プアン/友だちと呼ばせての紹介:2021年タイ映画。香港の世界的映画監督ウォン・カーウァイ(『恋する惑星』『花様年華』等)が惚れ込んだのは、『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』で世界的に注目されたタイのバズ・プーンピリヤ監督。ともに映画をつくろうと誘い、よりパーソナルな物語を、ということで生まれたのが本作『プアン/友だちと呼ばせて』である。実際に監督が元カノを訪ねた経験も反映されているこの作品は、男ふたりのロードムービーから一転、後半は意外な展開へと変貌していく。
監督: バズ・プーンピリヤ 製作総指揮:ウォン・カーウァイ、チャン・イーチェン 原題:One for the Road 出演:トー・タナポップ(ボス)、アイス・ナッタラット(ウード)、プローイ・ホーワン(アリス)、オークベープ・チュティモン(ヌーナー)、ヌン・シラパン(ルン)、ヴィオーレット・ウォーティア(プリム)、タネート・ワラークンヌクロ(DJチャーンウット)、ラター・ポーガーム(タック)ほか
映画「プアン/友だちと呼ばせて」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「プアン/友だちと呼ばせて」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「プアン/友だちと呼ばせて」解説
この解説記事には映画「プアン/友だちと呼ばせて」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
プアン/友だちと呼ばせてのネタバレあらすじ:起
バンコク、夏。ウードは父の遺した古いBMWの中で、かつて父がDJをつとめていたラジオ番組を聞いています。白血病で余命宣告を受けたウードは、涙ぐみながらスマホのアドレス帳を見ています。
ニューヨーク、秋。バーテンダーをしているボスの店は、彼のチャラさと気前の良さで女性客が絶えません。そんなボスにタイにいるウードから突然電話が。頼みをきいてくれ、とただならぬ物言いにボスはタイに行くことにしました。
頭髪は抜け痩せたウードの姿にたじろぐボス。動揺を悟られないように話しかけると、ウードは死ぬ前に元カノのアリスに会って返したいものがあると言います。そして自分の代わりに運転してほしいと。ボスはBMWを運転し、アリスの住むコラートへと向かいます。
ダンス教室を開いているアリスはウードの代わりにやってきたボスに、会いたくないと不機嫌そうに答えます。ボスも、ニューヨークからウードがタイに帰国するきっかけとなったアリスに良い感情は持っていませんでしたが、死を前にした親友の頼みなので必死に説得します。その甲斐あって待ち合わせ場所にやってきたアリスは、つき合っていた頃のように自然に話し始めます。
いっしょにタイに帰国したあと、ふたりはすぐに別れてしまいましたが、そのときに荷物を詰めたバッグをアリスに返し、ふたりは久しぶりにダンスをします。病気だと知られないようウィッグとキャップを被ったウードは、アリスと束の間の幸せな時を過ごしました。
今度は別の元カノ、ヌーナーに会いに行くと言うウード。きちんとお別れを言いたいという彼の気持ちを尊重し、ボスは車を走らせます。
教会の前に立つウェディングドレス姿のヌーナー。彼女は女優ですが演技がうまくいかず現場の雰囲気は最悪です。近づけそうもなくウードは途方に暮れますが、ボスが撮影をストップさせヌーナーをひとりにすることに成功しました。
ウードは恐る恐る声をかけますがヌーナーの拒絶反応は激しく、少しのやりとりの末ウードの頬を叩き彼女は去っていきました。
ニューヨーク時代、女優になるチャンスをウードに潰されたヌーナー。当時の思いが蘇る中、再開された撮影で先ほどとは別人のような迫真の演技を披露し絶賛されます。そのセリフはまるでかつての自分とウードのことを物語っているようでした。その姿を見届けるとウードとボスは車に乗り込みます。ヌーナーはひとり泣き崩れているように見えました。
プアン/友だちと呼ばせてのネタバレあらすじ:承
その夜、いい気分のふたりは店で強い酒を飲み続けます。深夜、酔っ払ったふたりは便器に顔を突っ込んで吐いていましたが、ウードが吐いたのは血でした。病院で数日間は安静が必要と言われたウード。でもウードは病院を抜け出し、ルンに会いに行くと言います。心配するボスは、これが終わったらきちんと治療を受けることを約束させて渋々ルンの住むチェンマイに向かいます。
ルンはカメラマンの卵でいっしょにタイに帰ろうとウードを誘っていました。結局ウードはそれを断り、彼女はその後タイで結婚しました。可愛い女の子と素敵な家で暮らしているルン。でも今日会う約束をしていたのに、急に出かけてしまい会えないとボスに電話で伝えてきました。その嘘を見抜いたボスはルンを責めますが、逆にいまさらノコノコやってきた彼らをルンは責めます。
ルンと娘の姿を窓越しに見たウードは、渡そうと思っていた未現像のフィルムを渡すことができないままその場を離れました。
そのあとふたりは、ウードの亡き父の墓にお参りをしました。そこから遺灰を持ち出すと、ウードは走る車の窓から川にそれを撒きます。すると亡き父が運転する車が彼らの車を追い越していきました。
車はボスの実家のあるパタヤに向かいます。大きなホテルの最上階に上っていくボスとウード。ボスの実家はこのホテルを経営しているのです。ボスの家族は留守で、義兄の息子だけがいました。ボスのニューヨークのバーの経営状態を非難するその男は、黒字にしなければ自分が管理する、猶予は3ヶ月だと言います。
ボスは酒を飲もうとウードを誘い、彼のためにカクテルをつくります。それはウードの元カノたちをイメージした3杯のオリジナルカクテルでした。どれがいちばんか選ばせようとするボスに、ウードは今回の旅の本当の目的を話し始めます。
プアン/友だちと呼ばせてのネタバレあらすじ:転
ここパタヤにいたころ、ボスにはプリムという恋人がいました。彼女はこのホテルのバーテンダーで、そこにやってきたボスに初めてカクテルを作ってくれた人でした。
ボスはホテル経営者の後妻の弟で、そのことをプリムと話すうち、実は姉ではなく母なのだと告白します。母は息子ではなく弟として彼を紹介し、家族とは距離を置くようにしていました。
そんな寂しさの中、ふたりは急速に接近していったのです。プリムは一流のバーテンダーになるのが夢で、そのためにニューヨークに行きたいと考えていました。ボスは厄介払いのため留学させられることになり、自ら留学先にニューヨークを選びました。
マンハッタンのペントハウスで暮らし始めたふたり。不法就労のプリムはタイ料理店で働くことに。そこにはウードが働いていました。プリムのことを好きになってしまったウードは、彼女の夢を応援するため知り合いのバーを紹介します。プリムはタイ料理店とバーを掛け持ちするようになり、帰る時間が遅くなっていきました。
ある夜、ボスがタイ料理店にやってきました。終わるまでずっと待っているといって不機嫌なボス。酔って暴れだしそうだったのでプリムは店の外で話し合おうとします。するとボスは、プリムがボスの母からお金を受け取った証拠を突きつけ、金のためにここまでいっしょに来たのかと問い詰めます。そんなつもりはなかったプリムですが、お金を受け取ったことは事実。責任を感じた彼女は別れを告げます。
プリムは親切なウードの部屋に、カクテル大会までの一ヶ月間世話になることになりました。ウードは優勝を目指している彼女のため、高いシェーカーをプレゼントして送り出そうとします。そしてプリムにキスしようとしますが拒否されてしまいます。あなたは友だち、愛しているのはボスだけだと言い、シェーカーを置いてプリムは出ていきました。
ボスはその後もタイ料理店の近くでプリムを待っているようでした。ウードはボスに、プリムが新しい恋人とニューヨークを出ていったと嘘をつきます。ショックを受け酔っ払って歩くボス。ウードがあとを追っていくとボスは地下鉄で男たちに腕時計を奪われ、線路に落ちてしまいます。ウードに助けられたボスは彼を命の恩人と思い仲良くなり、やがていっしょに住み始めます。
ウードの恋人ヌーナーがプロデューサーだという男といたとき、ウードとボスは彼女がだまされていると言って相手の男を殴ってしまいます。女優になるチャンスを壊したふたりをヌーナーは許しませんでした。
優しいルンはよくウードの写真を撮ってくれましたが、ウードとの恋をあきらめタイに帰っていきました。
赤毛のアリスはタイでいっしょにダンス教室を開くと言ってウードに帰国を決意させます。ウードといっしょにバーを開くつもりだったボスは怒りますが、結局ボスとウードはそれっきりになってしまいました。
ウードはボスにプリムのことを謝り、後悔してほしくないと言います。そしてプリムがニューヨークに戻っていることを伝え、ウードの話は終わりました。ボスはウードに怒りの目を向け部屋を出ていってしまいます。
プアン/友だちと呼ばせての結末
3ヶ月後。ニューヨークのボスの店は大賑わいです。ふらっと入ってきた母にカクテルを振る舞い、ボスはもうこの店は閉めるといいます。母は「ウードは残念でした」と言うと、彼から預かったスマホを置いて出ていきます。そこにはウードのメッセージが録音されていました。まるであのラジオのDJのようなウードの言葉…。
タイのテレビではヌーナーのインタビューが放送されています。過去のつらい経験あるからいまの自分がある。どんな関わり方だったとしても、関わったすべての人に感謝している。彼女はそう話しています。
ボスは再びパタヤにやってきていました。海岸沿いの道、ホテルとは逆の方向に「Bar」があると標識に書かれています。車をそちらに走らせるボス。そのボスの車を見送るように停まった車にはウードが乗っています。満足気に微笑むウード。
夕暮れのビーチにはオープンエアーのバーがありました。バーテンダーはプリムです。ボスは飲み物を注文し、プリムは一杯のカクテルを出します。それは、彼女が初めてボスに出したあのカクテル、「ニューヨーク・サワー」でした。
以上、映画「プアン/友だちと呼ばせて」のあらすじと結末でした。
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