お遊さまの紹介:1951年日本映画。文豪谷崎潤一郎の名作「蘆刈」の映画化。原作では淡く描かれていた特殊な男女関係をメリハリのはっきりしたメロドラマに仕立てている。脚色を担当したのは、溝口の片腕とも言えるシナリオライター依田義賢。
監督:溝口健二 出演:田中絹代(お遊)、堀雄二(芹橋慎之助)、乙羽信子(お静)、柳永二郎(栄太郎)、進藤英太郎(久左衛門)、ほか
映画「お遊さま」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「お遊さま」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「お遊さま」解説
この解説記事には映画「お遊さま」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
お遊さまのネタバレあらすじ:起
芹橋という船場の大家の跡取り息子である慎之助は、嫁を迎える年頃だというので見合いを重ねますが、話はいつまでたってもまとまりません。慎之助は女性に対する選り好みが激しく、そのお眼鏡にかなう相手がなかなかいないのです。今日も叔母の勧める見合いのために京都までやってきましたが、それほど期待はしていませんでした。ところが、暇に任せて庭園を散歩していた時、こちらに向かって歩いてくる女性に出会って衝撃を受けます。
彼女の名前はお遊。粥川という大家に17歳で嫁いだ後、主人が死んだために若後家となった女性でした。その蘭たけた美しさと大家の御寮人らしい立居振舞にたちまち魅了された慎之助は、彼女が見合い相手だと思って有頂天になります。ところがそれはとんだ勘違いで、相手はお遊の妹のお静でした。彼女も美しいことは美しいのですが、お遊と並んでみるとお姫様と腰元ほどの違いがありました。
お遊さまのネタバレあらすじ:承
叔母からは見合いの返事を迫られますが、お遊への思慕を募らせる慎之助は商売にかこつけて粥川家の琴のおさらい会に出席し、ますますお遊の虜となります。慎之助は思い切って叔母に「お遊を嫁にもらいたい」と告げるものの、叔母の返事は無情でした。旧幕時代の習慣を守っていた粥川家では子供もできていたこともあってお遊を離籍させず、いくら若後家と言っても再婚は無理なのです。このままお遊との縁は切れてしまうかと思われたのですが、往来で暑気あたりのために気分が悪くなったお遊を助けたことでその距離が縮まります。
やがて慎之助の気持ちに気づいたお遊はあえてお静と結婚することを勧め、慎之助もその気になります。お静には悪いものの、彼女が輿入れすることで自分も遠慮なくお遊と会うことができるからです。ところが驚いたことに、お静も姉の気持ちを知っており、お遊に義理立てして「私を形だけの嫁にしておいて下さい」と慎之助に懇願します。慎之助としても本当に好きなのはお遊の方でしたし、お静に対して申し訳ない気持ちもあったため、その懇願に従ってあえて夫婦の契りを結ばないことにします。
お遊さまのネタバレあらすじ:転
その後、夫婦はお遊を交えて遊ぶことが多くなり、世間から見れば異常とも思える関係を続けていきます。ただ他人からはどう思われようが、3人にとってはこれが一番満足できる形でした。しかし、ここで3人の関係が変わってしまう出来事が起こります。お遊の子供が麻疹から肺炎になり、病死してしまったのです。もともとお遊が若後家でありながら粥川家に留まっていたのも子供がいた故でしたから、こうなったら里に帰る方がよいといことになり、たちまち離籍の話がまとまってしまいます。
小曽部に帰ったお遊には伏見の造り酒屋との再縁の話が持ち上がり、彼女はそれを受けることにします。慎之助への恋情はあるものの、世間の目もあって彼がお静と離縁するわけにもいきません。その決心を聞いたお静は自分たちに肉体関係がないことを打ち明け、姉に慎之助との結婚を勧めます。しかし自分のためにお静が自らを犠牲にしていたと知ったお遊は腹を立て、2人が本当の夫婦になるためにも再婚することにします。
お遊さまの結末
その後、芹橋家は商売の失敗で没落。慎之助とお静は仕事を求めて東京へ移り、みすぼらしい場末の家に逼塞することになります。やがてお静は子供を出産後、産褥熱で死亡。一方、慎之助たちと没交渉になったお遊の方は夫にないがしろにされながらも別邸で相変わらず贅沢な生活を続け、その高貴な美しさを失いません。
慎之助は生まれたばかりの赤ん坊を連れてその屋敷を訪れ、手紙と赤ん坊を残していきます。手紙にはお静の死のほか「もう二度とお目にかかりません。この子をよろしくお願い致します」と書かれていました。お遊は涙を流した後、赤ん坊を育てる決心をします。
以上、映画「お遊さま」のあらすじと結末でした。
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