ネリー・アルカン 愛と孤独の淵で(別題:ネリー 世界と寝た女)の紹介:2016年カナダ映画。フランス文壇に衝撃を与え、2009年に36歳の若さでこの世を去ったカナダ出身の女性作家ネリー・アルカンの伝記ドラマです。高級娼婦だった自らの経験をモデルとする自伝的小説でデビューしたネリーはたちまち一大センセーションを巻き起こしましたが、やがて自ら生み出した分身たちによって人生そのものを蝕まれていくことに…。
監督:アンヌ・エモン 出演:ミレーヌ・マッケイ(ネリー・アルカン)、ミカエル・グアン(フランコイス)、ミリア・コルベイ=ゴーブロー(イザベル・フォルティエ)、マリー・クラウド・グエリン(メリナ)、キャサリン・ブルネット(ペギー)、ジェイソン・カバリア(トロント)、シルヴィ・ドラピュー(スザンヌ)、フランシス・ドゥカルメ(ジャーナリスト)、フランシス・リプレイ(マチュー)ほか
映画「ネリーアルカン 愛と孤独の淵で」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「ネリーアルカン 愛と孤独の淵で」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
ネリー・アルカン 愛と孤独の淵での予告編 動画
映画「ネリーアルカン 愛と孤独の淵で」解説
この解説記事には映画「ネリーアルカン 愛と孤独の淵で」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
ネリー・アルカン 愛と孤独の淵でのネタバレあらすじ:起
カナダ・ケベック。後に“ネリー・アルカン”と名乗ることになる少女時代のイザベル・フォルティエ(ミリア・コルベイ=ゴーブロー)は、両親の見守るなか、学芸会のステージで『悲しき天使』を歌っていました。この頃は両親はまだ仲が良く、イザベルはごく平凡な家庭のもと育っていきました。
やがて両親は不仲となり、成長して大学生となったイザベルは高級娼婦として働くようになりました。そしてイザベルは“ネリー・アルカン”(ミレーヌ・マッケイ)と名乗り、自らの経験をモチーフとして小説を執筆するようになりました。
ネリーは自らの経験に創作を加えた処女作を、故郷から遠く離れたフランス・パリの出版社に送り、編集者のマチュー(フランシス・リプレイ)の目に留まって出版される運びとなりました。マチューはパリからはるばるケベックを訪れてネリーと対面、当時26歳にして初めて小説を書いたことを訊かれたネリーは、処女作の内容について「事実も創作もある」と語りました。
やがて処女作は出版され、その性的な内容に加えて作者のネリーが若く美貌の持ち主であることから、世間の注目の的となっていきました。
ネリー・アルカン 愛と孤独の淵でのネタバレあらすじ:承
処女作の主人公はネリー同様に大学に通いながら高級娼婦をしているシンシアという女性です。この日、シンシアは自らの住居であるマンションの高層階の部屋に初顔の客であるピエールという童貞男を招き入れて接客しました。「初めてなんだ」と打ち明けるピエールに、シンシアは慣れた様子で応対していきました。
それからもシンシアはひっきりなしに次々と様々な男性客を呼び込んでは対応していきました。多い時には週に10人から20人の男と関係を持つこともありました。しかし、シンシアはいつしか精神を病むようになり、精神分析医の診断を受けるようになっていきました。医師の問いかけに対し、シンシアは「私は色んな男が欲しい。それが自分の内面を形成するから」と答えました。しかし、シンシアはいつか自分が老いて美貌を失うことを非常に恐れるようになり、この思いがシンシアの心に重くのしかかるようになりました。
そしてある時、パトリックというDV癖のある男を客に迎えたシンシアは、彼からの暴力から逃れた直後に自宅マンションの高層階のベランダから身を投げました―――。
ネリーの処女作を手にした人々は主人公シンシアを原作者ネリーと重ね合わせ、処女作は大きな反響を得て瞬く間に3万部を超えるヒット作となりました。
ネリー・アルカン 愛と孤独の淵でのネタバレあらすじ:転
ネリーは処女作でいきなり注目を集めることとなりましたが、それでもネリーは自らの作品の出来に不安を抱えていました。そしてネリーは次回作の執筆に取り掛かりました。
ネリーの2作目の主人公は、薬物中毒のフランコイス(ミカエル・グアン)という男と恋に落ちたがゆえに、やがてその恋で身動きが取れなくなっていくというものでした。フランコイスと恋に落ちた主人公の女性は彼の愛を独り占めにしたがっていましたが、フランコイスは常に複数の女性と交際しており、主人公はただ単にその内のひとりに過ぎなかったのです。
やがて主人公が嫉妬に狂うあまりにフランコイスとの関係もこじれていきましたが、ある時フランコイスは意を決して来年にも結婚しようとプロポーズ、薬物からも結婚を機にきっぱりと足を洗うと言い出しました。喜んだ主人公はフランコイスの愛を受け入れましたが、その後もフランコイスは薬物を絶つことができず、やがて主人公もまた薬物と酒に溺れていった末に死を迎えるという内容のお話でした。
ネリーの2作目は処女作同様に注目の的となり、ネリーには続々と雑誌の取材が舞い込むこととなりました。記者からの質問に不快な思いをしたネリーは「どうせ表紙の過激さを、読者は期待しているのではないか」「世間はあまりにも私の容姿や才能の有無などを気にしすぎる」と答えていきました。そのうち、ネリーは本当は自分自身をさらけ出すのが好きではないこと、世間の自分への評価、そして今後の著書の売れ行きを思うあまりにたまらなく不安に陥っていきました。
ネリー・アルカン 愛と孤独の淵での結末
ネリーは小説家デビュー以来ずっとサポートしてくれているマチューに絶大な信頼を寄せ、やがて彼と男女としての関係を求めるようになりましたが、マチューは自身が妻帯者であることを理由にネリーの誘惑をやんわりと断りました。
それでもマチューへの想いを消せないネリーはせめて作品の内容でマチューの気持ちを引き留めたいと願い、マチューもまたネリーの文才については高く評価しているのですが、ネリーの一方的な不安は収まることはありませんでした。
ネリーの作品の結末はいずれも主人公が人を殺めるか、もしくは主人公の死によって終わるケースばかりでした。そのことに気づいたネリーは次第に“死”について考え込むようになり、心身ともに疲弊していきました。見かねたマチューはネリーを療養所に入れましたが、ネリーは回復するどころか益々衰弱するばかりでした。
そのうち、デビュー当初は勢いのあったネリーも、新作を書く度に売り上げが落ちていくことに落胆していました。自らの人気に陰りがあることを悟ったネリーは教会へ告解に行き、「恥ずかしい人生だった。書けば救われると思っていたのに、結局、自分が削られただけ。イザベルを守るためにネリーになったのに逆だった。愛が私を殺す。成功と栄光も私を殺す。今度は別の生き方をしたい。うまくいくように願いながら…」
それから間もない2009年9月24日、ネリー・アルカンことイザベル・フォルティエは36歳の若さで自ら命を絶ちました。彼女が生涯に遺した作品は生前に出版された3作、そして死後に出版された1作でした。
以上、映画「ネリー・アルカン 愛と孤独の淵で」のあらすじと結末でした。
この映画の感想を投稿する