ムーンライトの紹介:2016年アメリカ映画。2017年アカデミー賞受賞作品。マイアミの貧困地域、いじめや育児放棄などを経験してきた同性愛の黒人男性の心情を巧みな構成で描いた秀作。批評家から絶賛を受け、大本命だった「ラ・ラ・ランド」を破ってアカデミー作品賞を獲得。助演男優賞、脚色賞も合わせて受賞した。製作費がわずか150万ドルという点も話題に。
製作総指揮:ブラッド・ピット 監督:バリー・ジェンキンス 出演:マハーシャラ・アリ(フアン)、ナオミ・ハリス(ポーラ)、ジャネール・モネイ(テレサ)、アンドレ・ホーランド(ケヴィン)、アシュトン・サンダース(シャロン)ほか
映画「ムーンライト」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「ムーンライト」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
ムーンライトの予告編 動画
映画「ムーンライト」解説
この解説記事には映画「ムーンライト」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
ムーンライトのネタバレあらすじ:起・貧困、いじめと育児放棄
マイアミの郊外、真昼でも人影の少ない住宅地に、1台の青い車がやってきます。運転席にいるのは、いかにも胡散臭そうな黒人の男。フアンという名の麻薬の売人です。道端には別の若い売人がいて、フアンは彼と話を始めます。どうやらフアンはこのシマを取り仕切っているらしく「週末に集金に来る。ママによろしく」と若い売人に告げ、その場を離れます。煙草を吸いながら道を横切ろうとするフアン。その前を、黒人少年の集団が凄まじい勢いで駆けていきます。
その先頭にいるのはシャロン少年。彼は学校でクラスメイトからいじめの対象になっていて、今も彼らから逃げている最中でした。草やぶになった空き地を抜け、アパートの2階へ。空き部屋に無理やり入り込み、災厄を避けます。いじめっ子たちがしつこく石を投げてくるため、しばらく外に出られません。やがてドアがノックされたのを聞き、シャロンは再び怯えます。窓にはめられたトタン板が乱暴に剥がされ、そこから入ってくる人影。さっきすれ違ったフアンでした。どうやら様子をうかがっていたらしく、不安そうなシャロンに「一緒に飯を食おう」と誘いの言葉をかけます。それに従い、シャロンは一緒にレストランへ。しかし住所などを聞くフアンに対し、口をつぐんでいます。フアンの方も無理強いはせず、一緒に自分の恋人・テレサの家へ向かいます。
夕食を御馳走になり、彼女に優しく接されることで、ようやくシャロンも警戒を解くのです。帰宅したくない気持ちを知ったテレサは、シャロンを家に泊まらせることに。そして翌日、フアンが彼を家に送っていきます。フアンがアパートのドアをノックしたところへ、彼の母親・ポーラがちょうど帰宅。フアンが事情を話すとお礼をいいますが、その風体から彼が売人であることを悟ったらしく、息子に触ることも許しません。シャロンは母親と2人暮らしでした。
ムーンライトのネタバレあらすじ:承・シャロンとケヴィンの出会い
翌日、仲間とともにサッカーをするシャロン。しかし、何となく疎外感を覚え、1人で歩き出します。そこへ話しかけてきたのが、仲間のひとり・ケヴィンでした。話をするうち、2人はじゃれ合うように喧嘩の真似事をし、その仲を深めます。シャロンはフアンを父親のように感じ始めます。フアンも彼を息子のように扱い、海で泳ぎを教えたり、自分の出身地であるキューバでの暮らしぶりを詳しく語ったり、親しく接するのです。フアンのおかげでシャロンの生活に潤いが出てきたものの、ポーラのだらしなさは相変わらずで、男を引き入れたり、テレビを売り払ったりと、その家庭は落ち着ける場所ではありません。やがてフアンの方も、ポーラが男と麻薬を吸っている現場に遭遇。シャロンへの心配をつのらせます。
やがて時が経ち、シャロンは高校生に。学校でのいじめは相変わらず続き、母親の薬物依存も悪化するばかりです。フアンは亡くなりましたが、シャロンはテレサの家へは通い続け、時折そこに泊まるのがストレスからの救いとなっています。しかし、ある日どうにも惨めさに耐えられなくなり、電車を乗り継いで夜のビーチへ。そこは自分を構ってくれる唯一の友達・ケヴィンの家のそばでした。やがて彼の姿に気づいたケヴィンがやってきます。
一緒に麻薬をやるうち、ケヴィンとシャロンは恋人同士のように体を寄せ合います。キスをした後、ケヴィンはシャロンのズボンのベルトを緩め、その下半身を手で慰めることに。そのまま何事もなかったかのように、ケヴィンは自分の車でシャロンを自宅まで送り届けます。
ムーンライトのネタバレあらすじ:転・報復と10年の月日
仲が深まったと思ったシャロンでしたが、ケヴィンの方はクラスメイトたちから脅迫され、そのいじめに参加。シャロンを殴りつける羽目に陥ります。これで絶望を覚えたシャロンは翌日、いじめ側のリーダーの生徒を椅子で殴打。そのまま逮捕され、施設送りとなります。
10年の歳月が経ちました。今のシャロンはかつてのフアンと同じ麻薬の売人です。トレーニングで鍛え上げた筋肉、金色のグリルを歯につけた姿は、とても十代の頃にひ弱だったとは思えません。高級車を乗り回し、下っ端の売人を従えているところもフアンにそっくりでした。アトランタ州のジョージアをシマにしているシャロンは、その日も集金を終えると、ベッドで寝ていました。そこに、思わぬ人物からの電話が入ります。
逮捕されて以来、全く連絡を取っていなかったケヴィンでした。消息を聞いてきたケヴィンは、自分がコックになったことを告げ、近くに来たら一度店に寄ってくれ、自慢の料理をふるまうとシャロンを誘います。胸の高まりを覚えたシャロンはその夜、夢精で下着を汚すのです。
ムーンライトの結末・昔の2人に戻るとき
薬物依存症者用の施設に入っている母親を訪ねた後、シャロンは車を飛ばしてケヴィンの店へ。声もかけず、働いているケヴィンの様子をしばらく見つめていましたが、注文を聞きに来たケヴィンの方が彼の事に気づきました。感慨深げに抱き合う2人。ケヴィンは得意料理を作り、シャロンに振る舞います。ワインを飲みながら近況を話し合ううち、ケヴィンが幼馴染の女性と子供を作ったことが分かります。ケヴィンも自分同様にゲイだと思っていたシャロンは、それを聞いて呆然とした表情に。シャロンが薬物の売人をしていると聞いて、ケヴィンの方も眉をひそめます。
仕事を終えたケヴィンを送るため、シャロンは車で一緒に彼の家へ。かつて2人が関係を持った波の音の聞こえる海辺にあるアパートです。会話を続けるうち、ケヴィンは今の自分の生活が望み通りのものではないと告げます。それに誘われるようにシャロンも「あの海辺での出来事以来、誰も自分の体には触れていない」と告白。ケヴィンは彼の真情を知り、その体に寄り添うのでした。
以上、映画ムーンライトのあらすじと結末でした。
「ムーンライト」感想・レビュー
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シャロンのケヴィンに対する気持ちがとてもうまく描写されていると思いました。幼少期に出会い、高校の時に確かめた気持ちを10年たっても変わらずに持ち続けていたケヴィンの様子が、表情や口数の少ないセリフの中からもとてもよく伝わってきました。映画ムーンライトは黒人社会の闇、貧困生活や家庭の問題、同性愛など、社会の陰になっている部分に焦点をあてた、とても奥が深い映画でした、見る価値ありです。
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不条理な生き方を強いられるストーリーの中で、画面上に現れるブルーだけが正当で美しい。
ストーリー展開を評価するよりも、絵本を見るような感覚で受け止めた方が楽しめた。
一度見たときは淡々と物語が進んでいくので退屈な映画という印象を受けました。
ですが、気が付くと二回目、三回目と何度も見返すほどの素晴らしい映画です。
麻薬のバイヤーという立ち位置の映画で、登場人物は皆、黒人の方だけです。
黒人社会の中の差別、貧困、ドラッグ、ゲイをテーマにした作品ではありますが、終始飾らない優しさに包まれています。
主人公のターニングポイントであろう時期や、重要人物の死などが作品では触れられず、いきなり主人公の成長し青年になったシーンに飛んだりするので、作品の流れが平坦に感じてしまうかもしれません。
この作品では青という色が幻想的に使われ映像が綺麗です。
終始主人公の過ちや暗い幼少期が続きますが、最後にささやかですが救われます。
ラブストーリーではありませんが、人を愛するということを教えてくれる作品です。