最後にして最初の人類の紹介:2020年アイスランド映画。1930年代~1940年代に活躍し、後のSF作家に多大な影響を与えたオラフ・ステープルドンの同名小説を、2018年に急逝した音楽家ヨハン・ヨハンソンが自身の映画監督デビュー作にして遺作として製作した壮大な叙事詩です。20億年先の遠い未来から20世紀の人類に託された、人類の存亡を巡る壮大な時間旅行が繰り広げられます。
監督・音楽:ヨハン・ヨハンソン 声の出演者:ティルダ・スウィントン(ナレーション)
映画「最後にして最初の人類」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「最後にして最初の人類」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
最後にして最初の人類の予告編 動画
映画「最後にして最初の人類」解説
この解説記事には映画「最後にして最初の人類」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
最後にして最初の人類のネタバレあらすじ:起
旧ユーゴスラヴィアにある巨大建造物、スポメニック。旧ユーゴ圏に点在するスポメニックは第二次世界大戦時における枢軸国の占領から解放されたことを記念して1960年代から80年代にかけて建設された戦争記念碑であり、当時の社会主義体制のイデオロギーを色濃く残す建築物です。
どこからともなく、幻想的な音楽と共に“彼女”(ティルダ・スウィントン)の声が聞こえてきました。“彼女”は今から20億年もの遠い未来の“最後の人類”であり、“彼女”の時代の人類は滅亡の危機を迎えているというのです。“彼女”は危機を回避するためには“彼女”の時代よりも20億年前の人類、すなわち“今”を生きる人類の力が必要だと訴えてきました。
“彼女”は“今”から20億年もの間、人類は時には緩やかに流れ、時には激しいうねりと化す“大河”のような軌跡を辿ってきたのだと語ります。化学的な微生物の大量発生、疫病発生、気候の激変、天文現象、そして20億年後もなお尾を引く環境問題などといった激流を人類は幾度も経験してきたのです。
最後にして最初の人類のネタバレあらすじ:承
ある時、人類は太陽にガス状の非発光体が接近していることを察知しました。この非発行体が太陽に衝突すると太陽は大きく膨張するかのように燃え上がり、地球を含む太陽系の惑星では生物は生きられないことが判明したことから、人類は太陽系以外の惑星に移住する計画を立てましたが頓挫しました。
人類が最後に希望を見出したのは、太陽系でも太陽膨張の影響を受けない唯一の惑星である海王星でした。海王星に移住した人類はさらに進化を続け、“彼女”の世代になるとまるで望遠鏡のように宇宙の様子を見渡すことのできる“天文観測用の目”を備えるようになっていました。
“彼女”の世代の人類は幾何学的で透明もしくは半透明な住居に住み、住居以外にも星を観測するための巨塔が設けられていました。巨塔はこれまでのいくつもの時代にも何度も造られており、その時々の文化が刻まれていました。それらの巨塔を管理する天文学者は遠い宇宙を観測する傍ら、塔の頂上で“象徴的な営みをしているのだそうです。
“彼女”の世代の人類は不死身に近い超長寿であり、子孫は少数でしたが、それでもより発達した人類を生み出すために生殖は続けていました。“彼女”の世代の人類は産まれてから約20年間の「胎児期」を過ごし、約1世紀をかけてじっくり心と体を鍛え上げます。
そして約1000年の幼年期を過ごしたのち、更に約1000年を青年期として過ごすのです。また、“彼女”の世代の人類はテレパシー能力が備わっており、過去の人類の軌跡の全てを記憶し、過去の人類の精神に憑依して経験を共有することも可能なのです。
最後にして最初の人類のネタバレあらすじ:転
そんな“彼女”の世代の人類はある時自分たちの存亡がかかった“異変”に気付き、このままだと確実に訪れる人類滅亡の危機を回避すべく他の太陽系へ探査船を送りました。その後、探査船は帰還してきたのですが、乗組員の半数は息絶え、残りの半数も痩せ衰えて錯乱状態に陥っていました。
それからというもの、生還した乗組員は星への恐怖に怯え、ろくに外に出ず引きこもるようになりました。
“彼女”は改めて“今”の人類に助けを求めてきました。これから未曽有の異変は加速度的に進み、やがて3万光年以内に太陽圏内に異変が発生するというのです。“彼女”の世代の人類は表面上は平穏を装いながらも、実は迫り来る人類の存亡の危機に動揺していたのです。
それでも決して希望を諦めない“彼女”の世代の人類は最後の手段として人類として一体化した瞬間でした。2つの作戦を決行することにしました。ひとつは人類の移住が可能な惑星に新たな人々の“種”を蒔くこと、もうひとつは“彼女”の世代よりも遙か過去の“居間”の人類に呼びかけ、これまで見過ごされていた真実に目を向け、個々の人々の意識を集中させることでした。
それはすなわち、“今”の人類は“彼女”の世代の人類から、“彼女”の世代の人類は“今”の人類から、それぞれ互いに影響を受け合うことを意味していました。
最後にして最初の人類の結末
“彼女”はようやく“今”の人類と交信が取れたことを喜ぶとともに、“今”の人類に時を超えて語りかけることの困難さを語りました。“彼女”の時代はより一層太陽の崩壊が進み、“彼女”の世代の人類もまた太陽から発せられる放射によって肉体は壊滅的に崩壊寸前でした。
もはやテレパシーすら送る能力も失いつつあった“彼女”の世代の人類は“今”の人類への通信手段として太古の方法であるを音声言語を使うことにしたのです。
“彼女”の世代の人類は海王星の軌道を逸らすことで少しでも太陽の影響を回避ひようとしましたが、それも時間稼ぎに過ぎませんでした。いよいよ終焉が近いことを悟った彼女は、いずれ宇宙も終焉を迎えて、その後のことは知る由もないとしながらも、人類が滅びた後も宇宙は続いていくものであり、人類の歴史など宇宙の寿命と比べればほんの一瞬に過ぎないと語りました。
そして“彼女”は、星々は偉大であり、女性は取るに足りないものだけど、それでも人類は“美しい精神”そのものであり、人類は星から生まれて星に滅ぼされる運命であると語りました。
このメッセージを最後に“彼女”からの交信は途絶え、二度と“彼女”の声がきこえてくることはありませんでした。
以上、映画「最後にして最初の人類」のあらすじと結末でした。た。
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