黒いオルフェの紹介:1959年フランス映画。ギリシア神話に登場するオルペウス(オルフェ)とエウリュディケ(ユリディス)の物語をモチーフにしたニシウス・ヂ・モライスの戯曲『オルフェウ・ダ・コンセイサゥン』を、舞台を映画製作当時のブラジル・リオデジャネイロに移して映画化した作品です。カーニバルで浮かれるリオの街を背景に、ギターの名手である黒人の市電運転手と謎の男に追われる黒人女との悲恋が描かれます。
監督:マルセル・カミュ 出演者:ブレノ・メロ(オルフェ)、マルペッサ・ドーン(ユリディス)、マルセル・カミュ(エルネスト)、ファウスト・グエルゾーニ(ファウスト)、ルールデス・デ・オリベイラ(ミラ)、レア・ガルシア(セラフィナ)、アデマール・ダ・シルバ(死神)ほか
映画「黒いオルフェ」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「黒いオルフェ」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
黒いオルフェの予告編 動画
映画「黒いオルフェ」解説
この解説記事には映画「黒いオルフェ」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
黒いオルフェのネタバレあらすじ:起
カーニバルを翌日に控えるブラジル・リオデジャネイロ。船に乗ってこの街に降り立った黒人女性のユリディス(マルペッサ・ドーン)は、街をふらふらと彷徨い歩いていました。
そんなユリディスを見かねた市電の運転手の黒人男性オルフェ(ブレノ・メロ)が、乗らないかと声をかけ、ユリディスはそのまま終点まで乗ることにしました。
これから従姉の家に向かうと言うユリディスに、オルフェは「上司のエルネスト(マルセル・カミュ)ならこの街について何でも知っている」と道案内してもらうことにしました。ユリディスが去った後、オルフェの元に婚約者のミラ(ルールデス・デ・オリベイラ)が現れて婚約指輪を買ってほしいとねだりました。
ミラはユリディスを可愛い子だと言うオルフェに「あんな小娘のどこが可愛いの?」と皮肉を言ってきました。それからオルフェはもらったばかりの給料を持って質屋に行き、「明日はカーニバルだ」と言って預けていたギターを取り出しました。ギターの名手であるオルフェは子供たちから人気があるのです。
黒いオルフェのネタバレあらすじ:承
ユリディスは丘にある従姉のセラフィナ(レア・ガルシア)の家に辿り着きました。セラフィナは海軍にいる恋人が戻ってきたのかと勘違いしながらもユリディスを迎え入れました。
ユリディスはセラフィナに、自分は故郷の村で謎の男に追われていると打ち明け、相手は自分を殺すつもりであり、既に自分がリオに来ていることも知られたのではないかと不安を口にしました。
セラフィナの家の隣には、あのオルフェが住んでおり、オルフェはセラフィナにミラの相手を頼むと子供たちを前にギターと歌の練習を始めました。子供たちはオルフェに「ギターで太陽を昇らせることはできるの?」と聞いてみると、オルフェは「できる」と答え、翌日のカーニバルのために内緒で作った新曲、名付けて「カーニバルの朝」をギターの弾き語りで歌って聴かせました。
オルフェは自分の歌を聴きながら踊るユリディスに声をかけ、彼女がセラフィナの従姉であることに驚くと、昔のギリシャ神話に登場する自分たちと同じ名の“オルフェ”と“ユリディス”の恋の話になぞらえて、思わずユリディスにキスをしそうになり、ユリディスに拒まれました。
黒いオルフェのネタバレあらすじ:転
その夜、オルフェはユリディスや子供たちと共にカーニバルの前夜祭で踊り明かしました。子供たちはユリディスにオルフェは“太陽”、セラフィナは“夜の女王”、ミラは“昼の女王”であると説明しました。オルフェはユリディスと一緒に踊り、セラフィナにユリディスのカーニバル用の衣装を用意してくれるよう頼みました。
ところがその後、ユリディスは死神の仮面を被った謎の男(アデマール・ダ・シルバ)に襲われ、セラフィナの家に逃げ込みました。オルフェが急いで駆け付けて仮面男を追い払いますが、仮面男は「女は預ける。また会おう」と意味深な言葉を残して姿を消しました。
オルフェはユリディスを自宅のベッドに寝かせ、自分は外で寝るこたにしました。オルフェは誰が来ようとも必ずユリディスを守ってみせると固く誓いました。
翌朝、オルフェのギターの調べと共に太陽が上ってきました。喜ぶ子供たちをよそに、オルフェとユリディスとの関係を疑うミラは「あの娘(ユリディス)がつきまとったら殺してやる」とオルフェに忠告しました。
やがてカーニバルが始まり、街中が熱狂するなか、ユリディスはセラフィナから借りた衣装に身を包み、ベールで顔を隠してオルフェと踊りました。ところが、ユリディスはお守りを落とした際にミラに顔を見られてしまい、激昂したミラはユリディスに掴みかかってきました。
ユリディスは雑踏の中を逃げ惑いますが、例の仮面男に見つかってしまい、市電の車庫に逃げ込んでエルネストに助けを求めました。エルネストがオルフェを呼びに行っている間にユリディスは車庫内で追いつめられてしまい、架線を伝って逃げようとしたところにオルフェが駆け付けてきました。
オルフェはユリディスの名を呼びながら電気のスイッチを入れましたが、架線に触れていたユリディスは高圧電流を浴びてショック死してしまいました。仮面男はで「もう手遅れだ」とオルフェを殴り飛ばして去っていきました。
黒いオルフェの結末
病院で意識を取り戻したオルフェは、エルネストからユリディスの死を知らされ、「嘘だ。生きている」と取り乱しながらユリディスを探し求めて病院を飛び出しました。
夜の街を彷徨うオルフェは祈祷所に行ったところ、背後からユリディスの声が聞こえてきました。ユリディスの声はオルフェに「決して振り向いてはいけない」と忠告しますが、オルフェは我慢できずに振り向いてしまいます。そこにいたのは霊媒師の老婆であり、オルフェは「俺を騙したな」と怒りを露にしました。
祈祷所を出たオルフェはエルネストに苦しい胸の内を打ち明けました。「俺は何もかも失った。一番みじめな黒人だ」と言うオルフェに、エルネストは「黒人はみんなみじめだ。みじめな者は神に慈悲を請うしかない」と諭しました。
オルフェは遺体安置所でユリディスの遺体を引き取り、明け方近くに家に戻りました。ところが、嫉妬に狂ったミラはオルフェの家に放火しており、オルフェはミラが投げた石の直撃を受けてユリディスの遺体を抱えたまま崖下へと転落していきました。
オルフェ亡き後、ギターは子供たちの物となりました。子供たちはかつてオルフェがそうしたように、上り行く太陽の下でギターを掻き鳴らし、歌っては踊っていました。
以上、映画「黒いオルフェ」のあらすじと結末でした。
「黒いオルフェ」は、カーニバルの色彩やA・カルロス・ジョビンらの音楽が世界的に大ヒットし、古典的な愛の伝説を描いて、1959年度のカンヌ国際映画祭でグランプリを、そしてアカデミー外国語映画賞を受賞した作品ですね。
リオのカーニバルが、これほど生の形で劇映画に取り入れられたのは、恐らく初めてのことではないだろうか。
ギリシャ神話を現代のリオを舞台に翻案するという着想は、ユニークだが、カーニバルを映し出すための口実にも思えてきます。
年に一度の祭りのために、一年間働くという人々の熱狂が、強烈に伝わってきて、その熱気とエネルギー、サンバのリズムで満たされている。
この映画には、映画初出演の素人の人たちが集められたそうで、演技力は二の次で、あくまで雰囲気最優先で人選されている。
オルフェ役のブレロ・メロは、マルセル・カミュ監督の知人が紹介した、地元のサッカー選手で、子供たちとボールを蹴る冒頭のシーンでの軽快な足さばきは、なるほどと思わせるものがある。
また、死の仮面の男役のダ・シルヴァは、三段跳びの金メダリストで、身の軽さは映画でも存分に見せてくれましたね。