ペレの紹介:1987年デンマーク,スウェーデン映画。19世紀末の北欧の貧困や階級社会を父親と一緒にとある小島に移民してきた一人の少年の成長する過程と共に描いています。1989年のアカデミー賞外国語映画賞を受賞した他各映画賞を受賞した秀作です。
監督:ビレ・アウグスト 出演:ペレ・ベネゴー(ペレ)、マックス・フォン・シドー(ラッセ)、ビョーン・グラナス(エリック)、ほか
映画「ペレ」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「ペレ」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
ペレの予告編 動画
映画「ペレ」解説
この解説記事には映画「ペレ」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
ペレのネタバレあらすじ:起
妻をなくしたラッセ(マックス・フォン・シドー)は、幼い息子ペレ(ペレ・ベネゴー)を連れて故郷スウェーデンからデンマークのボーンホルム島に移民としてやってきました。
生きるための糧である仕事をラッセは懸命になって探しますが、老人と子供はいらないと断られてばかりでした。ようやく雇ってもらえた石の農園で安い賃金で働くことになります。
そこでの寝床は馬小屋しか与えられず、以降ラッセとペレは移民してきたよそ者という事で、不遇の日々を過ごす事になります。
ペレのネタバレあらすじ:承
ペレは学校でいじめられながらもルズという友達ができたり、同じ使用人のエリック(ビョーン・グラナス)とも仲良くなっていきました。
エリックにはいつかここを出てアメリカや中国等世界を見てまわるという夢がありました。また、ペレは農場主のコングストルップ氏の奥さんや農婦達からは可愛がられていました。
ある日、日頃使用人に厳しく当たるコングストルップに腹を立てたエリックが、その時に起こった不慮の事故が原因で後頭部を強打。自ら話すことも出来ない廃人になってしまいます。それ以降エリックはペレ達と同様に馬小屋で過ごす事になりました。
ペレのネタバレあらすじ:転
使いの帰りに嵐に遭遇したペレは、一軒家に住むオルセン夫人に助けてもらいます。ラッセが息子を助けてもらった事の礼を伝えると、オルセン夫人から夫が漁に出たまま一年も帰ってこないこと、男手が足らないので困っているという話を聞きます。
ラッセは用事を見つけてはオルセン夫人の元に向かうようになり、ラッセとオルセン夫人の仲は接近していきます。
女好きのコングストルップが、手を出した女を妊娠させて夫人に激怒されて性器を切り取られてしまったり、オルセン夫人とラッセが仲の良い事をからかわれてペレが喧嘩してしまうという出来事が起こりました。
オルセン夫人が自分の母親になり家族三人幸せにやっていけると期待していたペレにとって、からかわれることは我慢できない事だったのです。そんなペレにラッセは、オルセンが死亡したという通知が来たら正式に結婚するので、それまで我慢してほしいとペレに伝えます。
ペレの結末
しかし行方不明だったオルセンが帰還しました。夫人と一緒になりたかったラッセと今度こそ幸せになれると信じていたペレはショックを受けてしまいます。これをきっかけにペレへのいじめはさらにエスカレートしていくのでした。
そんなある日、ペレを管理人助手として採用することを提案されます。しかし廃人となったエリックが農園から連れ出されるのを見たペレは、農園を逃げ出し世界を巡る事を決意したのです。いつしかエリックの夢はペレの夢になっていました。
ラッセに農園から逃げることを提案するペレ。しかしラッセは年老いた自分にそんな体力はないと断ります。それを聞いたペレは父に別れを告げ、一人農園を立ち去っていくのでした。
以上、映画「ペレ」のあらすじと結末でした。
私は自分でいうのも何だが、いわゆる一般に美しいとされるようなものが本当に好きらしい。
この映画もなんと言っても映像が美しいし、音楽は心に染み入るようだし、とりわけ主演のペレ少年が実に美少年だ。
物語はスエーデンからデンマークのボーンホルム島に移民としてやってきた父と子が、とある農場で様々な出来事を経験しながら生きていくというもので、たぶん2年とか、それくらいかけて撮ったのだろう、物語と共に、ペレ少年が心だけでなく、身長も成長していくのがしっかり捉えられている。
馬小屋を住居として与えられた親子の苦労、学校でいじめを受けるペレ、いつかここを出てアメリカや中国を見て回るのだという夢を持っていた農夫が頭を打って廃人になるという事件、性器を妻から切り取られてしまう女好きの農場主。
様々な出来事を目の当たりにして、ペレは成長していく。
実に完成度の高い、秀作である。
しかし今回私がこの映画を取り上げたのは、それとは別に書きたいことがあったからだ。
いい映画には、当然忘れられない場面というものがあるものだ。
ある事件が起き、このペレ少年が全裸で飛び起きてズボンを履くカットなどは、私には強烈なエロティシズムと共に忘れられない場面となっている。
変態扱いされると困るのだが、「ローマ」でも、青年の全裸が出てきて、ああ、やっと修正せずに画面が見られる時代が日本にも来たのかな? と思ったものだが、この思春期のペレ少年は、当時の映倫の目をかろうじてかいくぐったのであろう、オチンチンもちゃんと写っているのである。
それがどうしたと言われそうだが、このなんとも心に残る美しさは、この映画の全体的な、じつに見事な美しさを象徴しているように私には思えるのだ。
変な男だと思わないでほしい。
この映画を見て、この親子に、そしてこのペレ少年に、どうして深い愛着を抱かずにいられるだろう。
ラストにペレ少年が1人で氷河の上を旅立ち、主題曲が流れる場面など、すっかり成長したペレ少年の行く末の安全を心から祈らずにはいられないのだ。
カンヌ国際映画祭パルムドール、アカデミー外国語映画賞を受賞した。