向かいの窓の紹介:2003年イタリア,イギリス,トルコ,ポルトガル映画。許されぬ恋に揺れる女性と、記憶を失くした老人との心の交流を描くドラマ作品。ジョヴァンナは菓子職人を夢見つつも、生活に追われ忙しい日々を過ごしていた。人の良過ぎる夫と2人の子どもに囲まれ、苛立つことばかりの毎日。そんな彼女の密かな楽しみは、向かいのアパートに住む青年ロレンツォを窓からこっそり覗き見することだった。ある日、夫フィリッポが記憶を失くして町をさまよっていた老人シモーネを家に連れ帰って来る。はじめは激怒したジョヴァンナだったが、シモーネがきっかけとなりロレンツォとの距離が急速に縮まっていった。許されない恋に揺れるジョヴァンナの心に、シモーネの言葉が静かに染み渡っていく。イタリアの名優マッシモ・ジロッティの遺作ともなった作品。
監督:フェルザン・オズペテク 出演:ジョヴァンナ・メッツォジョルノ(ジョヴァンナ)、マッシモ・ジロッティ(シモーネ/ダヴィデ・ヴェローリ)、ラウル・ボヴァ(ロレンツォ)、フィリッポ・ニグロ(フィリッポ)、セルラ・ユルマズ(エミネー)ほか
映画「向かいの窓」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「向かいの窓」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
向かいの窓の予告編 動画
映画「向かいの窓」解説
この解説記事には映画「向かいの窓」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
向かいの窓のネタバレあらすじ:記憶喪失の老人
舞台は現代のイタリア、ローマ。アパートで夫フィリッポと2人の子どもに囲まれて暮らす女性ジョヴァンナは、冴えない毎日に苛立ちを感じていました。リストラの憂き目に遭ったフィリッポは、少ない稼ぎの夜勤に出ています。
2人の子どもは生意気盛り。同じアパートの住人達とは、互いに子どもを預け合って協力しています。ジョヴァンナは菓子職人になるのが夢でしたが、生活に追われ鶏肉工場で経理を担当していました。
そんなある日、買い物帰りに口論していたジョヴァンナとフィリッポは、道端で所在なさげに立ち竦む老人を発見します。彼は身なりも良く金も持っていましたが、自分が何者かさえ覚えていないようでした。人の良いフィリッポは気の毒がり、嫌がるジョヴァンナを押し切って老人を車に乗せます。
ジョヴァンナを自宅アパート前で降ろしたフィリッポは警察に向かいますが、道が混んでいたという理由で老人を家に連れ帰って来てしまいました。ジョヴァンナは激怒して追い出そうとしますが、老人が眠ってしまったため泊めるしかありません。
老人は本当に何も覚えていないようですが、熱心に名を尋ねると「シモーネ」とだけ答えました。苛立つジョヴァンナの密かな楽しみは、向かいのアパートに住む青年ロレンツォを覗き見することです。窓際に立って彼を見つめる時だけ、ジョヴァンナの心は安らぎました。
向かいの窓のネタバレあらすじ:シモーネの謎と思いがけない接近
翌朝。ジョヴァンナは今日こそシモーネを追い出すようフィリッポに念を押して出勤しました。しかし帰宅するとシモーネはまだ家にいて、フィリッポと子ども達は彼にプレゼントされたゲームで遊んでいます。苛立ちながらもジョヴァンナはケーキ作りに取り掛かりました。小遣い稼ぎで、週に2回友人の店に納品しているのです。
シモーネはその手際をじっと見ていました。ジョヴァンナは、本当は菓子職人になりたかったこと、しかし金が無く家族もいて、もう若くない自分が見習いから出発など出来ないことをこぼします。シモーネはケーキ作りのアドバイスを口にしました。その的確さに、ジョヴァンナは少し驚きます。
その後ジョヴァンナはシモーネを車に乗せて警察へ向かいました。途中で友人の店にケーキを納入します。その時、思いがけず現れたロレンツォに声をかけられました。彼はシモーネが奇妙なことを言って、フラフラ歩いて行ってしまったと話します。ジョヴァンナは動揺を押し殺しながらシモーネのことを説明し、2人で探し回りました。
間もなくシモーネは見つかりましたが、どうにも落ち着かない様子です。その間に、ジョヴァンナとロレンツォは互いのことを話しました。ロレンツォは独身の銀行員で、もうすぐ支店長に昇進するそうです。すると突然シモーネが歩き出しました。
ジョヴァンナ達が追いかけると、彼は呉服店のシャッターを叩きながら膝を着いています。そのあまりに深い悲しみの様子に、ジョヴァンナは結局シモーネを家に連れ帰ったのでした。
向かいの窓のネタバレあらすじ:シモーネの手紙
ジョヴァンナはシモーネの体を洗ってやろうとして、彼の腕に押された数字の焼き印に気付きました。彼はどうやらユダヤ人で、強制収容所にいたことがあるようです。ジョヴァンナは電話でシモーネの様子をロレンツォに報告しました。ロレンツォによると、シモーネは誰かと勘違いした様子で愛を告白してきたそうです。誰と勘違いしていたのかは、ロレンツォには見当も付きませんでした。
翌朝。ジョヴァンナのシモーネへの態度はかなり軟化していました。シモーネの上着をクリーニングに出したジョヴァンナは、ポケットに手紙が入っていたことを知ります。その後ロレンツォと会い、昨夜の呉服店へ行ってみることにしました。歩きながら話していると、ロレンツォも窓からジョヴァンナを見ていたと言い出します。そして自分が見られていたことにも気付いていました。
動揺を隠しつつ呉服店を訪れたジョヴァンナとロレンツォは、シモーネという男性を知らないかと尋ねます。店にいた老女の弟がシモーネという名前でしたが、彼は何年も前に強制収容所で亡くなっていました。帰宅したジョヴァンナはシモーネがいないことに気付き、それがきっかけでフィリッポと激しい口論になります。思わず泣き出したジョヴァンナは、手がかりになるかも知れないとシモーネの手紙を読んでみました。
「愛するシモーネ」から続く手紙には、隠れて愛し合ったこと、周囲を気にして窓から見ることすら出来なくなったこと、そしてその愛を失ったことが綴られていました。その手紙で、シモーネの本当の名前が「ダヴィデ・ヴェローリ」であることが判明します。
つまりこれは、ダヴィデが同性の恋人であったシモーネへ綴った手紙だったのです。ジョヴァンナはその手紙をロレンツォにも見せました。彼は転勤が決まり、数日後には町を発つことになったそうです。2人は激しくキスを交わしました。
向かいの窓のネタバレあらすじ:刹那の恋と確かな現実
名前を頼りにダヴィデの家を訪ねたジョヴァンナ。彼は落ち着いた様子でジョヴァンナを迎えてくれました。記憶を失っていた時、唯一頭にあった名前が「シモーネ」だったそうです。ジョヴァンナ達と出会ったあの日、彼はシモーネとの秘密の場所に行こうとしていました。彼らはいつも噴水の石の隙間に手紙を隠し、交換していたそうです。
ダヴィデはジョヴァンナをキッチンに案内し、ケーキ作りを熱心に教えてくれました。彼は自分の店を開くほどの天才的な菓子職人で、その道では有名な人物だったのです。ダヴィデのことをロレンツォに電話で報告したジョヴァンナは、ある夜、彼に抱かれるつもりで部屋を訪ねました。ロレンツォも激しくジョヴァンナを求めます。
しかしジョヴァンナは部屋の窓の前に立ち、そこから見える自分の家の窓を見つめました。向かいの窓にはフィリッポや子ども達の姿があります。ロレンツォはジョヴァンナへの強い愛を告げてすがりつきますが、ジョヴァンナは無言で部屋を後にしました。
向かいの窓の結末:新たな一歩
ダヴィデに上着を届けに行ったジョヴァンナは、彼が大量のケーキを作り、全て失敗作だと肩を落としているところに出くわします。ダヴィデは1943年10月16日、ナチスがローマ中のユダヤ人を一斉検挙しようとしている情報を偶然耳にしました。それを皆に知らせて回り、大勢の命を救ったのです。しかしその代償に、ダヴィデはシモーネを失いました。シモーネに知らせるより先に、他の仲間に知らせて回っていたために間に合わなかったのです。
ダヴィデは永遠に失われた愛とその悲しみに押し潰され、重度のうつ病を患っていました。混乱し取り乱すダヴィデは、ジョヴァンナに無為に生きるのではなく、より良い世界に生きるよう訴えます。その言葉を受け取ったジョヴァンナは、鶏肉工場を辞めて菓子職人を目指す決意をしました。
なかなか勤め先が見つからない中、ついにロレンツォが出発する日がやって来ます。車に荷物を乗せたロレンツォが見上げる窓に、ジョヴァンナの姿はありません。ジョヴァンナは必死に自分を律していましたが、耐え切れず外に駆け出しました。しかしちょうどロレンツォの車が去ったところで、ただ無言で見送るしかありませんでした。
その後、ジョヴァンナは無事菓子店に就職します。フィリッポも昼勤務になり、生活は落ち着いていました。ロレンツォを恋しく思う一方、彼の記憶は薄れていくばかりです。ジョヴァンナの心はダヴィデの言葉を求めていました。ジョヴァンナはダヴィデとシモーネが通った噴水に足を運びます。
彼女は、去っていく人は皆、何かを残していくのだろうと考えました。そして自分は独りではないのだと勇気づけられます。思いを馳せるジョヴァンナが微笑み、この映画は終わりを迎えます。
以上、映画「向かいの窓」のあらすじと結末でした。
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