った果実」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「狂った果実」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
狂った果実の予告編 動画
映画「狂った果実」解説
この解説記事には映画「狂った果実」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
狂った果実のネタバレあらすじ:起
鎌倉に住む滝島夏久(石原裕次郎)とその弟・春次(津川雅彦)は電車に乗って真夏の逗子駅にやってきました。逞しい体格を持つやんちゃなプレイボーイの夏久に対して、華著な体格の春次は純真で、まだ女を知らない童貞でした。駅の階段で、春次は天草恵梨(北原三枝)という美しい女性とすれ違い、胸をときめかせてしまいます。その後、兄弟は現地に住む夏久の友人・平沢(岡田眞澄)の家を訪れると、そこには夏久の悪友たちも集まっていました。煙草を吸いながら暇を持て余す夏久に真面目な春次は反発心を覚えますが、友人たちは一週間後にここでダンスパーティーを開いて、それぞれとびっきりの美女をつかまえて同伴させて競わせてみてはと提案します。
狂った果実のネタバレあらすじ:承
その翌々日、夏久は春次にモーターボートを操縦させて水上スキーに興じていると、偶然にも先日逗子駅で見かけた恵梨が泳いでいるところに出くわします。二人は恵梨をボートに乗せ、一色海岸まで送ってあげます。その夜、平沢らと遊びに出かけた夏久は、平沢と道子(東谷暎子)が地元の若者ら(石原慎太郎、長門裕之)に絡まれているのを見てひと騒動を起こしてしまいます。その数日後、再び落ち合った春次と恵梨は海辺で遊び、春次は彼女をパーティーに誘います。
狂った果実のネタバレあらすじ:転
ダンスパーティーの当日、春次はカクテルドレスを身にまとった恵梨を伴って現われ、夏久らを大いに驚かせます。パーティーを抜け出た春次と恵梨は平沢の車を無断で借りて海岸まで走り、春次は恵梨と生まれて初めてのキスをして強く抱きしめます。その1週間後、夏久は平沢や仲間たちと横浜のナイトクラブに行き、そこで外国人と踊っている恵梨の姿を見つけます。恵梨と鉢合わせした夏久は彼女から事情を聞くと、実は恵梨は外国人の夫(ハロルド・コンウェイ)を持つ既婚者であり、春次とは遊びの関係だったのです。夏久は春次にそのことを内緒にすることを条件に恵梨と熱いキスを交わし、兄弟と恵梨は知らず知らずのうちに、恵梨の夫をも巻き込んだ四角関係に陥っていきます。
狂った果実の結末
互いに恵梨に想いを寄せるようになった夏久と春次は、事情を隠したまま次第に仲違いをするようになっていました。平沢はそんな兄弟の姿に、薄々事情を感じ取っていました。春次は恵梨と一夜を共に過ごし、キャンプに行く約束をしますが、夏久は恵梨を無理やりボートに乗せて沖に出てしまいます。とうとう平沢から兄と恵梨の関係を聞かされてしまった春次はモーターボートを駆り、必死で二人の後を追います。夏久らのヨットに追い付いた春次はひたすら周囲を旋回しはじめ、耐え切れなくなった夏久は俺の負けだと言い、恵梨はヨットから海に飛び込んで春次の元に泳いでいきました。ところが春次はボートで恵梨を撥ね、さらには夏久の乗るヨットに追突して大破させ、夏久を海に突き落とします。春次は涙を流しながら、ボートを海の彼方へと走らせていきました。
以上、映画「狂った果実」のあらすじと結末でした。
「狂った果実」感想・レビュー
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弟の彼女を奪ったら仕返しされるよと言うお話かな・・・
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この中平康監督の日活映画「狂った果実」は、「太陽の季節」で芥川賞を受賞した石原慎太郎の、太陽族モノの第2弾。
公開当時、台頭しつつあった戦後世代の倦怠感を見事に切り取り、太陽族映画、即不良映画という烙印を押されながらも興行的には大ヒットした作品で、わずか23日で撮り上げた強行撮影にもかかわらず、カメラ・アングル、編集の巧みさで、印象的な映像を作り上げていると思う。
とにかく、この作品は、日本のある時代の青春の残酷さを鮮烈に描いた、青春映画の傑作であり、主演の石原裕次郎の存在は常に際立っていたし、1950年代後半から1960年代にかけての日本の青春のシンボルは、石原裕次郎であったということを、再認識させる作品でもある。
原作・脚本は、裕次郎の実兄の石原慎太郎で、ブルジョワ学生の残酷さみたいなものが、非常によく出ていたと思う。
感動的な映画であることは疑う余地はないが、この青春像に対しては、ある種の違和感、反発を感じる人もかなりいると思う。
失礼ながら、昔の日本にこんなにお洒落でかっこいい映画があったんだ!と驚いた作品です。まるでフランスのヌーヴェル・ヴァーグのトリュフォー作品みたい!と思ったらトリュフォーはこの作品を観て痛く感激して作品創りの参考にしたとか。私はこれを観ていて、「突然炎のごとく」を思い出しましたが、実際は「いとこ同志」がこの作品のオマージュのようです。純粋な人を傷つけると一番怖いよ~ということを教えてくれる映画です。相手がおとなしいから優しいからと言って、調子にのってはいけないよと世の人に言いたいです。女の子達のファッションも50年代ファッションでかわいいです。