マンチェスター・バイ・ザ・シーの紹介:2016年アメリカ映画。償いようのない悲劇を引き起こした男が、兄の死をきっかけにそれまで失われていた肉親との交流を取り戻すドメスティックなドラマ。ケイシー・アフレックがこれまでで最高の演技を見せ、見事にアカデミー主演男優賞を受賞。監督・脚本のケネス・ロナーガンもオリジナル脚本賞を得た。
監督:ケネス・ロナーガン 出演:ケイシー・アフレック(リー・チャンドラー)、ミシェル・ウィリアムズ(ランディ)、カイル・チャンドラー(ジョー・チャンドラー)、ルーカス・ヘッジズ(パトリック)、ほか
映画「マンチェスター・バイ・ザ・シー」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「マンチェスター・バイ・ザ・シー」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
マンチェスター・バイ・ザ・シーの予告編 動画
映画「マンチェスター・バイ・ザ・シー」解説
この解説記事には映画「マンチェスター・バイ・ザ・シー」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
マンチェスター・バイ・ザ・シーのネタバレあらすじ:起
どことなく暗い陰がある中年男のリー・チャンドラー。管理人兼便利屋として、マサチューセッツ州クインシーでいくつかのアパートの設備の修理などを行っていますが、顧客にも平気で失礼なことを言うため、評判は芳しくありません。女には興味がないらしく、バーで見知らぬ女性から誘いを受けてもあっさりと無視してしまいます。そして何にムシャクシャするのか、機会さえあれば殴り合いの喧嘩を始めるのです。そんな風にいつでも投げやりな彼のところへ、生まれ故郷マンチェスター・バイ・ザ・シーに住む旧友ジョージから電話がかかってきます。リーの兄・ジョーが危篤状態だと言うのです。リーはすぐに車で病院に向かいます。まっすぐ病室を訪れるものの、ジョーはすでに他界していました。遺体に別れを告げたリーは、ジョーの1人息子パトリックにその死を知らせるため、アイスホッケー場へ。一旦病室へ連れてゆき、遺体と対面させた後、車で家へ送っていきます。そして自分もそこに泊まることに。パトリックはバンド仲間を家に呼び、彼らと談笑。思ったほど悲しみを感じている様子はありません。
マンチェスター・バイ・ザ・シーのネタバレあらすじ:承
翌日になってリーは兄の遺言書を保管している弁護士の元へ。そこで意外な事実を聞かされます。ジョーは遺言書で、まだ高校生であるパトリックの後見人としてリーを指名していたのです。そのために、彼はマンチェスターに引っ越してこなければなりません。リーは「そんなことは出来ない」と弁護士に告げます。かといって、パトリックにとって1番の近親者である実の母親、つまりジョーの離婚した妻・エリスはジョーを見捨てた経緯があり、彼女に預けることも出来ません。こうなったらパトリックを自分の部屋に引き取ろうか、とも考えるのですが、友だちや知り合いから離れるのはパトリックにとっては問題外で、しかも便利屋であるリーの部屋は2人で暮らせる空間ではないのです。
マンチェスター・バイ・ザ・シーのネタバレあらすじ:転
どうあってもマンチェスターに戻らなければならないと知ったリーは苦悩します。というのも、リーは昔マンチェスターの港でジョーと同じように漁師に従事し、ランディという妻、そして3人の子宝に恵まれていたのですが、暖炉をつけたままビールを買いに行ったせいで自宅が火事になり、眠っていた子供を全員焼死させてしまうという耐え難い体験をしていたのです。彼は警察での事情聴取の際に自殺を試みたくらいでした。やがてこの事が原因でランディとも離婚。すっかり厭世的になった彼は町を離れ、世捨て人同然の生活を送ってきました。そんな彼にとって、常に子供の死を思い出させるマンチェスターに居住するのは責め苦に近いものなのです。やがてジョーの葬式が行われ、新しい再婚相手を連れてランディもやってきます。その夜、それまで涙など見せなかったパトリックが冷蔵庫の前で突然号泣。実は、ジョーの遺体が墓地の地面が凍結している関係で数ヶ月冷凍室に保存されることになったのですが、それがなぜかパトリックにはひどく辛いことだったのです。甥を慰めているうちに、2人の間にはようやく肉親らしい交情が生まれます。
マンチェスター・バイ・ザ・シーの結末
移住のために準備にかかるリーですが、やはり積極的にはなれません。パトリックが密かに母親エリスとメールでやり取りしていることを知ると、彼女が後見人になれないか、パトリックにその新しい家庭の様子を見に行ってもらうことにします。しかし、そこは居心地が悪く、甥は今まで通りの生活を望みます。ムシャクシャしてリーはまた酒場で喧嘩をしてしまいます。旧友ジョージとその家族から介抱を受け、帰宅。トマトソースを温めているうちに危うく火事を起こしそうになり、やはり自分には後見人の資格はない、と考えます。再びジョージ家を訪れたリーは、事情を説明。彼らにパトリックの世話を頼むことにします。それを知り、リーに肉親の情を抱き始めていたパトリックは困惑しますが、子供に関する悲劇を克服できない叔父の気持ちを汲んで、やむなくその処置を受け入れます。数ヶ月が経ち、ようやくジョーの遺体が埋葬へ。新しい子供の生まれたランディも顔を見せました。リーはパトリックに「お前が来ても泊まれるように、2つ部屋のあるアパートを探してる。そこへ引っ越したら、いつでも来てくれ」と告げます。そして2人は仲良く釣りを始めるのです。
「マンチェスター・バイ・ザ・シー」感想・レビュー
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私もアメリカ映画は数えきれないほど見て、育ってきました。ハリウッド映画と一味違う映画でした。たぶん映画アカデミー賞等々総どりの映画評ではと思い、見終わってからPCたたいてみた。
主役のリーを演じていた、俳優は時間軸が過去現在と忙しく跳ぶことに、語りなく、映画の処方をうまく使って、見るものにかたってくれます。これぞ映画と、しかしいいものは原作まで探して読みたいとおもいます。
心の傷にじんわりと寄り添うような、押しつけがましくない距離感が心地よい大人の映画。主人公リーが起こしてしまった家事の場面に至るまでの、不穏ながらも神々しい音楽の使い方が秀逸で、なにか起こる前から人生の儚さ、残酷さを想起せずにはいられません。甥っ子が優しく分別のある人間に育っている様子などから、皆に慕われていた兄の人間性を浮き彫りにするなど、人物描写も実に見事。映画が終わった後も、今日も彼らは生活をしているんだろうと感じされてくれる、「生きた」作品でした!