南の誘惑の紹介:1937年ドイツ映画。スウェーデン上流階級出身の娘アストレは、伯母と旅したプエルトリコで大地主のドン・ペドロと運命的な出会いをする。だがそれは不幸な結婚の始まりだった。主演のツァラ・レアンダーはスウェーデン人歌手で、デトレフ・ジールク監督の前作『世界の涯てに』に主演して一躍ドイツ映画のスターとなった。妻がユダヤ人であったジールクはこの作品の編集を済ませた後ドイツから亡命。ダグラス・サーク名義で1950年代のアメリカ映画の名作メロドラマを数多く手掛けることになる。
監督:デトレフ・ジールク(ダグラス・サーク) 出演者:ツァラ・レアンダー(アストレ)フェルディナント・マーリアン(ドン・ペドロ)、カール・マルテル(スヴェン・ナーゲル博士)、ユーリア・ゼルダ(アストレの伯母)、ほか
映画「南の誘惑(1937年)」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「南の誘惑(1937年)」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「南の誘惑(1937年)」解説
この解説記事には映画「南の誘惑(1937年)」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
南の誘惑のネタバレあらすじ:起・「ハバネラ」に誘われ
アストレは伯母と共に旅行でプエルトリコに来た。伯母はこの熱帯の島が気に入らないが、アストレは魅了されていて、明日ストックホルムへ帰り、堅苦しい社交界の生活に戻らなければならないのが残念だった。
その日、村祭りの行事である闘牛のための通行止めで、二人の乗る自動車の運転手が文句を言っていると、闘牛の主催者であるドン・ペドロがアストレと伯母を闘牛見物に招待する。ここでも伯母は闘牛を嫌悪するがアストレは楽しむ。闘牛士が危機に陥った時にペドロが闘牛場に降りて、代わりに牛を仕留め、アストレの心をつかむ。
翌日、ペドロはアストレと伯母を見送りに行く。だが、アストレは波止場で芸人が歌う「ハバネラ」という歌に誘われ、出港直前に船を降りてしまった。その後アストレとペドロは結婚する。
南の誘惑のネタバレあらすじ:承・10年後のプエルトリコ
10年間アストレと伯母は意地を張り合って連絡をとることがなかった。ストックホルムのパーティで伯母は、旧知の高名な病原菌研究者スヴェン・ナーゲル博士が同僚のブラジル人医師ゴメスと共に熱病研究のためにプエルトリコに行くことを知る。姪を心配する伯母はナーゲルにアストレを連れ帰ることを依頼する。ナーゲルにとってアストレは11年前の恋の相手だった。
だが、プエルトリコでナーゲルたちの研究は妨害に遭う。ペドロの意向でプエルトリコでは熱病は公式には撲滅されたことになっていた。8年前、熱病流行の話が外国で広まり、熱病による死者よりも経済低迷による餓死者の方が多くなったからである。そして大地主のペドロの意向にはアメリカの総督さえ異を唱えることができなかった。
今でもアストレはこの島ではよそ者だった。10年前、彼女を夢中にしたものが今や全てがわずらわしい。アストレとペドロの仲は冷え切っていた。ペドロは嫉妬深い夫で、息子ホアンの教育方針でも妻と対立する。
ペドロがホアンをアストレから離して乳母に委ねると言ったことで、アストレはホアンを連れて故国に帰ることを決意し、ニューヨーク行きの客船の切符をとる。ホアンに来週の木曜日にストックホルムに旅立つと言って、雪降る故郷の歌を歌う。
南の誘惑のネタバレあらすじ:転・島の支配者
熱病の流行が再び始まっていたが、現地の医師たちは「赤痢」であるとしていた。ナーゲルたちはホテルの部屋で熱病の研究を続けざるを得ない。だが、運よくナーゲルは港で監視の兵士がこん睡状態に陥るのに遭遇し、彼の血液を採取する。その情報はペドロにももたらされ、ペドロは二人の医師を翌日のパーティに招いて研究をやめさせることにする。
ペドロには妻が二人分の船のチケットを買った情報ももたらされる。ペドロは妻が息子を連れて逃げるつもりだと察する。ペドロは二枚のチケットは医師を送り返すのに使うのだとアストレに言う。そしてナーゲルとアストレの昔の仲を知り嫉妬を露わにする。
南の誘惑の結末:自分の墓穴を掘ったドン・ペドロ
ナーゲルとゴメスはその夜ついに病原菌を見極め、熱病の治療法もわかる。そして朝、彼らの部屋にその夜のパーティへの招待状が届く。ナーゲルはアストレとの再会に胸をときめかせる。一方、ペドロは妻に昨夜の態度を詫び、お前を愛していると言い、スウェーデンへ旅行しようとまでもちかけるが、アストレの表情は硬い。
パーティでナーゲルはアストレが不幸な結婚をしていることに気付く。ペドロは、妻とナーゲルが話し込むのを見て嫉妬にかられる。アストレは夫の嫉妬を心配して、ナーゲルの「いっしょに故国に帰ろう」という誘いには乗ろうとしない。むしろ、夫に許可を得て『ハバネラ』を熱唱して皆を魅了する。
ペドロの命令でナーゲルとゴメスの留守中にホテルの部屋を調べた男たちが、違法な実験をしていたという理由で二人を逮捕するためにパーティに現れる。ところがペドロその人が熱病で突然倒れてしまう。だが、ナーゲルとゴメスが発見したばかりの解毒剤はペドロ自身の命令によって既に破棄されていたのだった。
ペドロ亡き後の屋敷は老人の保養施設に変えられることになり、最後に残った乳母らが屋敷を後にしていく。そのころナーゲル、ゴメス、そしてアストレとホアンを乗せた船は、芸人が歌い踊る波止場を離れていった。
以上、映画「南の誘惑」のあらすじと結末でした。
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