眠狂四郎 殺法帖の紹介:1963年日本映画。柴田錬三郎の小説を映画化した時代劇シリーズで、前3作で眠狂四郎を演じた鶴田浩二から市川雷蔵にバトンタッチしての第1作です。加賀百万石の命運を握る秘密が隠された石仏を巡る陰謀に狂四郎が巻き込まれていきます。果たして狂四郎の“円月殺法”と若山富三郎演じるライバルとの少林寺拳法との対決の行方は…。
監督:田中徳三 出演者:市川雷蔵(眠狂四郎)、中村玉緒(千佐)、若山富三郎(陳孫)、小林勝彦(金八)、扇町景子(芸者歌吉)、真城千都世(常盤津文字若)、沢村宗之助(前田宰相斉泰)、伊達三郎(銭屋五兵衛)、高見国一(捨丸)、荒木忍(僧空然)、南部彰三(窯元蔵六)、木村玄(根来竜雲)、美吉かほる(お美代の方)ほか
映画「眠狂四郎 殺法帖」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「眠狂四郎 殺法帖」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「眠狂四郎 殺法帖」解説
この解説記事には映画「眠狂四郎 殺法帖」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
眠狂四郎 殺法帖のネタバレあらすじ:起
眠狂四郎(市川雷蔵)は大川端の馴染みの船宿「喜多川」に向かっていたところ、突然伊賀の忍者と思われる7人の刺客から手裏剣を投げつけられて襲撃されました。狂四郎はうち6人を一刀の元に斬り捨てますが、そのうちの一人・捨丸(高見国一)を取り逃がしてしまいます。この様子を遠巻きに加賀藩前田家の奥女中・千佐(中村玉緒)と伊賀者の長・根来竜雲(木村玄)が見ていました。
「喜多川」に着いた狂四郎は芸者の歌吉(扇町景子)と会っていたところにスリの金八(小林勝彦)が現れ、常盤津の文字若師匠(真城千都世)の家に現れた陳孫(若山富三郎)という坊主から預かったという手紙を持ってきました。手紙には「明日巳の刻、上野清香寺の梅の木の下でお会い申すべく。陳孫」と書かれてありました。
同じ頃、根来と千佐から狂四郎に差し向けた忍者が6人も殺されたとの報告を受けた加賀藩主・前田宰相斉泰(沢村宗之助)は狂四郎に興味を持ち、千佐と根来に狂四郎を自分の味方にし、狂四郎に陳孫を斬らせたのちに狂四郎も始末するよう依頼しました。千佐は文字若の元に移った狂四郎を訪ね、陳孫に命を狙われているので助けてほしいと頼んできました。
陳孫は先日、金沢で捕らえられて獄死した豪商・銭屋五兵衛(伊達三郎)の一味であるといい、千佐の父は加賀藩の奉行をしていたのですが銭屋の起こした事件に巻き込まれて連座という形で切腹させられ、その時に加賀藩の命運を握る“あるもの”を隠したとして銭屋の一味から付け狙われていると千佐は語りました。百両の報酬を提示された狂四郎は引き受けることにし、千佐を文字若の元に預けると上野清香寺の梅の木の下で陳孫と対面しました。渡来した唐人の末裔で少林寺拳法の使い手である陳孫は狂四郎に加賀藩の一件から手を引くよう忠告すると、恐るべき事実を明かしました。
実は陳孫は獄死した銭屋とは抜け荷仲間だったのですが、加賀藩は銭屋と裏で手を組んで密貿易に手を染め、莫大な利益を手にしたというのです。宰相斉泰は幕府にこの件が発覚することを恐れて銭屋を亡き者にし、銭屋の仇を取ろうと決意した陳孫を抹殺するために狂四郎を利用しようとしているというのです。
眠狂四郎 殺法帖のネタバレあらすじ:承
その頃、逃げ延びていた捨丸は千佐に密会し、狂四郎は手強いと言いながらも彼が千佐を抱いたら自分が狂四郎を殺すと告げました。その後、文字若の元に戻った狂四郎は千佐を「喜多川」に連れ出し、正体を見破ったことを告げると、千佐はそれでもなお狂四郎を誘惑してきました。狂四郎は千佐が自分と同じ孤児であることを見抜き、彼女を散々利用しようとしている加賀藩の思惑に憤りを抱きました。
佃島近くの海に小舟を浮かべた狂四郎の前に陳孫が現れ、狂四郎はとある家に招かれました。そこには獄死したはずの銭屋五兵衛(伊達三郎)の姿があり、狂四郎に身辺の警護を依頼してきました。銭屋はシャムロ国(今のタイ)の碧玉の仏像の中に加賀藩の存亡に関わる“あるもの”が入っていると教えますが、狂四郎は受け流してその場を去ろうとしました。
狂四郎は家の外で待っていた陳孫から、碧玉仏で加賀藩を脅して密かに銭屋を牢から出したことを聞き出すと、陳孫は前田に没収された仏像の中には加賀藩の密貿易の証拠となる文章が入っていることを明かしました。前田は三日後にも参勤交代でお国に戻ることから、陳孫も加賀へ向かうと言い出しました。
その直後、陳孫は千佐の身柄をさらって銭屋の元に連れていき、狂四郎の前に現れると加賀に来いと言い残して姿を消しました。狂四郎は前田の上屋敷に忍び込み、千佐や銭屋の件を伝えると、前田は銭屋と陳孫を殺したら三千両出すと言い出してきました。狂四郎は「金で俺の面を張る気か」と断りました。
眠狂四郎 殺法帖のネタバレあらすじ:転
前田の参勤交代が始まり、その列を狂四郎が、捨丸が、僧に変装して千佐を連れた銭屋と陳孫がそれぞれ付けていました。狂四郎は前田に雇われた根来率いる伊賀者に襲撃されましたが、得意の“円月殺法”を駆使して根来たちを倒しました。そこに捨丸が現れ、狂四郎を雇おうと持ち掛けますが狂四郎は断りました。
加賀・金沢に入った銭屋と陳孫は千佐を連れてある廃墟に隠れ、彼らの後をつけていた捨丸は狂四郎から千佐に惚れていることを見抜かれました。やがて銭屋の手下の中に内通者がいたことから役人たちが銭屋の隠れ家になだれ込み、どさくさに紛れて潜入した狂四郎は陳孫と一時的に共闘して千佐を救い出しました。その夜、狂四郎は今夜だけでも抱いてほしいという千佐の願いを叶えてあげました。
翌朝、狂四郎は千佐を匿った九谷焼の窯元・蔵六(南部彰三)から彼女の生い立ちを聞かされました。その頃、文字若と金八も狂四郎を追って金沢入りしていました。捨丸は僧に変装した陳孫と銭屋がとある場所の塀から箱を取り出すのを見かけ、狂四郎から依頼された文字若と金八は陳孫から箱を奪い取ることに成功しました。悔しがる陳孫に、銭屋は、まだこちらには打つ手はあると意味深な発言をしました。
箱の中身は例の碧玉像であり、その中にはやはり前田直筆の証明書は入っていました。狂四郎は蔵六から聞いた話として、千佐の実の父は前田宰相斉泰であり、母は元々遊女でしたが今では出家して白光院という海辺の寺に住んでいるということを彼女に語りました。前田の前に現れた千佐は加賀百万石の命運を握る仏像をネタに迫り、前田に隠居を勧めると共に押収した銭屋の財宝を返還させることを約束させました。しかしその後、千佐は狂四郎と共に白光院へ向かいましたが、既に母は何者かに暗殺されていました。千佐母子の歩んできた人生をはかなんだ狂四郎は千佐の母の墓を作ってやり、嘆く千佐にこの世にはもっと不幸なものがあると諭しました。
眠狂四郎 殺法帖の結末
狂四郎は千佐から碧玉仏を託され、前田が銭屋に財宝を返すと約束したことを告げられました。狂四郎は銭屋が千佐の母を殺したことに気付いたその時、千佐は待ち構えていた銭屋の銃弾に倒れました。狂四郎は銭屋に撃たれたフリをして倒れ込み、隙を突いて銭屋を斬りました。そして狂四郎は陳孫と近くの浜辺で対決に臨みました。狂四郎は円月殺法を見切られてしまい、危うく刀を奪われそうになりましたが奪わせませんでした。負けを認めた陳孫に狂四郎は銭屋の事件から手を引けと命じ、これに応じた陳孫は狂四郎との再戦を誓っていずこへと去っていきました。
狂四郎は千佐の元へ駆け寄りましたが、彼女は既に虫の息でした。千佐は狂四郎と巡り会えたことを感謝しながら息を引き取りました。その時、まだ息のあった銭屋は執念で碧玉仏を掴み取ろうとしましたが、狂四郎は仏像を取り上げて台の上に乗せると、思うがままに遂げられる欲望がここにあると挑発しました。銭屋は仏像を掴み取ることができずに息絶えました。その後、狂四郎は仏像を持って海辺の崖の上に上がり、「これが宝か? 死の固まりか? 加賀百万石がどうなろうと知ったことか! もうこの世には美しいものはないのか!」と叫ぶと、秘密の詰まった碧玉仏を海に投げ捨てました。
以上、映画「眠狂四郎 殺法帖」のあらすじと結末でした。
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