まぼろしの市街戦の紹介:1967年フランス,イギリス映画。第一次世界大戦末期、ドイツ軍は占拠したフランス北部の小さな町に時限爆弾を仕掛けて撤退した。住民が避難した町は、置いてけぼりにされた精神病者たちとサーカスの動物たちの一昼夜だけの平和な解放区になる。反戦等のメッセージを込めたこの作品はフランスでは不評だったが、アメリカ等で大ヒットしてカルト映画となった。監督は『カトマンズの男』、『リオの男』等のフィリップ・ド・ブロカ。爆弾解除のために町に入る兵士をイギリスの俳優アラン・ベイツが演じる。その「王妃」に選ばれるのは『1000日のアン』等のカナダ人女優ジュヌヴィエーヴ・ビジョルド。
監督:フィリップ・ド・ブロカ 出演:アラン・ベイツ(チャールズ・プランピック)、ピエール・ブラッスール(将軍)、ジュヌヴィエーヴ・ビジョルド(コクリコ)、ミシュリーヌ・プレール(娼館のマダム)、ジャン=クロード・ブリアリ(公爵)、フランソワーズ・クリストフ(公爵夫人)ほか
映画「まぼろしの市街戦」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「まぼろしの市街戦」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
まぼろしの市街戦の予告編 動画
映画「まぼろしの市街戦」解説
この解説記事には映画「まぼろしの市街戦」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
まぼろしの市街戦のネタバレあらすじ:危険な任務
1918年10月、第一次大戦末期、解放間近の北フランスの小さな町から撤退するドイツ軍が町全体を破壊する時限爆弾を仕掛けたことを、レジスタンスの一員である理髪師が知る。
爆発は深夜12時。理髪師は町中の人を避難させたが、本人は味方のイギリス軍に通信中にドイツ軍兵士に射殺されてしまう。
スコットランド人部隊を率いる大佐は、伝書鳩担当の兵士プランピックを呼び、「真夜中に騎士が打つ」というところで切れた理髪師の通信の意味を探り時限爆弾を解除する任務を押し付ける。彼がフランス語を話すからである。
まぼろしの市街戦のネタバレあらすじ:入院患者のユートピア
伝書鳩と町に入ったプランピックはすぐ敵に発見される。精神病院に逃げ込み、鉄格子を開けて、患者たちに紛れ込んで助かる。トランプの札を見て「ハートのキング」と名乗ったのでプランピックは「王様」になってしまった。
精神病院の外に出て頭を壁に打ち気絶してしまったプランピックが目覚めると町の様子が変。皆のんびりと散歩していて、理髪師に会っても話が通じない。無人となった町に繰り出した精神病院の患者たちが理髪師、公爵、将軍、司教等、思い思いの役を演じているのだった。
プランピックは二羽の伝書鳩を放つが一羽はドイツ兵に撃ち落とされる。イギリス軍はプランピックからの通信を読んで彼はイカれてしまったとみなして3人の斥候を新たに送る。ドイツ軍は時限爆弾が解除されたと勘違いし、爆弾を仕掛けなおすために2台の装甲車で兵士を送り出す。
まぼろしの市街戦のネタバレあらすじ:戴冠式
娼館のマダム、エグランティーヌにこの町は爆破されるとプランピックは説明しようとするが「今を生きなさい」と言われ、清楚なコクリコの客になることを勧められる。その時、公爵がプランピックに気づきハートの王様の戴冠式が始まる。
その間にドイツ軍の装甲車が現れプランピックは火薬庫の場所を知るが、爆弾を解除する術がわからない。イギリス軍の3人の斥候はサーカスのゾウやラクダが歩き回る街を見て恐れをなし退散してしまった。
まぼろしの市街戦のネタバレあらすじ:お祭り騒ぎ
町の人たちはコクリコを王妃に決める。プランピックが危険を訴えても人々に話は通じず、皆陽気にさわぐばかり。プランピックはバカンスに行こうと言って皆を町の外に誘い出そうとするが、人々は邪悪な外の世界に出ようとしない。プランピックも彼を心配する皆の顔を見て町に戻り、コクリコと真夜中まで過ごすことになる。
爆発まで後3分。死を覚悟していたプランピックだったが、コクリコが時計台を見て「あそこから騎士がとびだす」と言うのを聞いて「真夜中に騎士が打つ」ということばの謎が解ける。プランピックは時計台に上り体を張って、時計台からとびだした騎士の人形が12時の鐘を打つのを防ぎ、爆弾を解除した。
安全を確認して町に入ってきたスコットランド人兵士たちも交えて真夜中に町はお祭り騒ぎになる。
まぼろしの市街戦の結末:家に戻る
朝、兵士の一人として町を去ろうとするプランピックを町の住人たちは、王様が戦争に行かないようにと拉致する。そこへ深夜の花火を爆発と勘違いしたドイツ軍が町に戻ってきて、広場でイギリス軍とドイツ軍が鉢合わせ。両軍とも全滅する。
疲れた精神病院の患者たちは病院に戻り、町にはフランス軍と共に、避難していた本来の住人が帰ってきた。
プランピックは勲章を授けられるが、最前線へ行くことを命じられる。もう戦争に嫌気がさした彼は脱走し、伝書鳩を入れた鳥かごだけをもって素っ裸で精神病院の前に立ち、再び王様として患者たちの仲間になるのだった。
以上、映画「まぼろしの市街戦」のあらすじと結末でした。
この映画「まぼろしの市街戦」は、コミカルな娯楽アクション監督のフィリップ・ド・ブロカが、痛烈な戦争風刺喜劇として描いた奇跡のファンタジーだ。
とにかく、この映画は、観た者すべてが魅了される不思議な魅力に満ちた、愛すべき大人のお伽噺になっていると思う。
この映画は、公開当時、フランスではコケたが、ベトナム戦争が泥沼化していたアメリカでは、ヒッピーたちや学生たちに熱烈に支持されたと言われているんですね。
第一次世界大戦下のフランスで、ドイツ軍が仕掛けた時限爆弾のために町はもぬけの殻になり、爆弾の撤去を命じられたイギリス軍の兵士アラン・ベイツが町に入ると、そこにいるのは、動物と精神病院を抜け出した患者ばかりだった——-。
このイギリス人兵士は、それぞれ派手に着飾って、将軍や貴族や司祭や娼婦や床屋になり切った善良な彼らに、ハートの王様として歓待され、カーニバルの動物たちを解き放って、町を上げてのどんちゃん騒ぎが開始される。
主人公以外、誰ひとりとしてまともな人間が出てこないのが素晴らしく、イギリス軍とドイツ軍が鉢合わせして全滅した後、患者たちが急に「もう十分遊んだ」と言って、病院に戻るというアイロニーに満ちた皮肉な結末に、戦争をしている人間と精神病院にいる人間—–狂っているのはどっち? というように痛烈に戦争を風刺しているんですね。
ジョルジュ・ドルリューの音楽もとても印象的で、サーカスの芸人のように綱渡りをするヒロインのジュヌヴィエーヴ・ビジョルドが、天使のような愛らしさで、最高に素敵でしたね。