人間の條件 第3部望郷篇/第4部戦雲篇の紹介:1959年日本映画。巨匠・小林正樹が全6部で描いた超大作の第2作で、第3部と第4部にあたる。舞台は1作目の鉱山から陸軍の内務班へ移り、古兵による初年兵いじめ、さらにソ連との戦いが描かれる。特に第3部は山本薩夫監督の「真空地帯」同様、戦時下の陸軍の醜悪な体質を糾弾する内容となっている。
監督:小林正樹 出演:仲代達矢(梶)、新珠三千代(美千子)、川津祐介(寺田二等兵)、佐藤慶(新城一等兵)、田中邦衛(小原二等兵)、内藤武敏(丹下一等兵)、佐田啓二(影山少尉)、ほか
映画「人間の條件 第3部望郷篇/第4部戦雲篇」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「人間の條件 第3部望郷篇/第4部戦雲篇」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
人間の條件 第3部望郷篇/第4部戦雲篇の予告編 動画
映画「人間の條件 第3部望郷篇/第4部戦雲篇」解説
この解説記事には映画「人間の條件 第3部望郷篇/第4部戦雲篇」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
人間の條件 第3部望郷篇/第4部戦雲篇のネタバレあらすじ:第3部
召集免除を取り消され、一兵卒となった梶は、北満の兵営にいました。営内では古年次兵によるタチの悪い初年兵いじめが常態化していて、梶の班では要領の悪い小原二等兵が集中的になぶりものとされています。古年次兵が防火用水を煙缶代わりに使ったことの責任を取らされたり、射撃訓練でも軍曹の橋谷に散々しごかれたり、小原にとっては内務班での毎日が地獄のようです。そんな彼を梶は放っておけず、できるだけかばってやるのですが、そのことで自分も古年次兵から目の敵にされます。
ただ、彼らの中にもまともな人間がいて、梶はそのうちのひとりである新城と親しくなります。彼は兄がコミュニストとして逮捕されたことで目をつけられており、入営から3年経つのにまだ一等兵でした。新城はソ連を理想の国と信じ、いつかそちらへ越境しようと考えています。そんな中、突然、梶の妻の美千子が面会にやってきます。普通なら追い返されるところですが駅までは遠いため、班長たちも特別に孤室で朝まで過ごすことを許可します。顔を合わせるのはこれが最後かもしれないと思い、夫婦は積もる話をしながら朝までの時間を過ごし、梶は美千子の裸体を目に焼き付けます。
間もなく検閲行軍がおこなわれ、そこでも小原は脱落。古年次兵の吉田からいじめられた彼はついに便所で自殺します。梶は我慢できなくなり、橋谷軍曹の部屋に押しかけ、吉田の処分を要求。生意気だというので、兵営の責任者である工藤大尉の部屋まで連れていかれます。梶は営倉送りかと思われましたが、工藤は彼のような反骨精神のある男こそ軍隊に役立つと考え、逆に古兵並みの楽な勤務に切り替えさせます。やがて梶のいる中隊は国境付近に移り、その警備に当たることに。梶に続いて新城も動哨に出ますが、その際にスパイと目される地元民を逃したと言うので中隊に戻され、上官からひどい暴力を受けます。
その最中に野火が起こり、その処理に兵隊たちが追われるすきに、新城は思い切って脱走を図ります。それに気づいた吉田、そして梶が彼の後を追いますが、二人は湿地帯の沼に足を取られ、そのまま水の中へ。吉田はそのまま死んでしまいますが、梶は何とか生き残り、病院で療養生活を送ることになります。しかしもはや敗色は濃く、ゆっくり療治している時間はありません。一等兵となった梶はトラックで戦地へ送られ、中隊に復帰します。
人間の條件 第3部望郷篇/第4部戦雲篇のネタバレあらすじ:第4部
梶はソ連の山々を前方にひかえる青雲台陣地へと貨車で移動し、そこで南満洲鉄鉱時代からの友人である影山と再会します。彼は少尉になっていました。戦局は悪化の一途をたどり、硫黄島は玉砕、ドイツも降伏し、アメリカ軍が沖縄に上陸するのも時間の問題です。それでも軍は兵員の補充をやめず、これまで徴兵検査で不合格だった人間まで戦場に駆り立てていました。
今回も青雲台陣地に初年兵が送り込まれてきますが、その中には40過ぎの第二国民兵もいるため、影山は通例の古年次兵流のしごきでは怪我人が続出すると判断し、その教育を梶に一任することにします。梶は教育を引き受ける条件として内務班の編成替えを要求しますが、それは重砲上がりの古年次兵たちを初年兵とは別の班にするというものでした。これを知った古年次兵たちは腹を立て、梶に制裁を加えるものの、自分が体験したような陰湿ないじめを根絶するためなら、この程度のことは平気でした。
梶は教育係としての資格を得るために上等兵に昇進し、年齢のバラバラな初年兵たちを迎え入れます。別班になったとはいえ、陣地内で接触があった時などは古年次兵たちが因縁をつけてくるため、いじめが根絶できるわけではありません。しかし梶は腹を立てる初年兵たちをなだめすかし、自らも古兵たちの暴力を受けながら、何とか無事に訓練期間を過ごさせます。やがて、梶に引率された初年兵たちが陣地構築作業に出発。その作業の間にソ連軍が国境線を越えて満洲に侵入し、青雲台陣地を攻撃しました。これにより、初年兵たちも作業を止めていきなり来攻するソ連軍を迎え撃つことになります。
士官たちに引率されて最前線まで移動する途中、陣地を脱出した古年次兵たちが合流してきます。彼らの話では影山も戦死したようでした。はるばる歩き続けた末、兵士たちは最前線の台地に到着。ここに戦車壕を掘って、敵軍を待ち受けます。間もなく土ぼこりを立てて戦車を先頭にソ連軍が進軍してきます。日本兵たちは必死の攻撃をおこないますが、小銃と手榴弾だけの装備では勝負は見えていました。初年兵、古兵を問わずほとんどがタコ壺の中で戦死。しかし梶だけは、初年兵の寺田、伍長の弘中と共に何とか生き残ります。
以上、映画「人間の條件 第3部望郷篇/第4部戦雲篇」のあらすじと結末でした。
「第3部望郷篇」は関東軍の内部事情をリアルに、「第4部戦雲篇」は条約に違反して満州国境を越えて進行してきたソ連軍との戦闘でしたね。
いよいよ、次回からが本当の地獄が待っています。