人間の條件 完結篇の紹介:1961年日本映画。小林正樹が全6部で描ききった超大作の完結編で、第5部と第6部にあたる。関東軍の敗走ぶりと避難民の様子が詳細に描かれ、過酷な捕虜収容所のパートを経て悲劇的なフィナーレを迎える。3部作の中では最もエンターテイメント性に富んだ内容となっている。
監督:小林正樹 出演:仲代達矢(梶)、新珠三千代(美千子)、中村玉緒(避難民の少女)、川津祐介(寺田二等兵)、金子信雄(桐原伍長)、清村耕次(匹田一等兵)、内藤武敏(丹下一等兵)、ほか
映画「人間の條件 完結篇」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「人間の條件 完結篇」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
人間の條件 完結篇の予告編 動画
映画「人間の條件 完結篇」解説
この解説記事には映画「人間の條件 完結篇」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
人間の條件 完結篇のネタバレあらすじ:起
梶は戦闘で生き残った寺田二等兵、弘中伍長とともに、牡丹江を目指して歩き始めます。しかし北満はソ連軍が支配していて、思うようには速く進めません。進路を邪魔するソ連兵をやむを得ず殺したりしますが、そのことは梶に罪悪感を抱かせます。3人は鬱蒼とした森に入り、そこでソ連軍から追われて難民となった数組の日本人家族や娼婦たちと遭遇します。慌てて逃げ出してきた彼らには食料もなく、梶たちの米を分けてもらって何とか飢えをしのぎます。
大所帯となった一行は懸命に森の中を進むものの、何日経ってもそこから抜けられません。やがて疲労と飢えから次々と死人が出て、最終的に森を抜け出したのは梶、寺田、弘中、それに娼婦を含めて数人ほどでした。梶たちは地平線辺りに煙が上がっているのを見て、必死の思いでそこまで歩き続けます。たどり着いてみると、それは生き残った陸軍兵たちの野営でした。しかし食べ物は分けてもらえず、梶たちはそこを離れざるを得ません。
人間の條件 完結篇のネタバレあらすじ:承
その後も歩き続け、トウモロコシ畑で食料を調達した一行はようやく一息つきます。こうして畑の食べ物を採っていけば何とか街まで出られそうですが、地元の農民たちがそれを黙って見逃してはくれません。彼らは民兵を組織し、畑に侵入する日本人を狩り立てていました。それらの民兵の群れを避けて進むうち、梶たちは同じ敗残兵グループと合流します。そのリーダー格である桐原伍長はどうやら応召前はヤクザだったらしく、粗野な言動で梶をイライラさせます。一行は空き家となっていた農家で休息するものの、すぐに民兵が彼らを発見し、たちまち追い立てられます。ここまで一緒についてきた娼婦も民兵になぶられるように殺されました。
間もなく彼らは女性だけの避難民グループと出会い、ソ連兵の蛮行ぶりを耳にします。梶はそれまで赤軍へ幻想をいだいていたのですが、その話でソ連の体制への疑問を感じ始めます。グループの中には18歳の女の子がいて、彼女は弟と2人だけで自分の家に帰るつもりでした。桐原はそれを聞きつけ、「護衛する」といって部下の2人とともに彼女たちと一緒に出かけますが、すぐに帰ってきます。疑問に思って問い詰めると、桐原は悪びれもせず「暴行した」と答えたため、梶は激怒。彼ら3人の武器を取り上げて、グループから追放します。
人間の條件 完結篇のネタバレあらすじ:転
やがて梶たちは山岳地帯に入り、そこで50人ばかりの敗残兵が立てこもっている場所に行き着きます。彼らによると麓では討伐隊が待ち構えており、これ以上進むのは困難なようでした。リーダーである陸軍士官はまだ軍隊気分が抜けておらず、あくまでソ連軍と抵抗して戦うつもりです。梶はそんな考えについていけず、無理を承知で同じ考えの十数人と共に下山し、再び国境を目指します。一行はソ連兵を倒しながら山岳地帯を抜け、平野へ。遠くに小さな家が見えたのでさらに進んでいくと、そこは日本人の開拓部落でした。
部落では1人の老人のほかは若い女性が十数人しか残っておらず、逃げ出す決心もつかずにグズグズしていたのです。彼女たちに頼まれて梶たちは近隣の畑へ出かけ、ジャガイモを盗んできます。そのお礼にと、女たちは敗残兵たちと一夜をともにしますが、妻の美千子のことが頭にある梶は誘われても1人で夜を過ごします。女たちはこれを契機に国境まで逃げ出す決心を固めますが、そこへソ連軍がやってきます。最初、梶は彼らと戦うつもりでしたが、女の1人が彼の前に飛び出して「戦わないで」と泣き叫んだのを見て戦意を喪失。銃を捨ててソ連兵の前に出ていったため、敗残兵たち全員が投降することとなります。
人間の條件 完結篇の結末
捕虜となった兵士たちは収容所まで延々と歩かされますが、それは所内での過酷な労働の始まりにしかすぎませんでした。寒さに加え、食料もわずかしか与えられないため、体調の良くない捕虜は次々と病気になります。おまけに驚いたことに桐原が捕虜管理の責任者になっていて、梶と寺田への復讐の機会を狙っていました。梶がサボタージュの罰として森林鉄道の作業についていた時、桐原は病気上がりの寺田をいじめ抜き、死に追いやってしまいます。
収容所に帰ってそのことを聞いた梶はもう我慢ができず、夜中に桐原を呼び出して彼を鉄の鎖で殴打。その体を肥溜めに沈めて殺害すると、そのまま収容所を脱走します。梶は乞食をやりながら大陸を彷徨いますが、寒さと飢えのために体は衰弱し、ついに荒野を歩いている時に倒れ込んでしまいます。幻想の中で美千子と言葉をかわしながら、梶はそのまま動かなくなり、その体には雪が積もっていきます。
以上、映画「人間の條件 完結篇」のあらすじと結末でした。
生きて帰れることはないとは、わかっていました。