仕立て屋の恋の紹介:1989年フランス映画。向かいの部屋に住むアリスに想いを寄せる仕立て屋に、ピエレット殺しの嫌疑が掛けられる。真犯人を知る彼が立てた計画はうまくいくのか?
監督:パトリス・ルコント 出演:ミシェル・ブラン(イール氏)、サンドリーヌ・ボネール(アリス)、リュック・テュイリエ(エミール)、アンドレ・ウィルム(刑事)、ほか
映画「仕立て屋の恋」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「仕立て屋の恋」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
仕立て屋の恋の予告編 動画
映画「仕立て屋の恋」解説
この解説記事には映画「仕立て屋の恋」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
仕立て屋の恋のネタバレあらすじ:女性殺害事件発生。
変わり者の仕立て屋イール(ミシェル・ブラン)の元を、ピエレット殺害の事件の聞き込みで刑事(アンドレ・ウィルム)が訪ねてきた。刑事は、なぜキミは皆に嫌われているのかと尋ねると、僕も自分が嫌いだと仕立て屋は答えた。
仕立て屋には趣味があった。それは向かいの部屋に住む女性、アリスを覗き見ること。夜になると着替えて出掛ける彼女は、橋の下で恋人とデートをするが、彼はなかなか結婚に踏み切ってくれないので彼女は焦れていた。
出勤時に仕立て屋が黒いコートに白い粉を落とされた日、飼っているハツカネズミが一匹死んでおり、彼は遺骸を端布に包み川に落とした。一方アリスは恋人に正式にプロポーズされた。
刑事は目撃者のタクシー運転手を立ち合わせ、仕立て屋に夜の道を走らせて本当に犯人が彼か確かめようとした。アパートの住人はそれを皆見物していた。ボーリング場で仕立て屋は後ろ向きでも、目隠しでもストライクを連発し歓声を浴び、見に来ている刑事に、自分を好んでくれる人もいると言った。
刑事は過去に仕立て屋がわいせつ罪で半年刑務所に入っていたことから、彼の女性癖について、いつから女性と関係が無いかなどの尋問をした。そして仕立て屋の本名はイロビッチだけれど、言いづらいのでイールと名乗っている事も聞きだした。
帰宅すると、仕立て屋の覗きに気づいたアリスが、階段で待ち伏せていてトマトを落とす。声もかけられない仕立て屋の部屋にひとつトマトが転がりこんだ。
仕立て屋の恋のネタバレあらすじ:仕立て屋に気づいたアリス
アリスは仕立て屋が覗いているのを知っていながら、恋人と抱き合う所をわざと見せ付けた。風俗サウナを訪れた仕立て屋は、女に鳩に餌をやる老女の話をした。老女は笑顔で餌をやっていたがそれは毒入りだったという話だった。陰惨な話を止めようとするが、仕立て屋は話に来るだけで風俗の女と関係は持たなかった。
アリスは枕元に鏡を置いて、向かいの窓から覗く仕立て屋を映して見ていた。彼女は仕立て屋を訪ねるが彼は冷静に無視するも、彼女のスケートデートの現場に行って転んでしまい、見に来ていたことがばれてしまう。仕立て屋の好意を知ったアリスは、わざと見せ付けるように行動をし始める。
そして仕立て屋の部屋に訪入った彼女は。覗きはごめんだわ、ひどいと言った。そして、警察に通報したと告げ、でも通報してないと言葉を翻した。仕立て屋は、怖がられると悲しいとだけ言うと、彼女は、見られるのは嬉しい、やさしそうな人だからと、距離をつめ始め、やがてベッドに腰掛け話し始めると、仕立て屋は出て行けと言った。そして、彼女が座っていたベッドにできた窪みに頬を寄せた。
恋人とデートするアリス。結婚の話を進めない恋人に、本気じゃなかったの?と詰め寄ると、刑事が来た、何も気づかれていないと彼は語った。ピエレット殺しの犯人はアリスの恋人だった。
刑事が再びアパルトマンを調べ、ピエレットの血のついたマフラーを仕立て屋のものではないかと見せに来た。仕立て屋はまだ使っていない同じマフラーを見せ、自分ではないと言った。
仕立て屋の恋のネタバレあらすじ:アリスからのデートの誘い
アリスから、仕立て屋に会いたい、つきましては日曜日にランチをという手紙が届く。仕立て屋は駅が見えるレストランを指定し、そこで二人は食事をした。仕立て屋は人を観察するのが趣味で駅が好きだった。外国は行った事無く、駅で知っているのはこの駅だけと話すアリスに、仕立て屋はローザンヌに家があるのでスイスに永住するつもりだと、切符を見せた。
仕立て屋はアリスに、自分に優しくするのは恋人エミールのためかと彼女に聞き、殺しの現場も、アリスがコートで血を拭き後始末をしているのも見たと語った。警察に届けなかったのはアリスが引っ越してきて、キミを愛しているからとも。
アリスと恋人エミールと仕立て屋は同じバスに乗りボクシング会場へ。試合中に刑事が会場にやってきて、エミールは裏口から逃げ出した。残されたアリスに仕立て屋は自分と逃げるべき、優しくしなくてもいいから、アリスが自分に好意を持ってくれるのを待つからと言ってスイス行きの切符を渡した。
再びアパートで刑事に問い詰められた仕立て屋は、手紙をしたため、鍵を入れ封をした。
仕立て屋の恋の結末:アリスは駅に来るのか?
スイスに発つ前に、仕立て屋はハツカネズミを線路に放した。そして駅でアリスを待つが来ないので列車には乗らず、再びアパートに帰った。すると、自分の部屋の扉が開いていて、中では刑事がアリスの話を聞いていた。
刑事は仕立て屋を犯人だとはハナから思っておらず、真犯人を泳がせていたつもりだったのでショックな面持ちだったが、アリスが隠していた被害者のバッグを、仕立て屋の部屋に隠し、それを証拠として見つけさせ、仕立て屋を犯人に仕立て上げていた。
仕立て屋は、アリスを少しも恨んではいないけれど、切なくて悲しいとだけ告げる。そして刑事に連れて行かれそうになると、嫌だと屋根の上へ逃げて滑らせて落ちて死亡した。
落ちる瞬間に彼は、窓辺のアリスと目が合った。仕立て屋からの手紙を読みながら、ロッカーの鍵が届く。そこには、血を拭いていたコートを拾ったけれど、彼女は共犯ではないと綴られていた。
以上、映画「仕立て屋の恋」のあらすじと結末でした。
仕立て屋の恋のレビュー・感想:仕立て屋の作法と距離
主人公の仕立て屋は、それが想いを寄せているアリスであっても自分からはいっさいスキンシップをしない。それは一見すると、変態的に見えるかも知れないが一貫しているので彼の作法と言って差し支えないと思う。アリスが個人的に部屋を訪ねた時でさえ、彼女の距離の詰め方に逆に追い返したほどなのだから徹底している。仕立て屋の仕事でも、女性服を扱うシーンがあるものの、お客に触れる事はない。
ボクシング場でスイス行きを言い募る時でさえ、仕立て屋とアリスの間には距離がある。恋人より自分を選べという、告白シーンでもある。しかし、仕立て屋はアリスの手を取りさえしない。そのストイックさは見ていてこの作品の中のひとつの作法として生きている。
「仕立て屋の恋」感想・レビュー
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パトリス・ルコント監督が描く、男の孤独。
若い女は堅実で禿げの男より若い悪に惹かれるものだし、見ていて泣けてきた。ノートルダム・ド・パリでは逆にエスメラルダが浮気者のイケメン将校にぞっこんになり、身を亡ぼす羽目になった。見た目が優先というのは悲しいね。