生きる LIVINGの紹介:2022年イギリス, 日本映画。1952年に公開された黒澤明監督作『生きる』を、舞台を第二次世界大戦終戦後のイギリス・ロンドンに置き換えてリメイクした作品です。脚本は『日の名残り』『わたしを離さないで』などで知られるノーベル賞作家カズオ・イシグロが手がけ、仕事一筋で生きてきた男が余命を宣告されたことで自らの人生を見つめ直す姿を描き出していきます。
監督:オリヴァー・ハーマナス 脚本:カズオ・イシグロ(オリジナル脚本:黒澤明、橋本忍、小国英雄) 出演者:ビル・ナイ(ロドニー・ウィリアムズ)、エイミー・ルー・ウッド(マーガレット・ハリス)、アレックス・シャープ(ピーター・ウェイクリング)、トム・バーク(サザーランド)、エイドリアン・ローリンズ(ミドルトン)、ヒューバート・バートン(ラスブリッジャー)、オリヴァー・クリス(ハート)、マイケル・コクラン(ジェームズ卿)、アーナント・ヴァルマン(シン)、ゾーイ・ボイル(マクマスターズ夫人)、リア・ウィリアムズ(スミス夫人)、ジェシカ・フラッド(ポーター夫人)、パッツィ・フェラン(フィオナ・ウィリアムズ)、バーニー・フィッシュウィック(マイケル・ウィリアムズ)、ニコラ・マコーリフ(ブレイク夫人)ほか
映画「生きる LIVING」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「生きる LIVING」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「生きる LIVING」解説
この解説記事には映画「生きる LIVING」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
生きる LIVINGのネタバレあらすじ:起
第二次世界大戦終戦間もない1953年のイギリス・ロンドン。市役所に就職したばかりの新人ピーター・ウェイクリングは汽車に乗って出勤しました。
ピーターが勤務する市民課の上司である課長のロドニー・ウィリアムズは至って英国紳士のたたずまいですが、常に山積みとなっている書類を感情なく淡々と処理し、勤務時間が終われば淡々と帰るだけの日々を過ごしていました。
役所は事なかれ主義が蔓延しており、毎日のように市民から陳情が寄せられるものの結局は次から次へと他の課へたらい回しになり、聞き入れてもらえないことが日常茶飯事となっていました。自分の机にも書類が山積みとなっていたピーターに、同僚のマーガレット・ハリスは山積みの書類は忙しいフリができるとアドバイスしました。
この日も市の女性たちが陳情した、大戦の影響で荒れ果てた空き地を公園として整備してほしいという要望書は各課にたらい回しとなり、最終的にはロドニーのもとに回りましたが、その要望書はロドニーに読まれることなく机の書類の山に重ねられました。
事なかれ主義でありながらも一度も欠勤も遅刻もしたことのないロドニーでしたが、この日は珍しく早退して病院に向かいました。そこでロドニーが担当医から告げられたのは、ロドニーは末期癌に侵されており、余命は半年、長くて9ヶ月という宣告でした。
帰宅したロドニーは、同居している息子のマイケルとその妻フィオナにこのことを打ち明けようとしましたが、マイケル夫妻はロドニーの話を聞いてはくれませんでした。ロドニーはひとり亡き妻との思い出に浸っていました。
生きる LIVINGのネタバレあらすじ:承
余命宣告の翌日からロドニーは職場に姿を見せなくなりました。このことを不思議がる同僚たちはロドニーの身に起きている事態については気付く由もありませんでした。
その頃、ロドニーは貯金をはたいて海辺のリゾート地に向かい、そこで大量に購入した致死量の睡眠薬を飲んで自殺しようとしましたが果たせませんでした。ロドニーは現地のレストランで劇作家のサザーランドと出会い、不眠症に悩むサザーランドに自分の睡眠薬を渡しました。
ロドニーは自分は人生を謳歌することができなかったと打ち明け、サザーランドなら人生の楽しみ方を知っているのではないかと問いかけました。サザーランドはロドニーを夜のダンスホールや遊技場、パブに連れ回しました。ロドニーはパブで、自分と妻の故郷であるアイルランド民謡「ナナカマドの木」をリクエストしました。
翌日、ロンドンに戻ったロドニーはマーガレットから相談を受けました。事なかれの役所仕事に嫌気が差したマーガレットはカフェへの転職話を進めており、ロドニーに推薦状を書いてほしいと持ちかけてきたのです。ロドニーは推薦状を書くことを約束するとともに、健康的で屈託のない笑顔のマーガレットに惹きつけられていきました。
マーガレットはロドニーにこっそり付けたあだ名があることを明かしました。それは“ゾンビ”であり、ロドニーが職場では“死んでいるのに生きている”ように見えたから付けたのでした。ロドニーは怒るどころか、それは自分の状況を的確に言い表していると感心しました。
それからというもの、ロドニーとマーガレットは一緒に映画を観、食事を楽しみましたが、二人の行動は近所の住民を通じてフィオナの耳に入ってしまいました。元々ロドニーの遺産で家を買おうとマイケルと計画していたフィオナはロドニーがマーガレットと交際しているのではないかと勘違いし、せっかくの遺産をマーガレットに奪われてしまうのではないかと危惧しました。フィオナはそのことをマイケルを通じてロドニーから問い質そうとしましたが、マイケルは言い出せずに時間だけが流れていきました。
生きる LIVINGのネタバレあらすじ:転
ロドニーの症状は悪化していき、残り少ない時間をどう生きるか悩んでいました。ロドニーはマーガレットの働くカフェに向かい、一緒に映画と食事を楽しんだ後、マーガレットに自らの病と余命を打ち明けました。
ロドニーは残りの人生をどう生きるか、どうすればマーガレットのように明るく振る舞えるのか尋ねると、マーガレットはなぜロドニーは職場に戻らないのかと問いかけ、ゾンビのようなロドニーは嫌いだと言い放ちました。これを聞いたロドニーの中に、机の書類の山の中に埋もれたある事案が思い浮かびました。
それは市民からの公園整備での要請であり、ロドニーは翌日から職場復帰するとこの事業を生涯最期の仕事として本格的に乗り出しました―――。
―――数ヶ月後、ロドニーは完成した公園でひっそりと息を引き取っていました。ロドニーの葬儀にはマーガレットや職場の部下・同僚たちに加え、公園協議会の委員長を務めるジェームズ卿、要望書を出した市民らも参列しました。しかし、この公園を作ったのはロドニーの功績であることは公にされず、それどころか役所側やジェームス卿が手柄を自分たちのものにしようとしました。
ロドニーの死を悼んでいたマーガレットとピーターの前にマイケルが現れ、マーガレットにロドニーの病のことを知っていたのかと尋ねました。マーガレットが認めると、マイケルはなぜ自分に話してくれなかったのかと悔やみました。
生きる LIVINGの結末
新たな市民課の課長となったミドルトンはロドニーの後を継ぎ、市民の小さな声に耳を傾けて行動する精神を継承しようと誓いました。しかし、時が経つにつれ、ミドルトンの初心はいつしか忘れ去られ、役所は以前のように事なかれ主義に戻っていました。
そんな役所に失望していたピーターはロドニーから託された手紙を完成した公園で開きました。ロドニーは仕事に真摯に取り組む姿勢を将来ある若者に託そうと考えており、この公園の建設という小さな偉業はいつか忘れ去られるけれども、仕事上で生じた矛盾に心が折れそうな時はこの偉業を思い出して精進するよう手紙に綴っていました。
手紙を呼んでいたピーターに、その場にいた警官が声をかけてきました。ロドニーの死の直前の雪の夜、警官は完成した公園のブランコにロドニーが乗っており、ひとり幸せそうに「ナナカマドの木」を歌っていたことを明かしました。警官はロドニーに声をかけずそっとしておいたのですが、間もなくしてロドニーは公園で亡くなったため、声をかけなかったことを後悔していたのです。
ピーターはロドニーは既に末期癌だったことを打ち明け、声をかけなかったのは正しかった、ロドニーの表情が幸せそうだったのは間違いなかったと伝えました。
やがて春になりました。マーガレットとピーターは完成した公園で仲睦まじくデートをしていました。
以上、映画「生きる LIVING」のあらすじと結末でした。
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