1970年イタリア作品 監督:マウロ・ボロニーニ 出演:マッシモ・ラニエリ、オッタヴィア・ピッコロ、フランク・ウォルフ
舞台は20世紀初頭、芸術の都から工業都市へ変貌しつつあるフロレンス(現在のフィレンツェ)。幼いころに両親を失った若者が両親の故郷であるフロレンスに戻ってきた。父のかつての友人たちは、若者を労働闘争のリーダーにしようとする。その彼もまた人々の期待に必死にこたえようとする。革命運動に取り組んだ若者のひたむきな人生を描く。
映画「わが青春のフロレンス」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「わが青春のフロレンス」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「わが青春のフロレンス」解説
この解説記事には映画「わが青春のフロレンス」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
【イタリア語でフィレンツェ】
映画の見方のひとつに、背景・風俗・衣装などその時代を再現した美術効果を楽しむ方法もあります。この作品は20世紀初頭のフロレンスが舞台で、灰色にくすんだ建物、すり減った石畳の階段、柔らかな光の中に広がる街のたたずまいなど観てるだけでため息が出て来ます。もちろん当時を再現したのでなく年月を経ても変わらない街、それがフロレンスが芸術の都と言われる所以ではあるけれど。
【激動の青春を生きる若者たち】
さらに加えてガーンと一撃を食らった女優、オッタヴィア・ピッコロが登場します。彼女が最高にカワイク、イジラシク、イトオシイ! メテロ(原題がMETELLO)は貧しい一労働者で父親のかつての仲間たちは彼を労働争議のリーダーに祭り上げ、また自身も階級意識に目覚め人々の期待に応えようと懸命になるのですが組合活動が活発化するにつれ度々捕らわれては投獄生活を送ります。そんな中メテロの父の葬儀で初めてエルシリア(O・ピッコロ)と知り合い、清楚な彼女に心奪われ「釈放されたら結婚しよう」と約束するのです。彼女の父もまた闘士でありメテロの心情は痛いほど理解し造花の内職をしながらひたすら帰りを待ち続けます。
【切なくも哀しくて・・】
出獄して結婚した二人にも子供が出来た穏やかなある日アパートの隣に住む人妻イディナにメテロは声を掛けられます。(このイディナ演ずるティナ・オーモンは色白で目の周りが黒く不健康ないかにも好きそうないい味出しています)妻にはないこの魅惑的なイディナの誘惑に負けたメテロは過ちを犯し何度も不倫を重ね、いつかその現場を目撃した妻は夫を責めずこっそりイディナを呼び寄せて平手打ちを食わせ「私の夫に手を出さないで!」と厳しく言い渡すのです。激しく揺れ動く女の情感を抑えた演技でひとしお愛しい映画にしています。ラストでメテロは妻に誓います。もう二度と苦しい思いはさせないと。しかしその時が来ればまた夫は闘い続け、妻もまたじっと耐え続けるでしょう。
【総合芸術としての完成品】
音楽は「荒野の用心棒」「シシリアン」「ニュー・シネマ・パラダイス」などの巨匠エンニオ・モリコーネで、心に染み入るやるせないメロディがひときわ情感を盛り上げてくれます。ルネサンス画家ボッティチェッリの名画を見てるような、始めから終わりまで全て一枚一枚切り取って保存したくなるような美しい映像の連続です。同じマウロ・ボロニーニ監督、主役も同じ二人による「愛すれど哀しく」も薄幸な女性の物語で両方ともDVD化されているのであなたも名画に触れてみませんか?
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